厳しい評価を浴びたオープンワールド海戦ゲーム『スカル アンド ボーンズ』は、どう楽しめばいいのか?『どうぶつの森』的遊び方のススメ
幾度とない延期を経て、ついに2月16日に発売されたユービーアイソフトの新作『スカル アンド ボーンズ』。海賊となって大海原を駆け回り、思う存分略奪が楽しめるゲームだという何とも魅力的な宣伝が打たれているものの、レビュアーやユーザーの評価は大きく割れている状況だ。
大手レビュー集積サイトMetacriticで『スカル アンド ボーンズ』のPC版のレビューを見てみると、レビューサイトの平均スコアは64点で、ユーザースコアは3.1となり、かなり辛い評価になっている(2024年2月20日現在)。
私はそんな『スカル アンド ボーンズ』を遊んだのだが、こうした世間評価とは異なりそこそこ楽しめたクチである。プレイスタイルとしては、別のゲームの合間に起動しては、いくつかのクエストをこなしている。世界で注目を集め、そして批判された本作を、どんな風に楽しめばいいのか。“楽しめた側”として考えてみたい。
そもそも『スカル アンド ボーンズ』とはどんなゲームか
まずはゲームの概要を振り返ろう。『スカル アンド ボーンズ』は、フランスに拠点を置く開発・販売会社ユービーアイソフト(代表作は『アサシンクリード』や『レイマン』シリーズ)の最新作。プレイヤーはインド洋を渡り歩くならず者となり、略奪を繰り返して少しずつ悪名を高め、世界を震撼させる大海賊になるのが目的だ。
常時オンライン接続が必要なマルチプレイヤータイトルであり、マップには上限20名が接続されているが、必ずしも協力やPvPがメインというわけではなく、自分の好きなスタイルで遊ぶことが可能だ。
ゲームの作り自体は単純で、陸や海で略奪や護衛や収集といったミッションを受領し、おつかいをこなしたら報酬を貰うというオーソドックスなものだ。謎解きや仕掛けはまったくなく、低レベルのミッションであればまともなダメージを受けることすらないだろう。
報酬を得たら、装備品やコスメティックアイテムに変換し、船や衣服を飾り付け、また新しい航海に出ることになる。基本的にはゲーム全体を通じてこの繰り返しである。
『スカル アンド ボーンズ』の評価を見る
冒頭でも述べた通り、本作の評価はなかなか辛いものである。いくつかの具体的なレビューを引用させていただこう。
PC系のメディアPCGamesNは、10点中4点を付けており「この『スカル アンド ボーンズ』は夢の海賊アドベンチャーを約束してくれたが、まばらなストーリー、個性のなさ、イライラと退屈の間で揺れ動くゲームプレイのおかげで、大きく期待を裏切ってしまった」と評している。
Metacriticに掲載されたユーザーレビューもひとつ紹介しよう。こちらは10点中6点で、だいぶ辛口だ。「ゲームの出来はまあまあ。良いところもあれば悪いところもある。私は20時間でストーリーを終わらせましたが、大量にサイドミッションをこなしたからです。長所は海賊ゲーム、戦闘が楽しい、グラフィックが良かったというところで、短所はミッションがつまらない、世界が空っぽ、ストーリーがないというところですね。このゲームに70ドル払いますか? 25~30ドルなら買います」
ポジティブな評価も見ていこう。こちらはトルコのメディア/インフルエンサーMerlin’in Kazanıのレビューだ。100点中75点をあげている。「『スカル アンド ボーンズ』は、見事な景色と素晴らしいアートワークの海賊ゲームです。船の改良や壮大なバトルも含まれていますが、陸上ではそのようなことはなく、このゲームのミソは海戦です」
全体的に、皆が褒めている点はグラフィックやアートスタイルであり、貶している点はゲームやミッション部分の作業感と、ストーリーラインが薄味であるという点、そして70ドルというお値段だろうか。
どう受け取ったら面白く感じるのか?
私が本作に触れた上で言っておきたいのは、私は楽しめている立場ではあるが、これらのレビューには一定の納得感があるということだ。『スカル アンド ボーンズ』には『アサシンクリードⅣ ブラックフラッグ』で描かれたような海賊たちの義理と裏切りの物語や、史実と複雑に絡んだ世界観設定は見受けられない。海戦も『アサシンクリード』シリーズよりは進化しているが、そこまで奥深いものでもない。よって、これらの点については頑張って目を瞑らなければいけない。
では、結局どういうスタンスで本作をプレイすればいいのか。おすすめしたいのはタイトルにもある通り、本作は旅情を楽しむゲームであるという考え方だ。友達と雑談しながらのんびりと海を往く瞬間とか、その先の停泊地で湿地帯を見つけて写真を撮るとか、そういうライフシム的な遊びが一番ハマるのだ。例を挙げるとすれば『どうぶつの森』シリーズが近い。
コスメティックアイテムも非常に多彩で、スクリーンショットを撮ってくれと言わんばかりに力が入っている。海賊風の衣装の引き出しがとんでもなく豊富で、小舟しか持っていないようなゴロツキから、黒髭が裸足で逃げ出すような大悪党まで(海賊限定で)何にでもなれる。
船自体の飾り付けはさらにその何倍も凝っており、どの角度から撮ってもフォトジェニックな感じがする。もちろん、それらのコスメティックアイテムを手に入れるためには単調なクエストを遊ばなければいけないわけだが、まあ、そんなのはちょくちょくやればいいので、まずは今身に着けられる程度の飾りで世界を見て回ろう。
そして、ゲームプレイやストーリーといった問題点として挙げられているポイントについて、私がどう向き合ったかも一応明記しておこう。
ひとつには、友達と一緒に遊んでいたということが要因に挙げられる。これはほかのマルチプレイタイトルでも起きることなのだが、実在の友人と他愛もない会話をしている最中に、世界観を説明するテキストや、キャラクター同士のダイアログが表示されても、読み切れないか文意が頭に入ってこないことが多い。
よって、「○○を取ってこい」とか「XXを沈めてこい」といったレベルの文章しか流れてこない『スカル アンド ボーンズ』は、誰かと喋ってても大意が理解できるので、むしろちょうど良かったほどだ。
ほかには、本作を遊んでいる時に、メインクエストを進めたいという欲求があまり湧かなかった点もある。たとえば『ファイナルファンタジーXIV』のような、メインクエストのシナリオに運営が力を注いでいるゲームを考えてみよう。そうしたゲームは大抵のコンテンツがメインクエストの進行度に依拠しており、絶対にストーリーを進める必要が出てくる。しかし『スカル アンド ボーンズ』の場合は、チュートリアル後に投げ出されたあとは何をしても良かったので「絶対に倒さないといけない敵」に向き合う必要が実はそんなにないのだ。
「折角ゲームを買って遊ぶならメインクエストくらいは全部知っておきたい」という気持ちもよくわかる。しかし船員たちの舟歌を聴きながら遠くの島に行くだけで、その日のゲームを終えてもいいじゃないか。イベントなんて何ひとつ起こらないが、空の写真を撮って帰ってくるゲームも、たまには良い……。
さらに付け加えておく点として、私はRTX2060のグラフィックボードで本作のPC版を遊んでみたが、中画質くらいなら何の問題もなく動作し、冷却ファンも唸らなかった。筆者にとってはPCへの最適化やパフォーマンス設計は申し分なかったわけだ。こうしたグラフィックや最適化をもって、充分に美しい海を多くのユーザーに届けたいという意志を感じたので、その辺も評価すべきポイントだろう。
では最後に、本作はどう遊べば納得しやすいのか。これはだいぶ身も蓋もない話になってしまうのだが、これから本作をプレイするかどうか考えている人には、UBI+というサブスクリプションサービスを使ってみるのをオススメする。本編を普通に買うと7000円強するが、UBI+だと1800円程度でプレミアム版が遊べるので、PCを持っている人は是非検討して欲しい。1800円で遊ぶ分には、レビューで語られているいろいろな欠点も気にならないかもしれない。ゲームの評価とはえてして、価格によって変わりがちである。
『スカル アンド ボーンズ』は、筆者の視点からしても多くの点でユーザーの期待に応えられていない印象だ。特に私が残念だったのは『アサシンクリードⅣ ブラックフラッグ』や『アサシンクリード ヴァルハラ』にあった、海から上陸してスムーズに地上戦へと切り替わるシーンがなかったことだ。相手の船を瀕死にしてロープを引っ掛けても、カットシーンひとつで略奪が済んでしまうのが味気なかった。
しかし、それこそ『アサシンクリード』シリーズが今までずっと力を入れてきた観光という観点から捉えてみると、クエストの中身よりもアートワークやビジュアルにこそ重点が置かれているのも少しは納得できる。ユービーアイソフトが大金をかけて作ったウォーキング、いや、セーリング・シミュレーターとして本作に触れてみるのはいかがだろうか。