オープンワールド『Outcast 2 – A New Beginning』は、これまでのオープンワールドとは違う、RPGではない広大世界を目指す。THQ Nordic開発者インタビュー

東京ゲームショウ2022のTHQ Nordicの出展ブースでは、『Outcast 2 - A New Beginning』が出展されていた。今回はプロデューサーのアンドレアス・シュミーデッカー氏から本作のプレゼンを受け、いくつか質問をぶつける機会もいただけた。

昨月9月15日から18日にかけて東京ゲームショウ2022が開催された。多くの古いIPを取得し続編やリメイクを手がけ、「ネクロマンサー」を自称するパブリッシャーTHQ Nordicの出展ブースでは、『Outcast 2 – A New Beginning(以下、Outcast2)』が多くの注目を集めていた。3Dオープンワールドアクションアドベンチャーの先駆けとされる作品である『Outcast』の20年ぶりの続編となる本作は、ヨーロッパを中心としたファンから大きく期待されている。初代のデベロッパーたちもチームに迎え入れて開発中という本作だが、今回はプロデューサーのアンドレアス・シュミーデッカー氏から本作のプレゼンを受け、いくつか質問をぶつける機会もいただけた。本稿では以下にインタビューの全文をお届けする。


世界との繋がりを感じられるオープンワールドゲーム

――まずは自己紹介をお願いします。

Schmiedecker氏:
THQ Nordicのアソシエイト・プロデューサー、Andreas Schmiedeckerです。現在『Alone in the Dark』と『Outcast2』の2つのプロジェクトに参加していて、『Outcast2』ではプロデューサーを担当しています。

――まずは『Outcast2』というゲームについて、教えていただけますか?

Schmiedecker氏:
『Outcast2』は1999年に発売されたゲーム『Outcast』の正式な続編となります。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、『Outcast』は「元祖オープンワールドアクションアドベンチャー」とされるゲームで、ヨーロッパを中心に根強い人気がある名作です。THQ Nordicは古いIPを取得してリメイクや続編を手掛けることで知られている会社ですが、『Outcast2』はその中でも特に注目度が高いプロジェクトとなります。20年前の前作の開発者たちも、このプロジェクトに参加しています。

『Outcast2』ではプレイヤーは惑星アデルファ(Adelpha)に転送された主人公、カッター・スレイドを操作します。アデルファは豊かな自然にあふれる美しい惑星で、原住民のタラン族が文明を築き社会を営んでいます。『Outcast2』は『Outcast』の20年ぶりの続編ですが、ゲーム内でも『Outcast』から20年後の世界という設定になっています。

惑星アデルファはどこか地球に似た、自然豊かな明るい惑星です。『Outcast2』ではこの美しい世界を存分に探索してもらうことを目的にしています。同じようなジャンルの作品ですとどちらかというと暗い雰囲気の、ダークファンタジーやハードSF的なゲームが多いですね。『Outcast2』はそれとは違った、明るく開放的な雰囲気のオープンワールドであることが特徴です。


惑星のあちこちには先住民であるタラン族の生活拠点や神殿、文明の痕跡などがあります。タラン族の生活のベースには信仰があります。彼らの信仰には炎や水といった属性に対応する4つのエッセンスがあり、生まれつき割り振られたエッセンスに応じた生活を営んでいます。彼らは「惑星アデルファ」という巨大なエコシステムの一部であり、ゲームを進めるにつれてその関わりを解き明かしていくことができます。そしてもちろんタラン族以外にもダチョウのような鳥や羊のような動物、巨大なワームなど多種多様な生物がアデルファには生息しています。


『Outcast2』のオープンワールドゲームとしての大きなコンセプトは「世界の繋がり」です。タラン族や各種動植物、アデルファの環境、そして主人公がまるごとひとつのエコシステムとして繋がっている。それを体感できるようなゲームを作りました。オープンワールドゲームではマップの各所にクエストが存在して、それぞれのクエスト群で基本的に独立した物 語と目標があり、それを順番に消化していくようなものが主流ですよね。我々はそれとは少し異なるアプローチを取りたかった。『Outcast2』ではプレイヤーの取る行動は全て惑星アデルファという環境を通じて繋がっているのです。

どういうことなのか、ひとつ例をあげます。タラン族の村人から請け負える課題のひとつに、動物の卵を孵化させるというものがあります。この孵化してきた動物は飛ぶことができて、大きく育てれば移動手段として利用できます。マップを開くと、この動物を育てるのに必要なものが表示されています。飼育にもいろいろな要素がありますが、ひとまず一番大事なのは食べ物ですよね。この食べ物を確保するにもいろいろな手段が用意されていて、植物を育てて食べさせることも出来るのですが、これを継続的に用意するにはまた別の動物を利用して水を持ってくる必要があります。育てきった動物は移動手段に使えて、それがまた他のクエストや目的への導線となります。ほかにもこの動物を戦闘に呼ぶこともできて、上空からの爆撃のような攻撃をしてくれます。この攻撃の攻撃力や密度は、これまでこの動物をどうやって育ててきたか、どれくらいうまく育てれたかに依存しています。このようにしてひとつひとつのクエストや目的が、あらゆるゲームプレイに、そして世界全体へと繋がっていくのです。「やることリスト」を順番に消化していくのではなく、自分が惑星アデルファという大きなひとつのエコシステムの一部であるとプレイヤーが実感できるように作っています。なのでメインクエストやサイドクエストといったような概念も特にありません。

作中に明確に存在する敵として、敵対的なロボット文明があります。アデルファの環境とタラン族の文明の世界観に対して浮いた印象があるこのロボット文明ですが、彼らがどうして存在して、その目的が何なのかはシナリオの大事なコンセプトのひとつであり、ゲームを進めていくにつれて判明します。アデルファには多くのタラン族の生活拠点や村が存在しますが、ロボットたちは彼らの繋がりを断ってしまっています。プレイヤーの目的のひとつは、この繋がりを取り戻していき、アデルファのエコシステムを再構築していくことです。


せっかくなので戦闘についてもお話しましょう。主人公には戦闘用の特殊能力がいくつも用意されています。重力を操って敵の行動を制限するものであったり、大量の虫を相手にけしかけるものであったり、上空からの支援を要請するものであったり、多彩な効果の能力が用意されています。これらは基本的にタラン族との交流を通じて、報酬として獲得することができます。そして先程も言ったように、これらの能力の質は、タラン族との協力をどれだけうまくこなしたか、プレイヤーのパフォーマンスによって変動します。あなたの戦闘能力も、あなたがアデルファとどれだけ密接に関われているかに依存しているのです。

もうひとつ、ゲーム内で登場する銃にはモジュールを入れるスロットがあります。小さい銃には4つ、大きな銃には6つスロットが用意されていて、銃の性質を大きく変化させることができます。例えばショットガンにホーミングする弾を装填するとかですね。先程紹介した特殊能力とこの銃の改造要素、そしてジェットパックなどを利用した多彩な移動方法を組み合わせて、非常に三次元的で自由度の高い戦闘を楽しめるようになっています。前作『Outcast』のどちらかというとスローペースな戦闘に比べて、今作はテンポ感も重視しています。

最後にストーリーについては、基本的には80年代~90年代のすこし明るいSF作品を連想してもらえれば分かりやすいかなと思います。よくあるディストピアな感じではなく、終始明るくポジティブな雰囲気で進んでいく作品となっています。ちなみに前作『Outcast』にはフランス、ドイツ、スペインなどヨーロッパを中心に多くの熱心なファンがいて、彼らは作中に存在する「タラン語」の語彙の辞書なんかを作ったりしています。今回我々はそういった長年のファンとコンタクトを取りチームに迎え入れ、『Outcast2』のストーリーや世界観がおかしなものではないか、前作に沿ったものであるかどうかを検証してもらっています。20年前の開発者たちですら忘れてしまったような細かい要素も、ファンは覚えていたりするのです。


『Outcast2』はすでに6年近く動いているプロジェクトですが、現在ベータ版の開発に差し掛かっているところです。発売日は未定となっていますが、なるべく早く皆さんにお届けできればと思います。ぜひ楽しみにしていてください。

思わず世界中を探索したくなるような、明るいオープンワールドSF作品

――『Outcast』はもともとPS2用に続編が計画されていたと聞きました。なぜ中止になって、なぜ再び蘇ったのでしょうか?

Schmiedecker氏:
初代『Outcast』は大きな反響があったゲームで、PS2の時代に続編を作ろうとするプロジェクトは存在しました。『Outcast』はPC専用のタイトルでしたからね。ですが、パブリッシャーが破産してしまって開発を続けることができなくなりました。残念ですがよくある話ですね。ですが『Outcast』の続編を作りたいという想いは当時のスタッフにも残っていて、それがこのプロジェクトに繋がっています。当時使っていた資料などは回収できていて、本作の開発に活かされています。スタッフも、当時のアートディレクターが本作でもそのまま関わっています。『Outcast2』を作りたいと連絡したら、当時の資料を持って快く参加してもらえました。それくらい愛されて、惜しまれていたゲームというわけですね。

――前作『Outcast』のどのような部分を受け継いでいて、どのような部分が変化していますか?

Schmiedecker氏:
『Outcast』の最大の特徴であり、ファンが一番鮮明に覚えているのはその探索の面白さでしょう。『Outcast2』でもそこは失われず、美しい惑星アデルファを隅々まで探索するというのが大きなコンセプトとなっています。主人公は「侵入者」や「異物」ではなく、世界の一部であり、歓迎されている。そう感じられるように作っています。特徴として何度かあげました作品を通しての明るい雰囲気も、前作『Outcast』から受け継がれたものです。

変化したのは純粋に技術的な部分ですね。最新のゲームですから、20年前のゲームとは出来ることが段違いです。オープンワールドの完成度が全然違います。そしてたびたびコンセプトとして紹介していた「アデルファというひとつのエコシステム」というのも、本作独自のものとなっています。これは純粋なオープンワールドゲームとしても、他にないオリジナルな要素であると自負しています。

――ひとえにオープンワールドゲームと言ってもさまざまな種類やジャンルがあると思いますが、『Outcast2』はどういうタイプのオープンワールドですか?

Schmiedecker氏:
大事なのは『Outcast2』はRPGではないということです。スキルの習得などはありますが、レベル上げのようなRPG的要素は多くありません。世界を探索して、各地のシナリオを追っていくのがメインではありますが、『Skyrim』のようなゲームとはちょっと違いますね。

――『Outcast』は日本ではそこまで有名なタイトルではないと思いますが、シリーズを知らない日本のゲーマーに有名タイトルに例えて『Outcast2』を説明するとしたら、どのようなゲームですか?

Schmiedecker氏:
戦闘のプレイ感はプラチナゲームズの作品に似ているかもしれません。戦闘に環境を利用する部分は、『モンスターハンター』っぽさもありますね。オープンワールドゲームとしてはちょっと『Just Cause』シリーズが近いでしょうか。これらのタイトルが好きな方、そして探索が好きな方、例えば「夏への扉」のような明るめのSF作品が好きな方、そしていかにもヨーロッパな雰囲気が好きな方などに特にオススメできるゲームになっていると思います。


――個人的に好きなゲームを教えてください。

Schmiedecker氏:
FPS好きなので、『Half-Life』シリーズはお気に入りです。ですが私はゲームプレイ以上にビジュアルデザインやアートスタイルに注目するタイプなので、『DARK SOULS』のアートスタイルやモンスターデザインがとても印象的で、一番好きなゲームのうちのひとつになっています。

――本日はありがとうございました。

『Outcast2』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに開発中。発売日は未定で、日本語字幕・音声に対応予定。

Mizuki Kashiwagi
Mizuki Kashiwagi

PCとPS4をメインで遊んでいます。自分で遊んでも、観戦していても面白いような対戦ゲームが好きで、最近は格闘ゲームとMOBAをよく遊んでいます。

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