Steamの「開発元ページに正しく飛べない」問題指摘が注目集める。開発元について知りたいのに販売元に飛ぶ、その仕組み
Steamストアページの「開発元へのリンク」に問題があるとして、あるインディーパブリッシャーが対応を呼びかけている。複数のストアページにおいて、「開発元・販売元」へのリンクがいずれも販売元へのページへ遷移するように設定されているというのだ。開発元の作品が適切に表示されず、開発元が不利益を被るとして、ほかの販売元およびValveに対して対応を呼びかけた。Game Developerなどが報じている。
Steamでは、各作品のストアページにゲームの販売元(パブリッシャー)と、開発元(デベロッパー)がそれぞれ表記される。いずれもストアページの上部に表示され、それぞれのクリエイターページや作品一覧へとリンクする仕組みだ。ユーザーにとっては同じ開発元・販売元のゲームを探すのに便利な機能であり、そして開発元・販売元にとっては、新作や過去作の売上につながる重要な機能でもある。
インディーパブリッシャーの2 Left Thumbsは12月8日、このSteamストアページのリンクが抱える問題をTwitter上で指摘した。一部のSteamストアページにおいて、「開発元へのリンクをクリックすると、開発元ではなく販売元のページに遷移する」というのだ。例として、同日にリリースされた『Chained Echoes』のページ遷移の様子を紹介している。投稿された動画を見る限り、『Chained Echoes』のストアページから開発元「Matthias Linda」のリンクをクリックすると、販売元であるDeck13のページが表示されるようだ(現在は修正済み)。
実際に、開発元をクリックすると販売元のページが表示されるケースは複数存在する。記事執筆時点では、『Stray』『Neon White』などで知られるAnnapurna Interactiveや、『Dome Keeper』などをリリースしたRaw Furyなど、いくつかの販売元が手がける作品のストアページで同様の事象が確認できた。いずれの作品も開発元は独立したスタジオや開発元であり、各販売元の傘下ではない。本来なら開発元リンクをクリックした先には、その開発元が手がけた作品が並ぶのが普通だ。しかし、一部の販売元の作品のページでは、2 Left Thumbsが指摘した「開発元リンクが販売元ページに遷移する」現象が実際に発生しているのだ。
そももとしては、Steamストアページの設定は、販売管理を担当する側であるパブリッシャーにコントロール権がある場合がほとんど。つまり、“パブリッシャー側が意図的に開発元のページにアクセスできないようにしているのではないか”という疑念も生まれ得るわけだ。開発元からしても、自身の開発した作品が表示されにくくなる事態は受け入れがたいだろう。2 Left Thumbsは、多くの販売元が開発元リンクを適切に設定していないと指摘。各販売元には、自社がリリースする作品の開発元リンクを適切に設定するように呼びかけた。また「開発元リンクに販売元を設定できる」仕様についても、Valve社に対して改善を求めている。
こうした販売元への呼びかけに対し、Deck13のDennis氏が反応。動画で「開発元リンクを設定していない」と指摘された販売元・Deck13において、テクニカルプロデューサーを務める人物だ。Dennis氏はいち早くDeck13がリリースしたタイトルの開発元リンクを修正。さらに販売元や開発元向けに、「適切に開発元リンクを作成する手順」を記事として公開した。
この記事によると、開発元リンクの遷移先はデフォルトで販売元ページに設定されているとのこと。また開発元ページを適切にリンクするには「開発元のクリエイターページの作成」「Steamグループの作成」など、開発元・販売元の双方が複数の手順を踏む必要があるという。開発元リンクにプルダウンから販売元を指定するのに比べると、はるかに煩雑な作業が必要だったのだ。Dennis氏はこの設定手順を「非常に曖昧で、隠されているも同然」と指摘。あわせて販売元の立場からは、一部のDeck13作品の開発元リンクが不適切な状態で放置されていたことについて「(販売元の)経験不足によるものであり、悪意のある販売戦略ではない」と説明した。この問題を指摘した2 Left Thumbsには、感謝の意を表している。
Steamストアページの開発元リンクが、現状の仕様になっている理由は不明だ。開発元リンクを放置している販売元側も、故意に仕様を悪用しているわけではなく、Deck13同様に設定が必要なことを見落としている可能性もあるだろう。しかし現状において、一部の開発元が不利益を被っていることは確かである。2 Left Thumbsらはそうした開発元に不利なストアページの仕様と、それが見過ごされている事態に警鐘を鳴らしたかたちだ。開発元と開発元をもっと知りたいユーザーのためにも、こうした仕様が改善されることを願いたい。