『Evoland』 “システム進化RPG”の魅力、そして続編への期待
『Evoland』はShiro GamesによるRPG。もとはゲームジャム出身の作品だ。ゲームジャムとは、アマチュアを中心に(ときにはプロもまざり)、1日から数日間程度という時間制約のなかで1本のゲームを創りあげるイベントのことだ。有名所としては全世界で同時開催されるGlobal Game Jamがあげられる。
現在は製品版がSteamで1000円で販売されているほか、ゲームジャムでの開発版は今でも公式サイトにてブラウザ上でプレイできる。Steam版の発売日は1年以上前の2013年4月4日だが、続編『Evoland 2』の発表があったいま、あらためてこの作品の先進性を評価したい。
その発想はなかった
『Evoland』は48時間という時間制限の中で開発されたということもあり、基本的にはワン・アイデア、インパクト重視のゲームである。形式としては一般的なRPGのそれをトレースしているものの、その特徴は「システムが進化する」という一点に集約される。アイデアがゲームシステムそのものに非常に深く食い込んでおり、ゲーム自体と不可分となっているのが秀逸だ。同様の発想で別のゲームを創ることができない(創ったところで二番煎じのそしりは免れない)、という点ではまさしく新しい分野の開拓者であり、発想の勝利といえるだろう。
ゲーム開始直後から『Evoland』はインパクトがある。なんといっても「右にしか動けない」のだ。右にある宝箱を開けると左への移動がアンロックされる。続いて左の宝箱を開けると、マップがあらわれ、2次元のマップを動けるようになる。こうして次々とゲームシステム自体をアンロックしていくのが本作の基本の流れだ。画面も進化するにつれてGB風の緑モノクロ表示がカラーになり、16bit(風)グラフィックになり、ついには3Dになる。
キモであるゲームシステムの"進化"は非常に劇的で、本作のメインアイデアが結実した部分といえる。戦闘システムの進化がとくに印象的だ。最初のうちの戦闘はゼルダ風のアクションRPG式だったところが、ターン制戦闘がアンロックされたとたん別のゲームに迷い込んでしまったような気分になる。BGMも音質をふくめて細かく進化する。ストーリーラインがアンロックされると、NPCとの会話からゲームのストーリーがだんだんと形作られてゆく。
ゲームとしては基本的に一本道のRPGであり、難易度を云々いうほど難しい場面はほとんどないといっていいだろう。にもかかわらず、次々とアンロックされていくシステムが純粋に楽しく、プレイヤーをひっぱる力は思いのほか強い。
RPGのひとつの側面の縮図
『Evoland』が非常に強く影響を受けているのが『ゼルダ』シリーズ、そして『ファイナルファンタジーVII』のふたつだ。初期段階のアクションRPG式戦闘や、ダンジョンにおける謎解き要素はほぼそのまま『ゼルダ』を踏襲しているし、ターン制戦闘がアンロックされると、FFシリーズのアクティブタイムバトルがはじまる。
本作の歴史を追うようなシステム進化は、RPGというジャンルの進化の縮図であり、その歴史の追体験ともいえる。上記2作品に多少かたよってはいるが、やはり有名どころということもあり、共感できるプレイヤーは多いのではないだろうか。ノスタルジーにひたれる層がメインターゲットだが、進化自体をゲームにしてしまったというアイデア部分は年齢やプレイ経験の有無を問わず楽しめるはずだ。
続編への期待
本作は全編を通しても総プレイ時間で5~6時間ほどで、多少ボリューム感に欠ける印象がある。長ければいいというものでもないが。だがプレイ時間の多くが高めのエンカウント率による戦闘に割かれることから、すこし冗長さを感じる。
シナリオ面でも、本作のコンセプトからして凝ったトリックやストーリーを入れづらいのはわかるのだが、もっとゲームの歴史自体に切りこんだシナリオでもよかったのではと思えてしまう。これは本作プレイ中のドキドキ感、期待の裏返しでもあるので、続編『Evoland 2』ではぜひそのあたりの練りこみにも注目してみたい。
ここまできたなら、システム面でも続編にはいっそうマイナーなゲーム史の表現を期待してしまうのが人情というもの。実際に公式サイト『Evoland 2』には、SRPG風の移動マス表示や、縦シューティング風(!)のスクリーンショットが公開されていて期待をあおられる。前作が日本産ゲームにインスパイアされていたのだ。和製SRPGなら『タクティクスオウガ』や『ファイアーエムブレム』など名作はたくさんある。また、本流であるRPG部分についても、『MOTHER 2』(EarthBound)のように、海外で評価の高いものは枚挙にいとまがない。『2』の進化システムでも、より特色のあるタイトルを"参照"してほしいところだ。