『Wasteland 2』のInXileが発売タイトルで使用した3Dモデル素材を販売へ。高騰する開発費への一助となるか
inXile Entertainment(以下、inXile)は9月20日、同社の開発タイトルで使用した3Dモデル素材を、TurboSquidとの独占契約のもと一般に販売すると発表した。
inXileはアメリカ・カリフォルニアに拠点を置くデベロッパーで、『Fallout』や『Wasteland』などを手がけたベテラン開発者Brian Fargo氏により2002年に設立された。近年ではBethesda Softworksから発売された『Hunted: The Demon’s Forge』や、Kickstarterで成功した『Wasteland 2』の開発元として知られ、これらは日本でも発売された。現在は同じくKickstarterで成功した『The Bard’s Tale IV』と、現在Steamで早期アクセス中の『Torment: Tides of Numenera』を開発中。
TurboSquidはアメリカ・ニューオリンズに拠点を置く企業で、ゲーム開発をはじめ、さまざまな用途に使用できる3Dモデル素材を取り扱っている。登録アーティスト/モデラーが制作した素材を販売するマーケットプレイスを運営しており、キャラクターから動植物、建物、家具などがある。無料で使えるものから数千ドル、高いものでは150万ドルもする素材も販売されている。中には実在の製品を再現したものもあるが、権利元からの認可を受けていない場合がほとんどで、そういった素材は「Editorial Uses Only」として商業利用を禁止している。
今回の発表の中でinXileのBrian Fargo氏は、「我々は3Dモデル素材の信奉者だ。我々が丹精込めて作り上げた素材を提供することは、インディー開発者および業界の発展に寄与するだろう。」と語る。
一方のTurboSquidのCEO Matt Wisdom氏は、このような取り組みが多くのゲームスタジオにとって一般的になることを期待する。「ゲームスタジオにとって、多額のコストをかけて数千もの3Dモデル素材を制作することは負担になることが多い。しかし、その素材を売ることができれば、高騰する開発費の軽減につながるだろう。そして世界中の開発者が、ゲーム開発にすぐに使える素晴らしい素材を手にする機会を得ることにもなる。」
今後、inXileは過去のタイトルを含め、手がけるタイトルの3Dモデル素材をTurboSquidを通して販売することになる。まずは『Wasteland 2』からはじめ、年内に提供開始予定としている。販売価格については不明だが、ロイヤリティ・フリーで提供されるので、購入後は自由に使えるようになるようだ。
有名なタイトルに携わったことのあるアーティスト/モデラー個人が、こういった場でオリジナルの素材を売り、お金を稼ぎつつ経験を積むことはあるだろう。しかし著名なメーカーが自ら、しかも発売したタイトルの素材を外部に切り売りするのは珍しい。過去にはEpic Games傘下のChAIR Entertainmentが、発売見送りとなった『Infinity Blade: Dungeons』の素材を無料提供したことがあったが、これはEpic GamesのゲームエンジンUnreal Engine 4のプロモーションという側面が大きかった。TurboSquidが期待するように、新たな開発費の回収モデルとして今後一般的になるのか興味深い。
ちなみに、『Wasteland 2』の開発においては、ゲームエンジンUnityのアセットストアで購入した素材をアレンジして使用している。また実験的に、同ストアを通じて3Dモデル素材を一般から募集したこともある。無用な心配だとは思うが、間違っても権利問題などが持ち上がることがないよう祈る。