美少女ソウルライク『AI LIMIT 無限機兵』は、「死にゲー」を緩和しつつもボス戦は強く。アニメ調とアメとムチ難易度で独自の特徴放つ


人類滅亡の危機に瀕した世界を冒険していくアクションRPG『AI LIMIT 無限機兵』の無料体験版が、2024年10月15日から開催されるSteam Next Festにて期間限定で公開されている。弊誌は、今回配信される無料体験版を先行してプレイする機会を得た。この記事では、約2時間の試遊で得たインプレッションをお届けしよう。なお、試遊には開発中のゲームデータが使用されているため、配信されるバージョンとは異なる点があるかもしれないことに留意してほしい。

退廃した世界観を舞台にした高難易度のアクションRPGと聞くと、「またソウルライクかよ」と言いたくなるかもしれない。正直わかる。だが、ちょっと待ってほしい。たしかに『AI LIMIT 無限機兵』は『ダークソウル』シリーズなどに影響を受けている。しかし、アニメ調のタッチで描かれる美少女の主人公や近未来感ある設定の数々は本作を独自の世界観を持つアクションRPGへと昇華させている。2019年の「PlayStation China Hero Project」で選出された本作が数年に及ぶ開発期間を経て公開した1stトレーラーは、アニメ調の主人公が親しみやすく日本でも注目を集めた(関連記事)。

アニメ調のグラフィックで描かれる主人公

本作は独自の魅力がある。それはアニメ調のグラフィックを採用したソウルライクとして、装備品を着せ替えて主人公の見た目を変更できることだ。たとえば、初期装備の「ぼろぼろの服」から「旅人の服」に装備を変更することで軽やかで優雅な印象になるし、「機兵の軽鎧」を装備すれば戦う兵士としての機能美を味わえる。

主人公の頭と体に防具を装備可能だ。2箇所にしか防具を装備できないのは、このジャンルの本家である『ダークソウル』シリーズや『エルデンリング』からすると少ない。しかし、「機兵の面具」と「機兵の軽鎧」のように同じ系統の防具を同時に装備することで、統一感のあるビジュアルを堪能できる。物足りないという印象はなく、頭防具と体防具が噛み合った主人公の姿を見ることができるのは本作の長所といっていいだろう。


ちなみに体験版のストーリーモードをクリアしたあとにプレイできる「BOSSチャレンジモード」では、体験版ステージでは入手できなかった数多くの装備品が用意されていた。機械を絶対に倒すという決意を感じさせるゴツゴツとした防具から、高貴な雰囲気漂う聖職者の防具などを、BOSSチャレンジモードでは装備可能だった。製品版ではかなりの種類の防具が登場するだろう。

体験版をプレイして気になったのは、防具を強化するシステムが存在しなかったところだ。装備品によって防御力や状態異常への抵抗力が変動するが、基本的には新しく入手した防具の方が強いものになっている。試遊の最初の方で入手した「旅人の服」よりも、のちに入手した「機兵の軽鎧」の方が防御力が高い。個人的には「旅人の服」のビジュアルが気に入っていたので、もっと強くして使い続けていきたかった。武器を強化するシステムは体験版にも存在したため、防具を強化するシステムが製品版に実装されればうれしい。


機械の兵士が廃墟を冒険するポストアポカリプスな世界観

主人公のアリサは、作中では「機兵」と呼ばれる機械の兵士だ。機兵といっても見た目は人間に近く、会話して人間とコミュニケーションを取ることもできる。主人公は生まれたばかりの機兵のようで、世の中のことを詳しく知らない。本作の世界を知らないプレイヤーとシンクロするようなキャラクターとして、主人公は登場する。

体験版では下水道のステージをしばらく進んだところ、主人公ではない別の機兵と出会った。「アステリア」と名乗る機兵によると、機兵は崩壊した都市を修復させる力を持つらしい。『ダークソウル』の篝火に相当する「晶枝」を灯していくことが、世界の復興につながるようだ。

主人公に都市復興への助力を依頼したあと、アステリアは消滅してしまった。以前から不調だったようで、主人公に使命を託すまで耐えていたのかもしれない。滅亡に瀕して生き延びることに精一杯な人類と比較しても、アステリアは体験版でもっとも理性的な会話ができる貴重な存在だった。自らの生死を問わず、機兵としての矜持を貫くアステリアの使命感の強さに切ない気分にさせられた。


人間とは異なる存在としての「機兵」や『ダークソウル』の篝火に相当する「晶枝」など、本作は独自の用語が使われている。日本語にはあまり馴染まない言葉が使われているため、体験版をプレイしていると ストーリーへの理解に時間を要した 。カウンターなどのシステム周りにも独自の用語が使われている。

周囲を探索して敵と戦っていくところは『ダークソウル』と同じなので、近未来のSFモノのソウルライクと思ってプレイすれば支障はない。光を灯した晶枝が死に戻りのチェックポイントになることや晶枝から別の晶枝へワープする機能など、ソウルライクに求められる機能は揃っている。


意地悪な「死にゲー」要素のないステージ

今回の試遊では、本編で訪れる最初のステージ「地底水路西南」を探索することができる。主人公は下水道のような場所を進んで地上に出ることを目指す。シンプルな構成のステージは迷うことがなく、拠点から別の拠点へと進んでいくことができる。

体験版のステージには、数々の寄り道スポットが用意されている。ストーリーを進めるという観点からは立ち寄らなくてもいい場所だが、そうした場所を探索することで装備品や武器を強化する素材などのアイテムを入手可能。寄り道する場所によっては、雑魚敵よりも強い相手が待ち受けている。ソウルライクや試遊では主人公の成長要素を体験できないことがよくあるが、今回は主人公を強化していく楽しみを味わうことができた。

結論からいうと、本作はソウルライクとしてはさほど難しくはない。高難易度に頼りすぎないアクションRPGとして、本作の体験版は筆者好みだった。しっかりと探索を進めていけば、新たな装備品や武器の強化素材を入手できる。ソウルライクによくあるように落とし穴で一発で死亡することもなければ、 膨大な数の敵に袋叩きされて死んでしまうということも体験版にはなかった。用語が独特なことを除けば、チュートリアルも丁寧といえる。


主人公が死亡すると所持金を失う「ロスト」という概念がソウルライクに存在する。復活したあとに死亡した場所を再訪して所持金を取り戻すことがソウルライクの醍醐味の1つでもあるが、本作ではそもそも死亡したからといって所持金がゼロになるわけではない。主人公の装備しているアクセサリーによって、死亡後に残る所持金が変動する独特なシステムを本作は採用している。体験版では、死亡後も75%の所持金が残るアクセサリーが当初から装備されていた。

死亡後も一定の所持金が残る本作独自のロストについては、良 いところと悪いところがあるだろう。強敵に敗戦後も即座に主人公の強化ができるところが良 いところだ。従来のソウルライクではボス戦で所持金を失ってしまうと、ロストしたものを回収して主人公を強化することがそのボスを倒すまでは実質的にはできなかった。その一方でロストしたものを取り戻したときの達成感は、本作では味わえない。ひとつひとつの戦いの緊張感が薄れてしまっているのも否定できないところだ。オーソドックスなステージ構成やロストの緩和など、いわゆる「死にゲー」としての要素をあえて省いたアクションRPGになっていると筆者は感じた。

雑魚殲滅力に直結する独創的なシンクロ率システム


本作のバトルで最大の特徴となっているのは、主人公と主人公が使うエネルギーの「シンクロ率」と呼ばれるシステムだ。主人公の攻撃を連続で当て続けることでシンクロ率は上昇し、逆に相手から攻撃を喰らうとシンクロ率が下がる。シンクロ率によって攻撃力が変わってくることに大きな意味があり、70%のシンクロ率だと雑魚敵を倒すのに4回攻撃を当てなければいけないが、80%のシンクロ率だと雑魚敵を倒すのに3回の攻撃で済むといった違いがでてくる。シンクロ率は雑魚殲滅力に直接関わってくる重要なシステムといえるだろう。

ほかにも溜めた一定値のシンクロ率を消費することで、その武器が持つスキルを発動したり、遠距離魔法攻撃や回復魔法などを使用可能だ。シンクロ率と絡めた魔法攻撃の発動可否には感心させられた。遠距離から魔法攻撃を撃っているだけで敵を倒すことのできるゲームもあるが、単調になりがちである。その単調さを解消する方法として搭載されたとすれば、シンクロ率システムは機能している印象だ。

なお、シンクロ率を上昇させる方法は専用のアイテム消費によってもできるため、来た道を引き返して雑魚を攻撃し、シンクロ率を上げてから戻ってきてもいい。実際のところ筆者は、道を塞ぐ巨人を遠距離魔法を、シンクロ率を最大限駆使して倒すことに成功した。本作は筆者が想像していたよりも柔軟な攻略法を許容している。遠距離魔法攻撃が「レールガン」と名付けられていたことも気に入った。近未来における魔法のようなものとして、本作独自の世界観構築に寄与している。


武器はかなりの種類が存在する。長剣、双剣、大剣の3つの武器種を獲得することができたし、場合によっては同じ武器種でもモーションやスキルの挙動が異なってくる。通常攻撃と強攻撃それぞれが違うため、プレイヤーによって好みの武器が分かれてくるだろう。

今回はオーソドックスな「機兵の長剣」を選択した。素早く通常攻撃を出せるのはもちろん、強攻撃の刺突は溜めれば溜めるほど高いダメージを相手に与える。相手の技を見極めて、高めたシンクロ率から敵を倒していくのは快感だ。連続行動を制限できるスタミナの制限はないものの、ガードやパリィといった防御方法の発動についてもシンクロ率の消費が必要になってくるため、本作のバトルはシンクロ率の管理を中心にしたバトルになっている。

パリィの必要性を教えてくれるボス戦

道中も強敵とは何度か戦ったが、今回プレイしたステージ「地底水路西南」の最奥で待ち構えていたボスはひと味違った。ボス「ロア」と呼ばれる狼のような姿をした兵士で、歴戦の勇姿のような迫力を醸し出している。攻撃力も極めて高く、開幕直後からジャンプして猛攻をしかけてくる。回避しようにもロアの槍による攻撃範囲が広くて、かわしきることができない。後ろに逃げようとする主人公の姿に合わせるように、ロアは前へ前へと出てくる。初戦はあっという間にゲームオーバーになってしまった。

死に戻りを繰り返すことで、ボスの攻撃パターンが次第にわかるようになった。このボスはバトル開始直後にジャンプ攻撃を繰り出してくる。そのことに気づいた筆者は、次の戦いで相手のジャンプ攻撃にパリィを決めた。パリィは相手の攻撃をノーダメージで回避できるだけでなく、成功後の無防備な相手に強烈な一撃を叩き込むことができる。何度も負けた経験を活かすことができたのがうれしい。

パリィからの反撃でダメージを与えていき、初めてロアの体力を3分の1ほどまでに追い詰めることができた。そうすると、ロアが当然狼のように咆哮し、さらに獣じみた連続攻撃を繰り出してきた。左右の動きはもちろん、高く飛び上がってからの落下攻撃を新たに仕掛けてくるようになったので、こちらからはなかなか攻撃できない。とにかく回避に集中して、最後は遠距離攻撃でボスを撃破した。初見で勝てたのは僥倖といっていいほどに手強く、それゆえに撃破したときは『ダークソウル』シリーズに通じるような達成感があった。


試遊版のストーリーモードをプレイした限りでは、理不尽なほどの難易度にはなっていなかった。ボス戦前に拠点があり、近くでアイテムの売買をすることができたのも多いだろう。また、本作はアクションRPGであるため、地道にレベルを上げて主人公のステータスを上昇させていけば確実に強くなっていくことが可能だ。この手のジャンルにデビューしてみたい人にとっては、本作はうってつけのタイトルといえる。アニメ調の美少女な主人公に興味を惹かれただけでも、本作の無料体験版を試してみる十分な価値があるだろう。


体験版では、ストーリーモードのクリア後に「Bossチャレンジモード」がプレイ可能になる。体験版のBossチャレンジモードで戦う相手は、製品版の中盤に登場するボスの「機兵ハンター」だ。筆者が体験版のストーリーモードをクリアしたときの主人公のレベルは25だったが、Bossチャレンジモードの主人公のレベルは101だった。それでも機兵ハンターは、体験版のストーリーモードで戦ったロアよりもはるかに強い。連続で攻撃を喰らうとあっという間に死ぬ。雑魚敵を倒してレベル上げをできない体験版のBossチャレンジモードは死にゲーといってもいい高難易度なものになっている。

『AI LIMIT 無限機兵』の無料体験版は、2024年10月15日~22日にPC(Steam)で配信中。本作に興味がある場合はSteamストアページのウィッシュリストに登録しておこう。体験版はPS5でもリリース予定とのこと。なお、製品版はPS5/PC(Steam)向けに2024年中の発売を予定している。