Natsumeが『Harvest Moon』新作を発表するも批判殺到。それは本当に『牧場物語』たりえるのか
ゲーム会社Natsumeは12月15日、『Harvest Moon: The Winds of Anthos』を発表した。2023年に発売するという。牧場ゲーム『Harvest Moon』シリーズ新作となる。しかしTwitterでの反応の多くは、否定的なものである。背景としては、『Harvest Moon』シリーズの歴史と近年の体たらくに関連しているだろう。
『Harvest Moon』シリーズは、Natsumeが展開する牧場ゲームだ。プレイヤーは牧場にて農作物を育てたり酪農をしたり、あるいは住人と交流していく。こうしたコンセプトや「ハーベストムーン」という言葉を聞くと『牧場物語』シリーズを彷彿させるだろう。本作は、“かつて『牧場物語』だった”シリーズなのである。
というのも、『Harvest Moon』シリーズは、もともと『牧場物語』の海外名だった。マーベラスが開発および国内販売を担当していたが、北米での販売はNatsumeが担っていた。Natsumeは本流の『牧場物語』の北米展開を担当していたのだ。そして2014年頃になりマーベラスが、子会社Marvelous USAからXSEED Gamesとして北米展開を自社で進めることになった。
しかしながら、NatsumeからXSEED Gamesへの『Harvest Moon』の引き渡しはうまくいかなかったようだ。Natsumeは『Harvest Moon』のIPをマーベラスおよびXSEED Gamesに渡さず保持したからだ。結果として本家『牧場物語』の海外タイトル名は『Story of Seasons』へと変更せざるを得なくなった。それゆえに、今海外では、本家『牧場物語』の『Story of Seasons』シリーズとNatsumeによるオリジナルの『Harvest Moon』シリーズの両方が存在する奇妙な状況となっている。
このような歴史もあってか、“Harvest Moonを渡さなかった”Natsumeに対するユーザーからの風当たりは強い。さらにこの風当たりを強くしているのが、Natsumeによる『Harvest Moon』シリーズの作品そのものの品質である。マーベラスと離別後初めてリリースしたニンテンドー3DS向け『Harvest Moon: The Lost Valley』は、レビュー集積型サイトMetacriticでのメタスコアが46点。同じくニンテンドー3DS向け『Harvest Moon: Skytree Village』はメタスコア59点。マルチプラットフォーム展開をした『Harvest Moon: Light of Hope』(Nintendo Switch版)のメタスコアは62点。最新作となる『Harvest Moon: One World』(Nintendo Switch版)のメタスコアは54点だ。
それぞれの作品は、ユーザースコアも低いのが特徴。リリースペースも早く、薄く多く作られているようにも見える。また『Harvest Moon』IPを使ったスピンオフパズルゲームなども作られているが、それらも質は高くない。一方で『牧場物語』海外版である『Story of Seasons』シリーズは、極めて高く評価されているわけではないものの、メタスコアは70点台を推移。本家の評価は安定しており、一定以上の品質となっている。そうしたことを踏まえると、Natsumeが『牧場物語』のファンベースを利用して、カジュアル層向けに新作を乱造している状態になりつつあるのだ。
こうした経緯もあり、『Harvest Moon』新作発表には批判が殺到している。批判の内容は『Story of Seasons』にその名前を譲れというものばかり。たとえばTwitterユーザーのTy ★氏は「(Natsume)はオリジナルIPを持っているが、クオリティはいつも粗悪コピーみたいなもの。Story of Seasonsを遊んで」と辛辣にコメント。こうしたリプライや引用RTがずらっと並んでいる。IPを本家に引き渡さなかったことと、品質の低い新作しか発売してこなかったこと。両方の面で厳しく批判されているのだろう。
シリーズを続けているということは、一定の売上の見込みはあるのだろう。ネットを見ないカジュアル層などにリーチしているかもしれない。しかしながら、前述した誕生背景から常に逆風に晒される『Harvest Moon』。そうした批判と向き合うためには、まずは新作ゲームの品質を上げるところから始まりそうだ。
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