Steam大型セール、フラッシュ・デイリー廃止が生んだ寂しさとValveが収めた成功
Steamサマーセールが6月24日から開始された。ビッグタイトルからスモールタイトルまで大幅に値引きが実施され、ストアのトップページにはディスカウントタグの付いたゲームが並び、半ばお祭り騒ぎ状態だ。しかし、どこか寂しい気持ちを抱くユーザーも少なくないのではないか。少なくとも筆者はそうだ。待望のセールに胸を躍らせる一方で、デイリーセールやフラッシュセール、コミュニティチョイスのないビッグセールにはまだ慣れていないのが正直なところだ。
かつてSteamのビッグセール(主にサマーセールとウィンターセール)にはデイリーセールとフラッシュセール、そしてコミュニティチョイスが存在していた。デイリーセールはその名のとおり日替わりのセール。フラッシュセールは8時間のインターバルで変わる短期間セール。そしてユーザーが投票(もしくはミニゲーム)をおこないセールされるタイトルを決めるコミュニティチョイスだ。
どのセールにも言えることは、時間の経過にともないセール品が変化するということだった。デイリーセールとフラッシュセールが更新される夜中2時(サマータイム時には3時)まで粘りながら起き続け、翌日は目をこすらせたという記憶のある方も多いだろう。毎日のチェックを欠かさないのはもちろん、1日に何度もストアに足を運びたくなるのが従来のセールだった。しかし御存知のとおり、昨年夏からコミュニティチョイスはなくなり、オータムセールからデイリーセールとフラッシュセールが廃止された。これにより、セール期間中であれば、ディスカウントタイトルはいつ買っても価格は同じという仕様となった。
この仕様変更には海外でも多くのユーザーが嘆き悲しんだ。しかし、嘆き悲しんだのはあくまでユーザーだった。なぜならば、このセールの体系変更は大きな富を生み出していたからだ。方針転換の成功を証明する資料がValveから提示されていたというのも興味深い。
Valveのスタッフが、関係者が集まる特定のコミュニティで共有しようとしていた資料を誤ってSteamVRページに投稿してしまったのがきっかけだった。このミスを見つけたユーザーはすぐさま内容をコピーし、Steamdbのフォーラムに貼り付けた。資料の中でValveは2014年と2015年のウィンターセールを比較し、2015年はユーザーのウィッシュリスト追加が前年の約3倍だったことに言及、収益も45%増加したことを報告している。この結果は2015年から導入されたディスカバリーキューの影響も強く、そういった点を考慮しなければいけないが、方向転換をおこなった2015年冬に大成功を収めているのは興味深い点ではあるだろう。
また『Defender’s Quest』を手がけたLars Doucet氏もまたデイリーセール廃止による成功を裏付ける資料を提示している。Doucet氏は、『Defender’s Quest』は発売されて4年が経過したタイトルであり、2014年のウィンターセールではユーザーはストアのタイトルページに訪れなかったものの、2015年ではページビューと共に売上が伸びたことを報告しており、Valveの施策は正しかったと支持している。
このように、フラッシュセールやデイリーセールが廃止されたことにより、ユーザーはトップページの特定のタイトルだけをチェックするのではなく、多くのタイトルを自ら検索し購入するようになった。そういった傾向がValveやゲームメーカーに利益をもたらしているというわけだ。
前出のリークされた資料によればValveは現在のセールの体系に満足しており、このやり方をこれからも続けていくことを示唆している。メーカーだけでなくユーザーもまた「最安値更新のフラッシュセールを逃してしまったタイトルは買うに買えない」といった事態を回避できるなど、ゲームの購入機会の損失に翻弄されることもない。方向転換によりセールの値引き率が悪くなったというわけでもなく、欲しかったゲームが安く手に入る機会という点で大型セールは機能している。ゆえに大型セールは依然としてユーザーのビッグイベントであることには間違いない。それでも筆者は、あの深夜まで起き、セールの更新を待っていた日々が時折恋しく感じてしまうのだ。