カプコンのバイオPR画像が中国の人肉輸出を疑う騒動に発展、噂の流布に政府機関が捜査へ乗り出す展開に
2012年にカプコンが『バイオハザード』シリーズのプロモーション用に制作した偽の人肉画像が、中国がアフリカのスーパーマーケットへ人肉の缶詰を輸出していると噂するSNSの投稿に使用され、メディアや政府を巻き込む大きな騒動に発展している。問題の書き込みはすでに削除されているが、一部のタブロイド紙が事実として報じてしまったためにあらぬ疑惑を招いたようだ。事態を重く受け止めた中国政府は公式声明を発表。国営メディアを通じて遺憾の意を表明するとともに、SNSの投稿者や噂を流布したメディアを痛烈に批判した。同時に、取引先とされた友好国ザンビアも情報元の解明に乗り出している。騒動の背景には、近年同国で悪化する対中感情が、思いもよらない形で煽られたことも考えられる。
人肉コンビーフ疑惑と悪化する対中感情
事の発端となったのは先日、FacebookにBarbara Akosua Aboagyeという名のユーザーが投稿した人肉を思わせる画像。中国がアフリカのスーパーマーケットに向けて、人肉を使用したコンビーフの缶詰を輸出していると批難する内容だった。投稿は2万6000回以上シェアされ、英タブロイド紙Independentが取り上げたことで一気に世間へ知れわたった。地元メディアMsanzi LiveやDaily Postにいたっては、中国の人口過剰により埋葬用の土地が不足している問題を解消するために、人間の肉を輸出しているのではないかという大胆な推測に走った。しかし、実はこの画像、4年前にカプコンがPR目的で用意した偽の人肉を写したものである。
カプコンは2012年9月、英国・東ロンドンにあるスミスフィールド肉市場にて、『バイオハザード』をテーマにしたアート展「Wesker & Son Resident Evil Human Butchery」を開催した。展示品は全て精肉を加工して人体をかたどったもので、その場で商品として販売された。また、売上金は慈善団体「Limbless Association」(手足を失った人々を支援する英国の組織)へ全額寄付されている。その際に業界メディアEurogamerが掲載したイベント写真が、中国の疑惑を流布するSNSへの投稿に使われたというわけだ。偽の人肉商品があまりに精巧に作られていたことから、写真の出処を知らない一部メディアが事実確認を怠ってしまったようだ。なお、発端となったFacebookの投稿はすでに削除されている。
これに対し、事態を重く見た駐ザンビア中国大使は現地時間17日、国営メディアXinhuaを通じて声明を発表。「今日、中国人が人肉を使用したコンビーフをアフリカに輸出販売しているとして、地元タブロイド紙が噂を公に流布している。明らかに悪意に満ちた中傷行為であり、断固として容認できない。このような行為に対して最大限の憤りと非難の意を表明する」とコメントした。また、中国大使館の特命全権公使は、タブロイド紙と噂の発信元についてザンビア政府の関係機関に捜査を要請。疑惑の解消に乗り出している。本件に関して、ザンビア国防相代理Christopher Mulenga氏は、次のようにコメントしている。「ザンビア政府は両国の友好関係を考慮して本件に遺憾の意を示します。政府関係機関が調査に着手するとともに、包括的な声明を発表いたします」。
ザンビア共和国は、1964年にイギリスから独立して以降、中国とは友好関係にある。独立後に国際連合に加盟したザンビアは、当時アパルトヘイト政策を理由に国連から経済制裁を受けていた南アフリカとの経済関係を断絶。翌年、独立を宣言したローデシアの封じ込めにも加わったことで、両国に大きく経済依存していたザンビアは大打撃を受けた。世界的な銅の産地として知られるカッパーベルトが産業の中枢を担っていたが、ローデシア鉄道が使用できなくなったことで、内陸国であるザンビアの銅輸出は完全に停止した。その際、ローデシアを経由しない銅輸出を実現するために、タンザニアと並んでタンザン鉄道の建設を援助したのが中国である。しかし、近年、鉱山を買い取った中国人による弾圧や、賃金の未払いを訴えてデモを起こした労働者たちを中国人監督が射殺するなど、ザンビア国民の対中感情は徐々に悪化しているとも言われている。今回の人肉コンビーフ疑惑もまた、両国間に生じる摩擦に端を発しているのかもしれない。