ゲーム向けNFTマーケットプレイス「Fractal」が注目を浴びる。国内大手メーカーもNFTについて言及し始める

Fractalは昨年12月31日、公式Discordサーバーへの参加者数が11万人を突破したと発表した。Fractalは、Twitchの共同設立者Justin Kan氏らが立ち上げた新興NFTマーケットプレイスであり、ゲーム向けに特化している。

NFTマーケットプレイスのFractalは昨年12月31日、公式Discordサーバーへの参加者数が11万人を突破したと発表した。Fractalは、Twitchの共同設立者Justin Kan氏らが立ち上げた新興NFTマーケットプレイスであり、ゲーム向けに特化していることが特徴。昨年12月12日に発表され、31日にローンチしたばかりだが、すでに大きなコミュニティを築いていることをアピールしたかたちだ。

Fractalは、NFTアイテムを提供するゲームおよびその開発元と提携し、開発元からのNFTアイテムの初期ドロップや、ユーザー間での売買をおこなえる場を提供している。NFTアイテムとは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータに所有権の証明を発行するNFT(Non-Fungible Token・非代替性トークン)により、唯一性をもたせたゲーム内アイテムのこと。そうした技術により、デジタルアイテムに現実世界での価値が生まれるとされている。なお、FractalではブロックチェーンにSolanaが採用されている。

現時点では計10本のゲームがFractalに参加。対戦アクションゲームやレースゲームなどのほか、コミュニケーションツールのようなタイトルも存在するようだ。そして各タイトルでは、キャラクターなどのNFTアイテムが販売され、売買がおこなわれている。また、Fractal自身が手がけた『Fractal』では、ゲームを横断して利用できるNFTアイテムが提供されている。

今回、Fractal公式Discordサーバーへの参加者数が11万人以上と発表されたが、本稿執筆時点では約13万人となっている。これは、たとえばPlayStationやXboxの公式サーバーを超える人数である。ゲーム単位なら、さらに巨大なコミュニティをもつものもあるものの、それなりに大きな規模であることがうかがえるだろう。もっとも、ゲーマーばかりが集まっているというわけではなく、もともとNFTアイテム取引に関心のあった人が多いようだ。


近年はゲームにNFTを導入する動きが増えてきており、ゲームプレイによってNFTアイテムを獲得しそれを売買できるものは「Play-to-Earn」モデルとも呼ばれている。既存の大手ゲームメーカーとしては、たとえばユービーアイソフトが昨年12月に独自のNFTプラットフォーム「Ubisoft Quartz」を発表し、『ゴーストリコン ブレイクポイント』のPC版を対象に海外にてサービス開始している。

また、スクウェア・エニックス・ホールディングス代表取締役社長の松田洋祐氏は今年の年頭所感にて、Play-to-Earnモデルについてポジティブな印象を語り、同社のポートフォリオにブロックチェーンを使ったゲームを取り込んでいくことを、今年以降の大きな戦略的テーマだとコメント。社会動向を注視するなどしながら、将来的な自社トークン発行も見据え、事業展開を本格化させていくという。ちなみに同社の北瀬佳範氏や齊藤陽介氏、藤本則義氏らも、今年注目していることにNFTを挙げている(ファミ通)。

このほかセガサミーホールディングスも、昨年12月におこなわれたマネジメントミーティングの質疑応答にて、現時点で決定していることはないとしたうえで、「NFTについては、いろいろと実験していきたいと考えており、すでにさまざまなスタディや検討を開始している」と述べている。ただ同社は、ネガティブな反応を示すユーザーもいるとし、「ただの金もうけと思われてしまうようなものであれば、展開を見送るといった判断軸で考えていきたい」ともコメントし、慎重な姿勢もみせている。


Twitchの共同設立者が手がけたということもあってか、大きな注目を集めることとなった新NFTマーケットプレイスのFractal。ただ、セガサミーホールディングスが指摘したように、NFTに対してネガティブな反応を示すゲーマーもいる。特に、従来型のゲームあるいはメーカーとNFTとの組み合わせに対して、ファンから大きな反発が寄せられる例がたびたびみられる。

たとえば、先述したUbisoft Quartzの発表時には、ユービーアイソフトに対して批判的なコメントが殺到(関連記事)。また、期待集めるサバイバル・ホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl』へのNFTアイテムの導入においても、開発元GSC Game Worldが批判にさらされ、発表からわずか1日で計画が撤回された(関連記事)。NFTに拒否反応を示すのは一般のゲーマーだけではなく、開発者やゲームメーカーが声を上げることもある。現状としてのNFTの投機的な側面や、ブロックチェーン取引における環境負荷への懸念、NFTが証明するとするアイテムの価値への疑問などが背景にあるようだ。

もちろん、Play-to-Earnモデルのゲームに期待するゲーマーや、そうした作品を手がけるメーカーは徐々に増えてきている。Fractalを含むゲーム向けのNFTマーケットプレイスは、現時点ではあくまでそうしたコミュニティの中において盛り上がりをみせている様子。NFTは広くゲーム業界に浸透していくことになるのか否か、今後の動向に各社注目しているようだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

Articles: 6818