騎士道ロマンス紙人形劇RPG『Backdrop』が開発中。マスクをかぶった王子が「言葉」と「感情」を武器に姫を救う

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第298回目は紙人形劇RPG『Backdrop』を紹介する。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第298回目は紙人形劇RPG『Backdrop』を紹介する。

KickstarterでRPGゲームのクラウドファンディングを目にすることは多いが、紙人形劇の世界を舞台にしたRPGはめずらしいだろう。目をひくユニークなビジュアルだけでなく、新鮮なアイデアが詰まった作品となっている。

ベースとなるストーリーは、おとぎ話や騎士道ロマンスではお馴染みのもの。若き王子と愛する姫の2人が結婚式を挙げていると、どこからともなくやってきたデーモンが姫を連れ去ってしまう。デーモンを送ったのは、2人の結婚をねたむ隣国の領主。なんとも残酷な運命に神々を責め、打ちひしがれる王子だが、ここで「さあ王子よ、いまこそ剣をとり立ち上がるのだ」というお約束の流れに続き、姫を連れ戻す旅がはじまる。

王子が旅する世界だけでなく、全てのキャラクターは紙や布など紙人形劇と同じ素材で出来ている。本作のこだわりはそこで止まらず、物理特性まで紙人形劇らしいユーモラスなものに。背景画を剣で突けば穴があくし、突風が吹けば敵は飛んでいく。ろうそくの火が身体にうつれば紙のように燃える。こうした特殊な環境をうまく利用することで危機を乗り越えていくのだ。

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演劇らしい感情的なセリフまわしも特徴のひとつだが、本作では言葉が行動よりも強い影響力をもっている。セリフの選択肢によって結末が変わる、といった単純な話ではなく、発する言葉によってキャラクターの体力が回復したり、ときにはダメージを与えるという。言葉をうまく利用することで主人公はヒーローにも悪党にもなりうるのだ。言葉そのものだけでなく、言葉にできない「感情」も武器となる。感情的な出来事や記憶をあやつることで、魔法のような効果を生み出す。人魚の涙は敵の戦意を失わせ、楽しい記憶から生まれた光は闇の手先を遠ざける。

もちろん、悪口を言うだけで敵を倒せるわけではなく、剣術をふくむアクション性のある戦闘が用意される。短剣による素早い連続突きや、戦斧による重い一撃まで、装備する武器によって動作と戦術が変わってくる。多くのRPGではキャラクターのクラスによって装備できる武器が決められているが、本作ではクラスを選択する代わりに、さまざまなマスクを着用することで能力や性格が変動する。高潔なナイトや、道化のようなトリックスター(物語をかき乱す立ち位置のキャラクター)など、状況に応じたペルソナに変身することで主人公を有利な方向へ導いていく。また、マスクは戦局を変えるだけでなく、他のキャラクターとの会話や振る舞いまで左右する。ナイトは命令調で相手と対峙し、トリックスターはペテン師じみた話術で相手をあざむくことに長けている。

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この世界の住民はそれぞれ善か悪かの「配役」が決められているが、自らの運命に逆らった主人公だけは善と悪を自由に選ぶことができる。いわゆるモラル制度を導入しており、プレイヤーは正義の王子として振舞うことも、悪意に満ちた反抗期王子ルートを辿ることもできる。善と悪のどちらに染まるかによって手にはいる能力が異なり、ゲームプレイに影響を及ぼすという。

『BackDrop』は当初2つの地域と3つの仮面による小規模プロジェクトとして始まったが、Kickstarterのクラウドファンディングで目標としている17万ユーロ(約2000万円)の達成や、その他の資金提供額に応じて規模の拡大を目指している。対象プラットフォームはPC/Macで、Steam/Humble Store/GoG向けの販売を予定。リリースは2017年9月を目標としている。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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