『ケロブラスター』 コントローラーの違い・ゲームの違い

iOS/PC『ケロブラスター』に関するインプレッションはすでに弊誌空山のものを掲載しています。私より先にプレイしていた彼の主張はおおむね正しく、とくに強く反駁するところはありません。

ただ一点、プレイし終えた今だからこそ、ある違和感を感じます。それは、本作が本当に「ゆりかご」だったのか? 私の答はそう、ノーです。

 


『ケロブラスター』のプラットフォーム

 

製作者が持つ真の意図はわかりません。ですが、すくなくとも本作は発表当初はiOS向けに開発されており、個人的にテストバージョンをプレイさせていただいたときもiPhone上で動作していました。

プレイ環境は空山がPC版、私はiOS版(iPad)。おそらくゲーム内容自体には差はありません。となると、この違いがゲームへの感想に影響をおよぼしているとみるのは道理です。

空山がいうところの「アクションゲームそのものに対する手応え」の欠如は、『ケロブラスター』をキーボードあるいはゲームパッドでプレイすることで発生している公算が大きいといわざるをえません。

iOS/Android向けのアクションゲームはここのところ多くリリースされており、それにともないバーチャルコントローラーのあり方も試行錯誤されてきました。しかし理想も結論も打ち出されていません。ことは至極単純で、物理的感触のフィードバックが一般的なゲームパッドとくらべて極端に小さいという"壁"を簡単には乗り越えられないからです。

iOS『ケロブラスター』はそれへの答を追究しており、その結果が左右移動・オートショット・ジャンプという極限まで簡略化された入力系統であると考えられます。スマートフォン・タブレットでのプレイにあたり限界まで"壁"を削りきった結果ではないでしょうか。

 

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バーチャルパッドならではのままならなさ、そして手応え

 

多くのゲーマーはコントローラーを握りしめてから10年以上が経っています。慣れ親しんだ操作体系は、ゲームキャラクターたちをまさしく自分の手足のごとく動かす入力デバイスにほかなりません。

ではバーチャルコントローラーではどうか。たとえば『ロックマン2』のタイムアタックを同じようにできるか。おそらくほぼすべてのゲーマーにとって「否」であり、それは現代のゲーマーが歩んできた道程、あるいは"教育"の結果です。バーチャルとリアルの優劣の話ではありません。たんに慣れの問題があるということです。

本作は、ままならなさ・プレイヤーの練度の低さを織りこんでいるのではないでしょうか。それでいて、PCプラットフォームで遊ぶ層にも"遊ばせる"。両者を天秤にかけるぎりぎりのせめぎあいの結果が『ケロブラスター』の調整であり、しかるにこれを「ゆりかご」と表現するのはいささか不適切でないかと考えます。

しかし、いずれにせよゲームパッド環境でプレイすれば難易度が相対的に低下するであろうこともまた事実です。ゲーマーはそれをふまえ、どちらを遊ぶか選択する権利があります(ハードウェアさえあれば)。優しさに満ちあふれ落ち着いたカエル、わずかな拘束感で挑戦心をあおってくるカエル、どちらも『ケロブラスター』に違いありません。

 

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補足: 味のあるテキスト

 

もう一点、本作について確実に評価すべき点があります。それはテキスト、キャラクターの会話です。

いうまでもなく『ケロブラスター』はアクションゲームであり、キャラクター同士のかけあいは二次的要素です。しかし、そこにも魂がこめられています。物語上のネタバレになってしまうため詳述は避けますが、とにかく一文一文が重いのです。

たった一行のセリフ、ウエイト、セリフ。本当に細かいところまでウイットにとみ、気がきいています。けっして文量自体は多くありません。しかしそれゆえに特筆に値します。インターミッションが楽しみになるゲームというのは存外少ないものです。

 

 

弊誌空山が「プロの仕事」と評した本作からは、アクションだけではなく、もちろんピーキーなグラフィックだけでもなく、総合的な密度を高めるべく腐心した形跡をありありと見受けることができます。「神は細部に宿る」を地でゆくメンタリティが『ケロブラスター』には詰まっています。

 

とあるシーンで流れる一幕。 あまりの唐突さと自然さに思わず笑ってしまいます。
とあるシーンで流れる一幕。

あまりの唐突さと自然さに思わず笑ってしまいます。

 

Nobuki Yasuda
Nobuki Yasuda
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