『フリントロック』開発者に訊く「ソウルライト」を公称ジャンルに掲げる理由。舞台設定などと一緒に訊いてみた


パブリッシャーのBeep Japanは、『Flintlock: The Siege of Dawn』(以下、『フリントロック』)のPS5向けパッケージ版を2024年11月28日に発売する。本作は広大な世界を舞台にしたアクションRPGだ。一見すると『Demon’s Souls』に端を発するソウルライクのゲームのような印象を受けるが、本作の開発陣は「ソウルライト」のジャンル名を公称している(関連記事)。

本作を手掛ける開発スタジオのA44 Gamesに、弊誌はメールインタビューを行う機会に恵まれた。クリエイティブ・ディレクターのSimon Dasan氏とナラティブデザイナーのDaniel Baider氏から、興味深い話の数々を聞くことができたので、この記事で紹介したい。

ナポレオン時代を舞台に銃で神々と戦うロマンあふれる世界観

──『フリントロック』のコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?

Simon Dasan(以下、Dasan)氏:
「フリントロック・ファンタジー」と呼ばれるジャンルの小説が、本作のコンセプトに大きな影響を与えました。ナポレオンの活躍していたような近代を舞台にしつつも、銃で神々と戦っていくファンタジーの世界観に開発陣は魅了されていたんです。「フリントロック・ファンタジー」の世界観は新しいゲームの舞台にふさわしいと考えました。そうして開発を進めていって本作が誕生したんです。

もし、この記事を読んでいる方が「フリントロック・ファンタジー」のジャンルを詳しく知りたい場合は、Brian McClellanによる小説『The Powder Mage』三部作をチェックすることをオススメします(筆者注:記事執筆時点で邦訳は出版されていない)。

──神々と死闘を繰り広げる『フリントロック』ですが、ゲームに登場する神々は何からインスパイアされたのでしょうか?

Dasan氏:
『フリントロック』に登場する神々は、メソポタミア神話からインスピレーションを得ました。神話や文化からインスピレーションを得たファンタジー世界が、本作の舞台になっています。本作の開発を正式に始めるにあたっては、以下のことを考慮しました。

・ナポレオン時代(制服、戦場、銃器の技術レベル)
・メソポタミア神話(神々、地下世界、古代環境)
・「フリントロック・ファンタジー」という文学のジャンル(「神と銃の戦い」というテーマの着想)

私たちA44 Gamesは、ニュージーランドを拠点にしています。『フリントロック』ではプレイヤーが美しいロケーションを見ることができるように、現実のニュージーランドの風景をゲームの参考にしました。ファンタジー世界と現実世界を組み合わせることで、本作の景色はユニークなものになっていると考えています。


「ソウルライト」という独自のジャンル名を付けた理由とは

──『フリントロック』は公式で「ソウルライト」と紹介されていますが、「ソウルライク」ではなく、なぜ「ソウルライト」というジャンルをつけたのでしょうか?

Dasan氏:
『フリントロック』は『ダークソウル』シリーズほど難しいゲームではありません。いわゆる「ソウルライク」の要素がありながらも、より多くのプレイヤーが楽しめるアクションRPGとして本作を「ソウルライト」と表現しました。

本作の戦闘がリズミカルなものになるように、私たちはさまざまなアイデアをゲームに取り入れました。主人公は斧による近接攻撃と銃による遠距離攻撃を駆使するほか、魔法攻撃も織り交ぜて戦っていきます。敵の鎧を破壊することで大ダメージを与えることもできますし、魔法攻撃によって無数の敵をなぎ倒すことも可能です。

──かつてA44 Gamesが開発した『Ashen』にも、『ダークソウル』のような雰囲気がありました。もし『ダークソウル』以外にも『フリントロック』に影響を与えた作品があれば、教えていただけないでしょうか?

Dasan氏:
『トニー・ホーク プロ・スケーター』シリーズや『Forza Horizon』シリーズなど、プレイヤーからすれば意外な作品からも影響を受けています。一見すると馴染まないと思われるようなものを取り入れて、それを上手く機能させていくのが私たちは大好きなんですよ。主人公の移動アクションについては、ほかのアクションRPGではあまり見られないものになっています。ジャンプ中に火薬を爆発させることで2段ジャンプをすることができますし、ジャンプ中に空中ドッジを決めることもできます。

本作ならではのシステムとしては、戦闘中にダメージを喰らわずにアクションを繰り出すことで獲得できるお金が増える「名声倍率」を導入しました。名声倍率で増やしたお金はプレイヤーの好きなタイミングで回収することができます。リスクとリターンをプレイヤーが管理できる名声倍率システムは、私たちが思い描く「ソウルライト」のメンタリティを示すものになりました。


神の打倒を目指す主人公と狐のような相棒が描くストーリー

──主人公を務めるノルは、どのようなキャラクターなのでしょうか?

Daniel Baider(以下、Baider)氏:
『フリントロック』の世界では、人類は滅亡の危機にあります。神々がアンデッドの軍勢をけしかけて街を破壊しようとしているのです。主人公を務めるノルも、混乱のさなかに故郷を追われて両親を亡くしました。彼女は自分の人生が切り裂かれた日のことを決して忘れません。

ノルは、自分が決めたことをやり通す意思の強さと集中力を兼ね備えたキャラクターです。主体的にノルが行動していることを実感できるように、ゲームのストーリーでの表現に注意しました。ノルがどのように成長していくのかを見守っていただければと思います。ゲームの世界を探検することで、ノルと彼女の過去を知っていただければ幸いです。

──主人公のノルと相棒のエンキの関係性はどのように描かれるのでしょうか?

Baider氏:
エンキは狐のような謎めいた存在です。ノルとエンキの関係は、『フリントロック』でもっともエモーショナルなものになります。2人とも自分の力で物事を解決していく主体性の強いキャラクターですが、本作ではお互いを頼らないといけない状況に追い込まれています。ストーリー進行に応じて2人の関係性が変わっていくので、その変化を楽しんでください。

メインストーリーだけでなく、サイドクエストをプレイすることでも2人のやり取りを見ることができます。ノルとエンキの会話はユニークなところも数多く存在しますので、2人のことを知るのに大いに役立つはずです。


──『フリントロック』のサウンド制作についてのこだわりはどのようなものでしょうか?

Dasan氏:
『フリントロック』のサウンドトラックでは、コンポーザーが素晴らしい仕事をしてくれました。とくに気に入っているのは、ボス戦の音楽にデジタルやテクノの要素を取り入れて、別世界のような雰囲気を出してくれたところですね。このアイデアは本当に上手くいったと思っていますし、ほかのゲームとは違う雰囲気を生み出すことにつながりました。


──ありがとうございました。

『Flintlock: The Siege of Dawn』は、PS5向けパッケージ版が2024年11月28日に発売予定。デジタルサウンドトラックやデジタルアートブックなどを同梱するデラックスエディションのほか、デジタル特典に加えてオリジナルサウンドトラックCDやフィジカルアートブックなどのフィジカル特典も同梱するリミテッド デラックスエディションが販売される。ダウンロード版は、PS5/Xbox Series X|S/PC(Steam/Epic Gamesストア)向けに発売中だ。