『オーバーウォッチ』ザリアのスキンから「Z」の字が消える。ロシアによるウクライナ侵攻支持のシンボルとの誤認を避けたか

Blizzard Entertainmentは4月5日、『オーバーウォッチ』にてアップデートを配信した。ザリアのスキンがひっそり修正されたようだ。

Blizzard Entertainmentは4月5日、『オーバーウォッチ』にてアップデートを配信した。同アップデートは『オーバーウォッチ』の6周年を記念するイベントを含み、人気スキンなどがリニューアル。過去の限定イベントからのモードも復刻されているほか、不具合修正などもおこなわれている。一方で、パッチノートには記載されずひっそり変更された点もあるようだ。それはヒーローのひとり、ザリアのスキンについてである。 

ザリアは、『オーバーウォッチ』に登場するヒーロー。ロールはタンクで、自分の周囲にバリアを展開し、バリアにダメージを受けた分だけ近距離用のビーム兵器パーティクル・キャノンが強化される。その出身はロシアとされており、ロシア防衛軍に所属している設定だ。スキンとしては、レジェンダリー等級の「アークティック」「シベリアン・フロント」のほか多数が存在。寒冷地出身らしい、防寒着を着こんだスキンなどが用意されている。 

ところが、これらアークティック、シベリアン・フロントのスキンについて、今回のアップデートに際して変更が加えられたようなのだ。海外掲示板Redditで話題となり、海外メディアPolygonも伝えている。小さな変更であるが、ザリアに向かって右側の胸元に注目。古いバージョンでは胸に「Z」の文字が描かれていたのが、新バージョンでは削除されているのだ。 
 

 
Blizzard Entertainmentはなぜこうした変更をおこなったのだろうか。もともとザリアのスキンに描かれていたZの字は、もちろん「Zarya(ザリア)」のイニシャルとしての表記だったのだろう。しかし昨今の情勢では、Zという字を取り巻く状況が変わってきている。現在ロシアにて、Zはプーチン政権および侵攻支持のシンボルとして扱われているのだ。 

現在、ロシアではプーチン大統領のウクライナ侵攻を支持するシンボルとして、Zの文字が使われている。3月4日には、ロシア同盟国セルビアにおいて、ロシア支持を訴える人々数千人がデモ行進を実施(ロイター)。このときデモに参加した人々はロシア国旗やプーチン大統領の写真を掲げたほか、Zの字をプリントした看板を掲げている。また3月6日には、ロシアの男子体操イワン・クリアク選手が、体操の種目別ワールドカップにて、アルファベットのZの字をユニフォームの上につけて表彰台に立った。これを受けてクリアク選手は国際体操連盟より、懲戒手続きを受けている。このほか、ロシア国防省のInstagramにもZの字をフィーチャーした画像が複数投稿されている。 

Zの字が戦争賛成のシンボルとして使われるようになった、はっきりした起源は分かっていない。BBCによれば、ソーシャルメディア上でZが注目されたきっかけは、ウクライナに向かうロシア戦車の側面にZが描かれていたことに由来するとしている。またロシア国営放送「チャンネル1」のニュース番組では、ロシア軍が味方の誤射を防止するための識別マークとして用いているとする説が語られたという。いずれにせよ、ロシア軍に用いられているZの字が特定の思想をもつ人々に取り上げられ、ウクライナ侵攻を支持するシンボルとして用いられるようになった背景がありそうだ。 
 

 
Blizzard Entertainmentとしては、ロシア出身とされるザリアが、こうしたZの字を取り巻く複雑な状況に巻き込まれることを避けたかった意図があるだろう。今後スキンが戻される予定があるかどうかは、今のところ不透明である。 

Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

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