『風来のシレン6』から考える、『風来のシレン』シリーズの「何度も遊びたくなる仕組み」。持ち物やレベルが全没収されても「次こそは」と思わせる
スパイク・チュンソフトは、2024年12月12日に『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』のPC(Steam)版を発売する。本作はスーパーファミコン時代から続くローグライクRPG『風来のシレン』シリーズの作品で、およそ14年ぶりの完全新作となる。今年1月に発売されたNintendo Switch版はシリーズファンから高い評価を得た。
筆者はすでにNintendo Switch版を遊んでいたが、今回スパイク・チュンソフトより提供いただいたSteam版を再度プレイしたところ、“1000回遊びたくなる”出来栄えだと再認識した。「もっと多くの人が遊ぶべきだ」と強く感じたので、何度も遊びたくなる理由を改めて言語化した。読者の方々が、この深い深いダンジョンに足を踏み入れるきっかけとなれば幸いだ。
考えることがなによりもの武器
本作におけるプレイヤーの目的は、1階ずつダンジョンを踏破して、最後に待ち受けるボスを倒すことだ。ダンジョン内にはさまざまな武器や道具が落ちていて、それらを駆使しながら敵と戦いレベルを上げて強くなっていく。ダンジョンはランダム生成で、入る度に構造が変わるほか、さまざまな罠も用意されている。HPが0になると倒れ、持ち物やレベルをすべてロストしてしまうという厳しさも持ち合わせている。
本シリーズの有名なキャッチコピーとして、“1000回遊べるダンジョンRPG”というものがある。その言葉通り、本作には何度でも挑みたくなる中毒性がある。その理由は、いくつか考えられるので、本作の魅力をチェックしながら考えていこう。
本作の特徴として、完全なターン制というものがある。自分も敵もターン制に則って動いており、自分が攻撃したら相手も攻撃してくる……というように、攻撃・移動・道具の使用といった行動はすべて1ターンとして消費される。一方、向きの転換やインベントリ開閉といった“考える”ために必要なアクションはターンとして消費されない。敵が勝手に動くことはないので、アクションさえ起こさなければじっくり次の一手を考えることも可能だ。
本作をプレイしていると、時折複数の強い敵に囲まれて、「これもう無理だ……」と絶望的な状況に陥ることがある。しかし、そんな場合でもリソースや思考次第で覆すことは決して不可能なことではない。次にどう動くべきか、今持っている道具でどれが一番刺さるか。ターン制だからこそじっくり考えることができるし、考えた結果それがうまくいった時はとても気持ちいい。
筆者の例をあげると、まず「鬼サソリ」という強めの敵に複数囲まれた。なんとかHPの多さで乗り切ることができたが、回復中に遠距離から攻撃してくる敵が現れて死を覚悟した。しかし、幸いにも相手の視界を一時的に潰す「目つぶし草」を投げつけた所、見事にハマって倒すことができて胸を撫で下ろした。
本作においては、ラスボス戦だからといって、特別なルールがないのも良い点だ。読者の方々は、RPGで特殊な敵やボスにアイテムや魔法が無効化されて苦い思いをした経験はないだろうか。もちろん、しっかりと制御された体験を提供することによる面白さもあるため、これを否定するつもりはないが、筆者はあまり好みではない。
一方本作では、ラスボスでさえも特別な条件はない。道具によっては他のザコ敵より効力が少し弱いということはあるが、一定期間一切ダメージを受けなくなる「無敵草」といったチート級アイテムや、思ったような行動ができなくなる「混乱草」など安価で入手しやすい道具といったものでも、しっかり効力を持つ。
(自分の観測範囲内では)ゲーマーは、ちょっとした工夫で有利になる“ズル”な体験が好きなもの。本作は“ゲーム的な都合”を感じさせる要素を排除して公平さを感じさせつつも、プレイヤー側が“ズル”できる余地が残されていて、ゲーマー好みの味付けに仕上がっているのだ。
ゲームを初めて最初の1回の挑戦でクリアすることも理論上可能だ。一般的には何度か挑むのが普通なので「理論上」と但し書きをつけているが、実際のところこれは非現実的なことではなく、それを達成して早々にエンドコンテンツにたどり着くユーザーも少なからず存在する。加えて、プロローグで一度挑むことになる“負けイベ”的な雰囲気のラスボス戦も、立ち回り次第で撃破して即エンディングに行くこともできるようだ。
やり直しでも、知識は消えない
それでも、本作の難易度は高く、倒れてしまうことはよくある。倒れてしまうと持ち物は全部ロスト、レベルも1からと、それまで積み立てた努力やリソースがすべて水泡に帰す。慣れれば序盤はサクサク進めるが、後半になるほどたった一つの判断で転落することもある。後半こそ良い道具が揃っていることもあるので、打ちひしがれたような感覚になるはずだ。そして、失敗の要因は主に自分のせいで、「あそこでああしておけば……」と後悔を覚えることだろう。
しかし、その後も再度挑みたくなる。それは、悔しい経験や知識を蓄えられるからだ。プレイヤーの心のなかだけでなく、一度出会った敵や拾った道具は手帳という形で記され、敵や道具の特性や出現するフロアなどがいつでも参照できるというところもあるだろう。
その中でも一番大きいのはあらゆる困難に考えて対処しうる懐の深さや、すぐにクリアまでたどり着けるという仕様であるからこそだと思う。本作のプレイヤーは「次こそクリアできるかも!」という最高に熱くなるモチベーションがあるからこそ、何度倒れても挑んでしまうのだ……というのが筆者なりの結論である。
そして無事クリアできたとき、あなたは多幸感と達成感に包まれるだろう。『風来のシレン6』は、試行錯誤して、努力して、悩んで、閃くという苦労がしっかり報われる作品であることは保証できる。そして、ストーリークリア後にはさらなる難しさや特殊な条件のある追加ダンジョンというご褒美が待ち受けている。例えば、「推測の修験道」というダンジョンは、すべての道具が未識別だが、インベントリにて3つの選択肢が現れ、それを手がかりに進んでいくことになる。ストーリーダンジョンとはひと味もふた味も違ったダンジョンに挑戦できるのだ。
今回発売するSteam版には、Nintendo Switch版で約1年間行われてきた無料アップデートの内容がすべて最初から収録される。たったの5階である反面敵が急激に強くなる「GoGoダンジョン」といった追加ダンジョンが合計6つあるほか、クリア済のダンジョンに特殊な条件で挑む「御神木モード」、御神木モードで使用可能なキャラ「狐渇シレン」「竜海シレン」など、より深く楽しめるコンテンツがある。
さらに有料DLC「plusパック」を購入すれば、攻撃ができないため特殊アクションで敵を避けて進む「コッパ」、攻撃力が高く会心の一撃が出やすい代わりに防御力が低い「アスカ」といったプレイアブルキャラに加え、最高難度の「超・神髄」をはじめとした10のダンジョンも加わることになる。
本作でストーリーダンジョンをクリアするという成功体験を得ると、さらなるコンテンツを遊び尽くしたくなる。ゲーム本編だけでも何十時間、何百時間とやりこめるコンテンツ量に加え、DLCでさらなる挑戦を求めることができるので、間違いなく満足できる作品になっているはずだ。
『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』は、Nintendo Switch向けに発売中。PC(Steam)向けにも12月12日に発売予定だ。本作の魅力にのめり込み、この年末の時間をダンジョンで過ごしてみてはいかがだろうか。のめり込んだ人は、Steam版にあわせて新発売となるサントラ「劇伴音楽之巻」もチェックしてほしい。