『CS:GO』のギャンブルサイトが賭博ライセンス取得へ、Steamアカウントの無断商用には一切言及せず
先日、Valve Corporation(以下、Valve)が発行した停止通知書を受けて、『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、CS:GO)のギャンブルサイト「CS:GO Lounge」は、合法的なサービスを提供するための賭博ライセンスを取得すると発表した。それに伴い、オンライン賭博が法律で禁じられている国や地域からのアクセスを制限するとのこと。しかし、Valveが問題を指摘したのは、Steamアカウントの無断商用が利用規約に違反している点であり、ギャンブル全般に関する法律やライセンスの有無には一切言及していない。
問題は単なるライセンスの有無ではない
『CS:GO』のギャンブルサイトをめぐっては、以前から未成年者に悪影響を及ぼしていることが社会問題に発展していた。そんな折、自身のチャンネルでギャンブルサイトを大々的にプロモーションした大物YouTuberが、実は同サイトの運営元を立ち上げた張本人だったことが発覚。一連のスキャンダルを機に、『CS:GO』を取り巻く賭博ビジネスの実態が大きく取り沙汰されることとなる。これを受けてValveは、Steamのアカウント認証を組み込んだギャンブルの運用が利用規約に違反するとの見解を示した上で、著名な賭博サイト23件に対して停止通知書を発行していた。
「CS:GO Lounge」は公式声明の中で、同サービスの本来の目的は創業以来、e-Sportsコミュニティにおけるエンターテイメントの提供であり、リアルマネーを使った賭博を意図したことはないと釈明。ゲーム内アイテムには金銭的な価値はないという認識を示しつつも、混乱を避けるために合法的な賭博ライセンスの取得に踏み切ったと述べている。「仮想アイテムをめぐる一連の騒動に関して、Valveから公式に通知書を受け取った後、同社から続報や問い合わせは一切ないままです。コミュニティとして、エンターテイメントとして、我々は今後のサービス方針を決定しなければなりません。状況は極めて複雑です。我々は運要素のゲームを提供しておらず、リアルマネーおよび同等の取引を提供しているわけでもありません。これら事実に関わらず、混乱を招かないためにも、ほとんどの国で合法的に運営するためのライセンスを取得し、あたかもリアルマネーを使ったようなe-Sports賭博がコミュニティに受け入れられる状況を作ることを決意しました」。
その上で、e-Sportsにおけるオンライン賭博が法律で禁止されている国や地域のユーザーを対象に、8月1日付けで賭け機能へのアクセスを制限すると宣言した。制限地域には、アメリカ・イギリス・フランス・スペイン・ベルギーをはじめ、多くの欧米諸国が含まれており、該当ユーザーはこれまでに勝ち取った景品やアカウントに預けているアイテムを引き出すことしかできないとのこと。また、追加登録と確認プロセスに同意するよう利用規約を更新している。なお、同じく「CS:GO Lounge」の運営元が所有する「Dota2 Lounge」にも、同様の声明が出されている。
特筆すべきは、Valveが停止通知書の中で指摘したSteamアカウントの無断商用については、一切触れられていない点だ。ライセンス取得の決定は、未成年者への悪影響が指摘されていた社会問題への回答に過ぎない。事実、「CS:GO Lounge」は過去に、ポーランドのプロチームとスポンサー契約まで結んでおり、e-Sportsシーンにおいて絶大な影響力を誇るといえる。しかし、ライセンスによる足場固めだけなら、大物YouTuberの自演騒動が注目される以前から十分に見直せたのではないだろうか。今回、Valveが名指しでサービスの停止を訴えたのは、あくまでもギャンブルサイトにおけるSteamアカウントの無断商用が同社の利用規約に違反しているからであり、正式なライセンスが付与されているかどうかは問題ではない。つまり、Valveの是正勧告に対する一切の回答になっていないのだ。
Valveは停止通知書の中で、「利用規約により、Steamおよびそのサービスは、個人または非営利目的に限りライセンスが付与されています。貴社におけるSteamアカウントの商業利用は認可されておらず、利用規約に抵触しています」と明記しており、10日以内の是正を勧告していた。応じられない場合は、アカウントの永久停止処分を含めた、あらゆる手段をもって追求する構えであることから、「CS:GO Lounge」が現状を維持したまま何事もなかったかのように運営を続行するのは難しいだろう。事実、複数のギャンブルサイトがすでに停止勧告を受け入れ、サービスの停止を告知している。余談になるが、今回の声明発表後、「CS:GO Lounge」の公式Facebookページの管理人が、規約違反を理由にSteamアカウントを凍結されたことを、自身のページで示唆している。とても穏やかな状況とは思えない。