『Age of Mythology: Extended Edition』 XPから解き放たれた神話
RTSの名作『Age of Empires II』の流れをくむ『Age of Mythology』。そしてこのたびリリースされた『Age of Mythology: Extended Edition』。独特の世界観が魅力の本作は、リメイクされたタイトルにありがちな"これじゃない"と叫びたくなるような部分が非常に少なく、「ほぼ完全な移植と追加要素」といってもさしつかえない高品質なタイトルとなっています。
2013年4月10日にSteamでリリースされた『Age of Empires II HD Edition』では、シナリオのテキストの"変更"にはじまり、日本語吹き替えもなく、さらには畑や資源のグラフィックも異なっており、まさに「これじゃない!」と叫んだ記憶があります。しかし本作『Age of Mythology: Extended Edition』は完全にそれを裏切り、まさに求めていた『Age of Mythology』そのものがリリースされたのです。
たしかに今画面を見るとグラフィックはいわゆるローポリに感じられます。また、一人一人内政ユニットを操作する必要があり面倒です。しかし、だからこそ『Age of Mythology』なのです。
少しばかり影が薄かった『AoM』
本作が発売された2014年5月9日、当初は言語を日本語にするとテキスト部分が文字化けしており英語のままプレイしなければならない状況でした。また、荷馬車の一部が自動で動かないなどいくつかバグも残っていました。しかし6月時点ですでに上記問題は修正され、正常にプレイできるようになっています。
マルチプレイについても、AI戦ではありますが何戦かプレイしてみたところ不具合に遭遇することはありませんでした。『Age of Empires II HD Edition』の初期段階ではラグがひどくプレイに支障をきたすレベルだったため、この部分についても高評価といえます。
かつて『Age of Empires II: The Conquerors』は尋常ではないプレイ人口だったため、経験済みのかたは多いと思われます。一方『Age of Mythology』は未プレイという場合も多くあると推測されます。続編だからといって無条件でプレイされるわけではなく、続編が受け皿となりえなかったケース(競技色の強いタイトルではよくあること)です。当時筆者の周辺で聞かれたプレイしない理由としては、別コンテンツをプレイしている、歴史もののほうが好きだ、文明圏の関係や神話ユニットが複雑そうといったところでした。
オリジナルから確立していた魅力
2003年当時のゲーム環境を考えるうえでMMORPGの勃興は重要な要素といえるでしょう。目新しいコンテンツに対抗しうる力をもつほど『Age of Mythology』がパワフルなタイトルであったかったといわれると、あやしいところです。歴史ものかどうかについては、好みは人それぞれなので一概にどちらがどうとはいえません。ただ、筆者はファンタジーが好きなので渡りに船とばかりにとびつきました。
文明圏の関係や神話ユニットについては、RTSの基礎としてあげられる"ゲームを覚える"ことのハードルを高くみせてしまった可能性があります。対人戦をプレイするのであれば、いったんすべての文明圏をある程度使いこなせるまで練習して、かつ自分が使いたいものを練習していくというアプローチが求められます。
練習内容も内政管理でミスをしないのがあたりまえ、ミスの多いほうが負けるゲームのため、今ふりかえると非常にストレスの強いゲームです。農民作れてる? 資源たまった? 農民遊んでない? 荒らしいってる? 荒らされてない?……『Age of Empires』シリーズは、そういうゲームです。
前作『Age of Empires II: The Conquerors』でも内政管理は重要でした。どの文明でも一定の時期までは弓や散兵といった遠距離ユニットが強く、いかにそれらが素早くそろう内政を整えるか、相手より一歩でも先んじるかが勝敗を左右する要素でした。文明ごとに違いはありましたが、別の文明を使うことはある程度練習をすればそこまで難しくはなかったのです。
しかし、『Age of Mythology』では文明圏ごとにゲームの展開がことなっており、文明圏を転換するとなるとそれなりの練習が必要となります。筆者は長らくエジプトを使っていたため、北欧がなかなか使いこなせず苦労していた記憶があります。逆に北欧ばかり使っていた友人はエジプトが使いづらいとぼやいていました。
今プレイするとして
話を本作に戻しましょう。現在、マルチプレイヤーロビーにはいくつかゲームがありましたが、ゲーム数はけっして潤沢ではありません。盛況であるとはいいきれない状況であるため、積極的に対戦したいかたは賞味期限切れに注意したほうがよいでしょう。
レーティングについては、『Age of Mythology』当時のレートが高くともレート1900台であったと記憶しておりますが、先日本作で確認したところレート2000を超えているプレイヤーも多数みかけます。当時レート1700にギリギリ到達できなかった筆者でも、今がんばったらレート1700を突破できる可能性は(練習する時間さえあれば)あるかもしれません。
もちろん殺伐とした真剣勝負であるマルチプレイにばかり個室せず、シングルプレイのゲームとしてめちゃくちゃな世界観のシナリオを楽しむのもおすすめです。シナリオは文明圏のチュートリアルのような構成になっており、プレイヤーの操作する英雄が違った文明圏のものになることがあります。ギリシャの英雄が北欧でワルキューレと戦うというのは、なかなかお目にかかれないのではないでしょうか。
プレイしたくてもプレイできなかったゲーム
なぜ筆者が『Age of Mythology』のリメイクをこうして歓迎しているのでしょうか。それはじつに個人的な理由があります。それは、『AoM』がWindows Vista以降は正常に動作しなかったからです。プレイにあたっては、ユーザーパッチを当てなければなりませんでした。不具合がおきたのはユニットのAI、つまりRTSというジャンルでは非常に重要な部分です。当時筆者の環境では対人戦でもユニットが正常に動作しないなど、通常のプレイが不可能でした。BGMやSEを再生したくてゲームを起動しているわけではありません。また、Windows XPは2014年4月にサポートを終了しています。サポート終了したOSを使いつづけるリスクはもとより、そのためにメインとは別の環境を維持しておかなければならない面倒さもあります。ドライバがリリースされていないため、新しすぎるハードウェアが使えない状態です。つまり、ハードウェアの故障による環境崩壊のリスクが存在していたのです。
本作をみんな買おう、マストバイだと手放しで推薦することはできません。RTSというジャンル自体が、広くプレイされているとはいいづらいのが現状でしょう。そして本稿で『AoM』をとりあげるのもプライベートなきっかけ・苦い思い出があったからこそです。
『Age of Mythology』が2014年に人気タイトルのひとつとしてのしあがっていくことは難しいと筆者は考えます。けっして本作がゲームとして劣っている、面白くないというわけではありません。RTSというジャンルが今よりも存在感のあった古い時代、2003年のゲームだからです。現在、こういった競技性が強いタイトルのメインストリームはMOBA系に移行していると断じても過言ではないでしょう。
古い時代のゲームだから良い、悪いというのはナンセンスです。ゲームには環境の変化があり、時代の流れがあります。ただ、今はやりのものとその眷属を望むプレイヤーの目には本作が物足りない、または手間ばかりかかるゲームに映るかもしれません。
しかし、筆者はプレイできるゲームとしての『Age of Mythology』を求めていたのです。本作が2014年現在の概念で再解釈され、完全なリメイクとしてリリースされたら激怒していたことでしょう。筆者は今回の『Age of Mythology: Extended Edition』リリースを強く歓迎します。昔取った杵柄をまだおもちのかた、$29.99でもう一度振るってみてはいかがでしょうか。