『Evolve』PC版が無料化されることに、DLC展開への大批判で激減したプレイヤーの呼び戻しを図る狙い
Turtle Rock Studios(以下、Turtle Rock)は6日(レイクフォレスト)、対戦型FPS『Evolve』をPC版にて無料化する方針を明らかにした。ダウンロードコンテンツ展開やゲームバランスへの不評から、発売後まもなく激減していたプレイヤー人口の回復を図る狙いで、全体的なゲームデザインの見直しと共に、7日からベータ版として無料で配信される。発表当時は、斬新なコンセプトが世界中のメディアから絶賛され、各国のゲームショーで数多のアワードを総なめにしていた本作。高まるファンの期待とは裏腹に、ローンチ後の評価は予想だにしないものだった。今回の発表に際して、開発元の代表が公式フォーラムにて当時を振り返り、無料化を決断するにいたった想いを語っている。
コンテンツの価値はユーザーあってこそ
『Evolve』は、2015年2月に2K GamesからMicrosoft Windows/PlayStation 4/Xbox One向けに発売されたファーストパーソン・シューティングゲーム。4人のハンターと1体の巨大モンスターに分かれて対戦するゲームデザインが特徴で、『Left 4 Dead』シリーズを手がけたTurtle Rockの新作ということもあり、発表当時から大いに脚光を浴びた。特に、タイトルが意味するとおり、生物の進化をテーマにした斬新なコンセプトや独特の世界観が高く評価され、2014年の「E3」と「Gamescom」の両方で「Best of Show」を獲得した実績を誇る。受賞とノミネートを合わせると65件以上のアワードに輝いたとされ、ローンチへ高まる期待で時代の寵児となったタイトルといえる。しかし、発売直前に明らかになった有料ダウンロードコンテンツのビジネスモデルに、『Left 4 Dead』のようなサービス展開を期待していたファンからは批判が殺到。ローンチ後も、4対1という非対称デザインならではのゲームバランスに不満が集まり、まもなくしてプレイヤー人口は急激に減少していった。チーム対戦がメインのゲームにとっては死活問題である。
Turtle Rockの共同設立者の一人、Chris Ashton氏は、PC版の無料化にいたった経緯について、次のように説明している。「人々がゲームショーやカンファレンスでEvolveを初めてプレイし始めた時、それは魔法のようだった。そう、我々のタイトルはトリプルA級ゲームの盛り上がりに包まれていた。そこにギラギラ光る展示品や巨大なゴライアスの像があって、トリプルA級タイトルが人々を興奮させるための、全ての要素が揃っていた。クールだった。実にクールだった。だけど、そんなものよりも遥かにクールだったのは、Evolveを初めてプレイする人たちを見ること。それだけが我々の生きる理由だった。私たちが長い年月をかけて開発したゲームを、ある日突然、コントローラーを手に体験する人々。プレイされる度に、正真正銘の興奮があった。本当の歓喜だ。これまで誰も体験したことがないようなものであり、それを見届けることは、かつてないほどにハイな気分にさせてくれた」
「Evolveがローンチされた時、世間の評価は我々が期待していたものではなかった。もちろん、好評のレビューもあったが、悪評もあった。そうさ、興奮はあったが期待はずれだったのさ。プレイヤーにとって、そして私たちにとってもね。DLCのクソみたいな嵐は全力で人々の熱意を吹き飛ばしてしまった。魔法のような初体験の原点から、私たちをどんどん遠くへ引きずり回すように。あの頃の魔法を取り戻したい。いや、取り戻してみせる。この1年をとおして、Evolveに大幅な変更や改善、そして追加を施してきた。まだまだこんなものじゃない。端的に言えば、本作を元気全開にオーバーホールしているということだ。(中略)つまるところ、意見に耳を傾けた上で、多くの人々が最初から提案していた方向性に、Evolveの舵を切ることにした。EvolveをPC版で無料化する」
今後の方針としては、まず無料でベータ版をリリースすることで、新しいサーバーへ一気に負荷をかけたいとのこと。その上で、不具合が生じる部分を徐々に調整しながら、数週間から数か月で改善点をはっきりさせていく。あえてベータ版に戻す理由は、バグの修正とゲームの安定化を図る上で、柔軟性と時間を確保するためであると説明している。また、すでに『Evolve』やシーズンパスを購入したユーザーに関しては、“設立者”のステータスが与えられるとのこと。特典の詳細は明らかになっていないが、少なくとも所持している全てのコンテンツが新バージョンに移行されるようだ。この点について、ずっと信じてサポートしてくれたファンを忘れることはないとして、“ギフト・リワード・スペシャルアクセス”をもって恩に報いたいと、Ashton氏は語っている。
なお、ゲーム内容の大幅変更に向けた具体例として、トラッパーやメディックに経験者がいなくてもバランスが取れるようにハンタークラスを調整することに加えて、マップやユーザーインターフェースの改善、ロード時間の短縮と全体的なパフォーマンスの向上、安定性の向上とバグ修正の徹底、プログレッションとチュートリアルの完全な作り直し、カスタマイズ可能なオプションの追加が挙げられている。ちなみに、先日まで実施されていたSteamサマーセールでは、対象商品から『Evolve』が除外されていた。よもや無料化に向けての伏線だったとは、誰も予想していなかっただろう。F2Pタイトルとして再スタートすることで、果たしてローンチ前の賑わいを取り戻せるのか。新生『Evolve』の更なる“進化”に、これからも注目していきたい。