『Call of Duty』のPS版は今後もリリースを続けていくと、Xboxのボスがコメント。駆け引き

マイクロソフトは1月18日、Activision Blizzardを買収することで両社間で合意したと発表。これに関してマイクロソフトXbox Gaming部門CEOのPhil Spencer氏は1月21日、『Call of Duty』のPlayStation向けリリースを続けていく考えを示した。

マイクロソフトは1月18日、Activision Blizzardを買収することで両社間で合意したと発表。総額687億ドル(約7兆8000億円)というゲーム業界最大規模のこの買収案件においては、買収完了後にはActivision BlizzardタイトルがXbox独占となるのかどうかが、多くのゲーマーから注目されている。これに関してマイクロソフトXbox Gaming部門CEOのPhil Spencer氏は1月21日、『Call of Duty』のPlayStation向けリリースを続けていく考えを示した。
【UPDATE 2022/1/21 12:30】
タイトルの「明言」としていた部分を「コメント」へと変更


Activision Blizzardは、『Call of Duty』のほか『オーバーウォッチ』や『ディアブロ』『World of Warcraft』『StarCraft』『クラッシュ・バンディクー』『Candy Crush』など、数多くの人気IPを抱えている。マルチプラットフォームで展開されているシリーズ作も多く、たとえば『Call of Duty』はその筆頭ともいえる存在だろう。そしてゲーマーのあいだでは、そうしたタイトルが(コンソールにおいては)Xbox独占となるのかどうかが、大きな話題のひとつとなっている。

マイクロソフトは今回の発表のなかで、「Activision Blizzardタイトルはさまざまなプラットフォームで楽しまれており、今後もそれらのコミュニティをサポートしていく計画である」と言及。またPhil Spencer氏は経済紙Bloombergとのインタビューにて、「ソニーのプラットフォームにてActivision Blizzardタイトルを楽しんでいるプレイヤーに対しては、そうしたプラットフォームからコミュニティを引き離すことを意図した買収ではないと伝えたい」とコメントしていた。


そしてSpencer氏は1月21日、ソニーの首脳陣に連絡を取ったことを公表。Activision Blizzardの買収完了後も、既存の契約について尊重すること、また『Call of Duty』シリーズのPlayStation版を維持したい考えであることを伝えたという。同氏は、ソニーはゲーム業界において重要な位置を占めており、両社の関係性を大事にしたいとも述べている。

これに先立っては、ソニーは経済紙The Wall Street Journalに対し、「マイクロソフトが契約上の合意を遵守し、またActivisionタイトルを引き続きマルチプラットフォームで展開するものと期待している」とコメントしていた。今回のSpencer氏のコメントは、おおむねソニーの反応に沿った内容となっている。既存の契約とは、おそらく『Call of Duty』シリーズのPlayStation版向け独占コンテンツの提供などを指しているのだろう。

一方で、Spencer氏は『Call of Duty』以外のタイトルについては言及しておらず、そちらの今後については不透明なままだ。先述した発表などにおいても、曖昧な内容にとどまっている。


今回Phil Spencer氏が『Call of Duty』シリーズのマルチプラットフォーム展開継続に言及したのは、今回の買収手続きをスムーズに進めるための布石とみることもできるかもしれない。というのも、昨年米連邦取引委員会の委員長に就任したLina Khan氏は、反トラスト法(独占禁止法)の規制強化を唱え、巨大IT企業による買収案件に対し強い態度で臨んでいることで知られる。また関連があるのかは不明だが、今回の買収合意発表直後には、同委員会は違法な企業買収への取り組みを強化する方針を示していた。

マイクロソフトがActivision Blizzardを買収した場合には、ゲーム業界では収益ベースにてテンセント、ソニーに次ぐ位置になるという。業界第3位になろうかという買収案件に、反トラスト法が適用されるのかどうかは何ともいえない。ゲーム業界内だけでなくマイクロソフト自身としても最大規模の買収金額となることから、警戒される可能性はあるだろう。そうした状況を踏まえ、Spencer氏はあえてオープンな態度を公にした可能性もありそうだ。


こうした独占か否かといったやり取りは、マイクロソフトがBethesda Softworksの親会社ZeniMax Mediaを昨年買収した際のことを思い起こさせる。当時もマイクロソフトは、SIEとBethesdaの契約を尊重するとコメント。こちらは、PS5向けの時限独占タイトルとして発表された『DEATHLOOP』や『Ghostwire: Tokyo』のことを指していた。ただ、マルチプラットフォーム展開の継続については触れず、逆にいくつかの新作はXbox(とPC)の独占タイトルにすると明言。実際、新作RPG『Starfield』はXbox Series X|S/PC向けに発売されることとなった。

現時点でマイクロソフトは、Activision Blizzardタイトルの独占に関しては特にはっきりとは述べていない。今回、『Call of Duty』シリーズについてはマルチプラットフォーム展開の継続が示唆されたが、当然独占となるタイトルも出てくることが予想され、今後の動向が注目される。

マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収は、現在規制当局の審査完了やActivision Blizzardの株主の承認などを待っている状況だ。マイクロソフトはそうした承認を得たうえで、2023年会計年度内(2022年7月〜2023年6月)に取引が完了する見込みだとしている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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