米労働組合SAG-AFTRAがゲーム声優のストライキを本日決行、待遇改善を求めた最終交渉も合意にいたらず
米国の労働組合SAG-AFTRAは21日、ゲーム業界で活躍する声優および俳優の待遇改善を訴えるインタラクティブメディア協定ストライキを、予定どおり実行すると宣言した。協定の見直しは2015年2月からおよそ18か月にわたって交渉されており、先日には締結各社との最終交渉が決裂した場合にストライキを決行する予定であると伝えられていた。今回、組合側の要求した待遇改善が一部合意にいたらなかったために最終手段へ出た形だ。現地時間で10月24日10時30分より、ロサンゼルスのElectronic Arts関連施設にてピケラインが張られる。
業務内容の透明性とボーナスが論点
SAG-AFTRA(Screen Actors Guild‐American Federation of Television and Radio Artistsの略)は、映画・テレビ・ゲーム業界に携わる俳優や声優、ジャーナリスト、ラジオ番組のパーソナリティを代表するアメリカの労働組合。2012年の発足以来、およそ16万人が加入している。エンターテイメント分野の中でも特に急成長を続けるゲーム業界は、いまや莫大な経済効果を生み出しており、破竹の勢いで拡大していく市場規模はもはや宝の山といえる。今回のストライキのきっかけになったインタラクティブメディア協定は、20年以上も前に締結されたものだ。技術革新と共に負担が増すゲーム声優や俳優、モーションキャプチャー担当アーティストに対する待遇の改善を求めて、組合は長きに渡って大手各社との交渉を続けてきた。
協定の締結先には、Activision PublishingやElectronic Arts Production、Disney Character Voices、Take 2 Interactive Software、WB Gamesなど、ゲーム作品の演出に俳優や声優を雇用する多くのパブリッシャーが名を連ねている。先日、SAG-AFTRAは組合メンバーへの通知書の中で、まだゲーム業界がプロのパフォーマーを起用し始めたばかりだった頃の規約のままでは、テレビや映画に引けを取らない近年の作品に対する貢献が適切に評価されない現状を改めて指摘。2年近くも粘り強く続けてきた交渉が今回も合意にいたらない場合には、いよいよストライキに踏み切る構えであることを明らかにしていた。なお、昨年10月には組合がストライキの実行権限を得るための承認投票が96.5パーセントの賛成で可決。いつでも決行に踏み切れる抑止力を得ていた。
締結企業が最後まで合意にいたらなかった項目は、契約内容の透明性と二次報酬についての2点。自社製品の開発に俳優や声優を起用する企業は、依頼する配役が暴力表現や性的コンテンツを含む不適切な内容に関係している場合、その可能性をあらかじめ通知した上で契約を結ぶ。しかし、実際に仕事を引き受けるまで演者は自分が携わるゲーム内容を一切知らされていないのだという。結果、知識や経験に基づいた決断が難しい状況を生み出している。通常、他業界における契約では考えられないとSAG-AFTRAは指摘する。二次報酬については、企業側がセッションの回数に応じたボーナスを支払うという形で合意にいたったが、ボーナスの内訳をオプション制にするという組合の要求は却下された。組合は以前から、もう一つの選択肢としてゲームが200万本のセールスを記録した場合に限り、それ以降は同数単位で売り上げを伸ばすたびに追加報酬を支払うことを要求していた。
一連のムーブメントは#performancemattersというハッシュタグを旗印に、『Deus Ex』シリーズの主人公「Adam Jensen」を演じるElias Toufexis氏や、『バイオハザード』シリーズで「アルバート・ウェスカー」役を務めるD.C. Douglas氏、『Mass Effect』シリーズの「Femshep」役で知られるJennifer Hale氏といった、多くの著名人から支持されてきた。また、2010年の『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』まで英語版でシリーズの主人公「スネーク」を演じていたDavid Hayter氏も諸手を挙げて賛成している。今回のストライキは、締結企業が2015年2月17日以降に制作を開始した全てのゲーム作品が対象。声の演出やモーションキャプチャーに携わる全ての組合メンバーが、待遇が改善されるまで新たなオーディションへの参加はもちろん、現在開発中の作品への出演を一時的に中断することになる。