修士課程シミュレーションアドベンチャー『大学院生TRPG』登場。実体験盛り込む学園ものアドベンチャーなのにSAN値を削られる

 

個人ゲーム開発者のはなちる氏は9月11日、『大学院生TRPG』のSteamストアページを公開した。本作はPC(Steam)のほか、Android/iOS向けに来年リリース予定。


『大学院生TRPG』は修士課程の2年間を体験するテキストアドベンチャーだ。ゲームシステムとしては、プレイヤー自身が一日のうちでやりたいことをやれるようである。たとえば主人公は勉強することもできるし、アルバイトをすることも、TA(ティーチングアシスト)の業務をおこなうことも、本を読むこともできる。読む本の種類もコミュニケーション本、ビジネス本、漫画、風水本などさまざま。これらの選択とダイスロールの結果によってパラメーターが上下し、それら変数の値によってイベントが発生したり、エンディングが分岐したりするというオーソドックスなシステムである。

しかしこのゲームの最大の特徴はなんといっても主人公が「院生」であることだろう。ただの学園ではなく大学院が舞台であることが本作の大きな特徴といえる。たとえばパラメーターには「体力」「精神」「お金」「勉学」「運」「社交性」のほか「研究」や「Dの意志(博士課程へ進まんとする意志)」などあまり一般的でないものが確認できる。またその下には「状態」という欄も用意されているが、作者いわく、主人公は睡眠不足、アルコール中毒、発狂など、さまざまな病気や状態異常に悩まされるとのこと。大学院生活の過酷さを垣間見る思いがして、筆者は身震いしてしまった。


ヒロイン役のオチアイなどドット絵のキャラクターはかわいらしく、キャラクターごとに設定された性格もなかなか興味深そうだ。一方で背景は終始モノクローム、トレイラーの音楽もなんだか物悲しげで、そこはかとなく不安感を煽ってくる。この不安感がストーリーに絡んでくるのか、大いに気になるところである。具体的なストーリーについてはあまり触れられていないが、シリアスなものかもしれない。トレイラーの後半を見る限り、なにやら穏やかでない事件も起こるようで、いったいどんな結末が用意されているのだろうか。


本作はタイトルで「TRPG」と銘打ってあるが、本来TRPG(テーブルトークRPG)はコンピューターを使わずに机上で紙とペンを使ってプレイすることに最大の特徴がある。そういう意味で本作は厳密にはTRPGではなくCRPG(コンピューターRPG)だろう。しかし作者によると、この「TRPG」は「サブタイトルの略」として考えてほしいとのこと。そのサブタイトルとは「Thinkable Role for Painful Generations」。強いて日本語に訳せば、「つらく苦しい世代に用意された、現実的な役割」という意味だろうか。これがいったい何を意味するのか、プレイ前から推し量ることは野暮かもしれない。

また前述の通り、本作には精神(SAN値)や発狂という概念など、TRPGに関連する要素もいくつか含まれている。一方でパラメーターに「Dの意志」とあったり、登場人物のシャツに「P≠NP」とあしらわれていたりなど、大学院生ならではと思われる小ネタも随所に見られる。本作をプレイするときはぜひそうした点にも注目しても面白そうだ。


本作の開発者は、個人でゲームを制作しているはなちる氏。本人も現役の大学院生とだけあって、本作ではアカデミズムのあるがままの雰囲気を感じ取ることができそうだ。日本の明日を担う若者たち、そのリアルな日々を描いた物語を期待して待とう。『大学院生TRPG』はPC(Steam)/Android/iOS向けに来年リリース予定。


下手の横好きでシミュレーションゲームなどをしています。自分のミスでだんだん状況が悪くなっていく様を他人事のように眺めるのが好き