人気ボドゲ『Pandemic』のSteam版などがひっそり販売停止。公式からの声明なく、ファンの間で推測飛び交う
パブリッシャーAsmodee Digitalは、感染症を題材にしたボードゲーム『Pandemic』の販売を停止した。海外メディアPC GamerやKotakuが報じている。なお販売停止の理由に関して同社から声明は発表されておらず、真相は現在も闇の中だ。このような状況下において、ファンの間ではさまざまな推測が飛び交っている。
『Pandemic』は、同名の人気ボードゲームのデジタル版。最大5人のプレイヤーが協力し、世界に蔓延する感染症から人類を救うため病原体のワクチンを発見することが目的の、ボードゲームである。ローカル協力プレイのほか、1人で複数の役割を担当するソロプレイも楽しめるのが特徴だ。同作のアナログゲーム版は、年間最優秀ボードゲーム賞であるOrigins Awardやゴールデンギーク賞など複数の受賞歴があり、その人気の高さがうかがえる。
前述のとおり、『Pandemic』を制作したAsmodee Digitalは、同作の発売停止に関する声明を正式に発表していない。非公式データベースサイトSteamDBを見たところ、2022年1月になりパブリッシャーの要望により、販売が停止されたことが確認できる。この異変に気が付いたとある海外ユーザーは、Asmodee Digitalに対して「販売停止の理由」について問い合わせを試みた。その一連の流れをコミュニティサイトredditに投稿している。
問い合わせの結果、「販売停止の理由に関しては、多くの事情により公表できない」との回答が返ってきたという。この結果を受け、ファンによる推測がreddit内にいくつか寄せられた。同スレッド内では「パンデミックへの配慮ではないか?」といった新型コロナとの関係性を考慮した推測が散見される中、特に目立ったのが「EmbracerによるAsmodee Digitalの買収が影響しているのではないか」という仮説であった。
スウェーデンのEmbracer Groupは、主要パブリッシング子会社THQ Nordicを通しゲーム販売をおこなっている。近年同社は企業の大量買収によって、その存在感を高めてきた。2020年にはゲームデベロッパー10社を含む計13社を一括買収したり(関連記事)、『Borderlands』シリーズを手がけるThe Gearbox Entertainment Companyを買収するなどしている(関連記事)。また2021年12月には、Dragon Ageシリーズのコミックスを制作するDark Horse MediaをEmbracer Groupが買収し、コミック出版や映画といった専門的なトランスメディア事業グループを新設したことを公表した。『Pandemic』を制作したAsmodee Digitalにおいてもその例に漏れず、2021年12月にEmbracer Groupとの独自買収交渉を開始したことをプレスリリースを通じてAsmodeeから報告されている。
このように近年のEmbracer Groupは、企業の買収を重ね急成長を繰り返してきた。これらを踏まえると、『Pandemic』の開発元であるAsmodee DigitalとEmbracer Groupとの買収交渉が関係している可能性はある。とはいえ、あくまで仮説であることをご留意頂きたい。今回販売停止した『Pandemic』に関しては、今後どのような措置があるか分からないが、少なくともファンからはどのような形であれ再配信を望まれていることだろう。
なお『Pandemic』の配信が停止されているプラットフォームは、執筆現在のところPC(Steam)含めモバイル版(App Store / Google Play)。前述のユーザー問い合わせによると、2022年1月31日にMicrosoft ストア版が、2022年7月末までにNintendo Switch版が削除される予定とのこと。
【UPDATE 2022/1/19 12:10】
その後Asmodee Digitalと発売元のZ-Manが『Pandemic』の配信停止についてコメント。一部ファンの間では、『Pandemic』と新型コロナウイルスとの関係性を指摘されていたが、同社は別の理由を主張している。海外メディアIGNの問い合わせによると、Asmodee Digitalは同作について「現代のゲームの品質にふさわしくない」と説明。ゲーム内容の改善に対し意欲的な姿勢をみせている。これは今後なんらかの形で同作が再提供されることを示唆している。オリジナルのデジタル版が発売され約10年経過したこともあり、同作が現代向けにアップデートされ再配信される日がくるかもしれない。