ウクライナのデベロッパーFrogwaresがホラーゲーム『Project Palianytsia』を開発中。難しい国内状況に合わせた開発体制で臨む
デベロッパーのFrogwaresは5月19日、『Project Palianytsia』というコードネームのホラーゲームを開発中であることを明らかにした。今年の夏に正式発表することを目指しているとのこと。
『Project Palianytsia』は、不気味なホラー要素と、ヴィクトリア朝の世界におけるミステリー要素を組み合わせた作品になるという。現時点では4枚のコンセプトアートが公開されているのみで、詳細は不明。そのコンセプトアートには、海に浮かぶ灯台や図書館、森にたたずむ小屋、豪華な邸宅が、いずれも不気味さを感じさせる暗い雰囲気にて描かれている。
本作は、開発元Frogwaresがこれまで手がけてきた『Sherlock Holmes』シリーズや『The Sinking City』のファンをターゲットにして開発中とのこと。これらの作品の共通点としては、ひとつには探偵モノということが挙げられる。手がかりを集めて推論を立てる、おなじみのシステムが取り入れられているのかもしれない。
また、一部の作品ではオープンワールドが採用されていた。ただこちらについては、『Project Palianytsia』はよりリニアなゲームプレイになると案内されている。実のところ、同スタジオは別のオープンワールドゲームを次回作として検討していたそうだが、開発規模を抑えた本作にあえてシフトしたのだという。この判断には深い理由があるようだ。
Frogwaresは、ウクライナに拠点を置くスタジオである。ロシアによる軍事侵攻が続く非常に難しい状況においても、同スタジオは最新作『Sherlock Holmes Chapter One』のDLCや、過去作の移植版のリリースなどをおこなってきた。ただ、これらは既存のプロジェクトであり、仕上げ作業を残していたのみであった。一方で、いちから作品を作り上げるとなると、戦時下という現実に直面したという。
スタッフのなかには、戦うことを選び兵士に志願したり、人道支援活動に出かけたりといった者もおり、そうした人たちの穴を埋めるための調整が求められた。また、いつ誰の身に何が起きるとも知れない状況のため、柔軟な体制を敷いておく必要もあったとしている。
チーム間での密なコミュニケーションから技術開発まで、さまざまな面での制約が予想される状況で、オープンワールドゲームのような大規模作品に挑むとなると、プロジェクトを混乱に陥れてしまうリスクが高い。そうであるならば今の体制で開発できるものをということで、『Project Palianytsia』の企画が承認されたそうだ。
もっとも本作においては、従来と変わらない野心と品質へのこだわりをもって取り組み、素晴らしい物語とミステリーを届けたいとしている。単に規模を縮小するのではなく、焦点を絞った作品づくりをおこなう。そうすることで、いま国のために戦っている人たちを支援しながら、ゲーム開発を続けることができるのだとした。
ちなみにFrogwaresによると、本作のコードネームに使われている「Palianytsia」とは、ウクライナの国民食ともいえる食べ物の名前とのこと。窯焼きのパンのようだ。ロシア人にとっても馴染みのある食べ物らしいが、ウクライナ語読みは、ロシア語話者にとって発音が難しいのだという。そのためいまウクライナの現地では、“不審者”の身元を確かめるためのテストとして、この名前が使われているそうだ。
同スタジオはロシア軍による侵攻開始後、ウクライナ国内の被害状況を含む戦況などについてSNSにて日々発信し、ウクライナへの支援を呼びかけている。本作のコードネームには、そうした状況下で生まれた想いが込められているのだろう。
*5月16日には、Epic GamesからEpic MegaGrantsを通じた資金援助を受け取ったことを報告。
『Project Palianytsia』は、今年の夏に正式発表予定。ただ、開発元Frogwaresはその発表時期について、“願わくば(hopefully)”とも述べており、依然として難しい環境にあることをにじませている。