大規模格闘ゲーム大会にて、「試合が終わってないのにガッツポーズして逆転負け」する珍事発生。ぬか喜びで負ける“ヲシゲ事件”の再来
格闘ゲームの大規模大会「Combo Breaker 2024」が、アメリカにて現地時間5月24日から26日にかけて開催された。本大会では、『鉄拳8』や『ストリートファイター6』、『GUILTY GEAR -STRIVE-』をはじめとした対戦格闘ゲームのトーナメントを開催。そのタイトルの中のひとつである『BLAZBLUE CENTRALFICTION』(以下、BBCF)のTOP8戦にて、とある選手が「ほぼ勝ち確定」の状況から逆転負けを喫する珍事があった。
「Combo Breaker 2024」は、アメリカのシカゴで開催された格闘ゲームの大規模大会だ。2015年に第1回となる「Combo Breaker 2015」が開催され、コロナ禍には開催中止の憂き目にあったものの、2022年より再開。今年で第8回目の開催となった。今大会では、前述したタイトル以外にも『ヴァンパイアセイヴァー』や『餓狼 MARK OF THE WOLVES』など、現行タイトルだけではなく過去に発売された対戦格闘ゲームもピックアップされ、今回は全24タイトルがメインタイトルに選出。なお、start.GGによると、Combo Breaker 2024へは4500人を超える出場希望者が集まったようだ。
そんな盛り上がりを見せたCombo Breaker 2024のメインタイトルに選ばれた『BBCF』にて、とある選手がまだ試合が終わっていないのにガッツポーズを取り、ほぼ勝ち確定の状況から逆転負けに至ってしまう出来事があった。その出来事が起こったのは、TOP8のウィナーズセミファイナル第2回戦、Monarch氏とKillaKobes氏による対戦だ。
「勝ってないのにガッツポーズ」の経緯
本大会における『BBCF』のウィナーズセミファイナルは、BO3形式、いわゆる2先と呼ばれる、先に2勝した方が勝者となるルールである。2人が使用するキャラクターはMonarch氏が大剣を持った少女エス、KillaKobes氏が忍者系キャラクターのシシガミ=バング。一進一退の攻防が続き、互いに1勝ずつした3試合目、勝った方がウィナーズファイナルへ進出できるという場面で珍事が起こる。
互いに1ラウンドずつ取得し、最後のラウンドとなったラウンド3が開始。攻防ののち、体力的に不利な状態となっていたKillaKobes氏が大きな隙を晒した。その隙を攻めてきたMonarch氏に対し、KillaKobes氏が切り返してオーバードライブを発動、攻守目まぐるしい白熱の展開に。危機から攻めに転じたKillaKobes氏が、今度はMonarch氏の隙にコンボを決め、コンボの締めとなる獅子神忍法・超奥義・「萬駆活殺大噴火」をMonarch氏のエスに打ち込むことに成功した。これにより、KillaKobes氏がMonarch氏を倒しきっての勝利が確定したかに思われた。ピンチからの逆転勝利を確信し喜んだKillaKobes氏は、立ち上がって観客に向かってガッツポーズを披露、さらには対戦相手のMonarch氏にフィストバンプさえ求めているようだ。
しかし、実はKillaKobes氏が立ち上がった時点で勝負はまだ決していなかった。どういうわけかコンボは完走されず、Monarch氏が生き残ることになった。そして、画面から目を離さなかったMonarch氏が「ガッツポーズの隙」を見せていたKillaKobes氏に攻撃を仕掛けて、さらに逆転の勝利を果たす結果となった。
とどめをキャンセルしちゃった
なぜKillaKobes氏のバングがエスを倒し切れなかったのか。これはKillaKobes氏が倒し切りのコンボのダメージ計算を間違えていたわけではなさそうだ。映像をよく見てみると、コンボの締めでKillaKobes氏がディストーションドライブ、獅子神忍法・超奥義・「萬駆活殺大噴火」を撃った直後、操作キャラに赤いリング状のエフェクトが発生している。これはラピッドキャンセルという、キャラクターの行動をキャンセルしてニュートラル状態に戻す『BLAZBLUE』シリーズお馴染みのシステムの発動を意味している。つまり、最後の一撃となるはずだった獅子神忍法・超奥義・「萬駆活殺大噴火」が、ラピッドキャンセルによって途中で中断されてしまったわけだ。
KillaKobes氏はこの悔しい敗北の後、自身のX(旧Twitter)アカウントにてその理由をポストした。どうやら、観客にポーズをきめようと勢いよくコントローラーを置いて立ち上がったときに、ラピッドキャンセルのボタンを押してしまったようだ。そんなとんでもないミスによる惜しすぎる敗北に、彼のSNSへは慰めの声が寄せられている。
「ガッツポーズで逆転負け」には先例も
なお、今回のKillaKobes氏のミスに関して、SNS上では「WOSHIGE」なる単語による言及が散見される。実は、格闘ゲーム大会で「試合が終わっていないのに、勝利を確信しガッツポーズを取ったことで負けた」というケースは、今回が初めてのことではない。格闘ゲーム大会「EVO2015」にて、メインタイトルのひとつである『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』でも同様の出来事が起こっている。
その出来事は、ミリア使いの強豪として知られていたヲシゲ氏と、ザトー=ONE使いの強豪として知られていた小川氏による試合で起こった。試合は2本先取のルールで、まずは小川氏が1ラウンドを取り、ヲシゲ氏が敗北するか、小川氏を下して1ラウンドを取り返し、勝敗を決する3ラウンド目に持ち込むかの展開となった。正念場となる2ラウンド目にてヲシゲ氏は怒涛の攻めを見せて、小川氏を下すこととなった。
そして最終局面となる3ラウンド目が始まった。しかしあろうことかヲシゲ氏は試合の続きがあることをすっかり忘れていたのか、自身が勝利したものと思い、立ち上がって観客へガッツポーズを披露していたのだ。一方、もう1ラウンドがあることを認識していた小川氏は、ガッツポーズの最中に慌てて対戦に戻ろうとするヲシゲ氏にフルコンボをお見舞いし、見事勝利を飾って逆にガッツポーズを見せつけた。この出来事は当時国内外のゲーマーから大いに注目を厚め、ヲシゲ氏は日本のみならず海外でも知られる存在となっている。そのため、今回の珍事にあたり「WOSHIGE」への言及がよく見られるのだろう。
この出来事は、国内の格闘ゲームコミュニティでは「ヲシゲ事件」と知られており、何度かテレビ番組でも取り上げられているほどだ。ヲシゲ氏は、現在カプコンでゲーム開発に携わっており、NHKのドキュメンタリー「100カメ」でカプコンが紹介された際、同氏の紹介でヲシゲ事件の映像が使用されていた。
なお、「Combo Breaker 2024」における『BBCF』トーナメントは一度負けても敗者復活戦のあるルールであり、KillaKobes氏はルーザーズラウンドへと落ちることになった。同氏はTOP8に残った強豪たちが待ち受ける中、ルーザーズラウンドを勝ち抜いて再びMonarch氏が待ち受けるグランドファイナルへの進出を果たす復活劇を見せるも、Monarch氏には及ばずに2位という結果となった。ただ、KillaKobes氏としても手応えを感じる対戦だったとのこと。「第2のヲシゲ事件」を引き起こしてしまった同氏の、次の場での活躍を期待したい。