建築デザイナーが開発中の3Dパズル『Manifold Garden』、360度“幾何学的アート”な世界で謎を解け

 

マウリッツ・エッシャーをご存知だろうか。錯視的な“だまし絵”で有名なオランダの巨匠だ。エッシャーがもたらした絵に対する新たな視野の導入はまさに革新的であり、多くの人々が「上昇と下降」や「滝」といった彼の代表作を目にしたことだろう。そして、ゲーム業界でも彼の絵に影響を受けた作品が多く存在する。無限に続く階段や道を進むプレイヤーを、視点変更によって立体の構造を変え新たな道へと導くPlayStation 3向けゲーム『無限回廊』。だまし絵の構造を把握しながら少女をうまく誘導しゴールを目指すモバイル向けゲーム『モニュメントバレー』。これらのタイトルがエッシャーの影響を受けていることは明らかである。しかし、影響どころかエッシャーの作品名をゲーム名にするほどエッシャーへの愛を示すタイトルがある。それが『Manifold Garden』だ。

『Manifold Garden』はPlayStation 4/PC向けのパズルゲーム。もともとは前述したようにエッシャーの「Relativity(相関性)」というタイトルであったが、権利問題の関係で『Manifold Garden』という名前になったようだ。開発しているのはカナダ在住のWilliam Chyr氏。Chyr氏はこれまでデザイナーとしてホテルやショッピングセンターなどの構造物をデザインしてきた過去を持つ。しかしデザインのみならず、シカゴ大学では経済学と物理学を専攻しており、アートを美術的な視点でも理科的な視点でも解釈できる多彩な才能を持っている。また、学生時代はジャグリングやマジシャンといった芸を披露するサーカス団員としても活躍していたようだ。

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『Manifold Garden』はスクリーショットを見ても、ただならぬ幾何学的な世界観が見て取れる。広大な三次元空間のなかに色彩のない無数の構造物が存在している。公式サイトを見てみると、多くの広大な空間と建造物の写真がピックアップされており、ゲームの内容は見えにくいが、本作は一人称視点の3Dゲームとして開発されていることがわかる。

PlayStation Experienceではデモが展示されていたようで、ゲームプレイの様子はKotakuにて公開されている。狭い室内の中で箱や水を用いたパズルを解いていき、どんどん次の部屋へ移動していくという『Portal』や『Antichamber』に近い構造となっているようだ。動画内でも、重力の方向によって床の色が変わる部屋を回転させ、それに対応する色の物を駆使してパズルを解いていることが確認できる。ただ物体を所定の位置に持っていくだけでなく、室内のあらゆる面を用いた360度の思考を必要とする手強いパズルゲームになることを予感させている。

しかし、本作は狭い室内のみならず、室外の広大なエリアでのパズルも楽しめるように見える。ゲーム内の空間は縦で繋がっており、落下してもまた落ちたところに帰ってくるループ仕様だ。また、室外のエリアでもさまざまな場所にオブジェクトが設置されていて、どこへ移動するのかという点でも悩まされそうだ。もちろん外の空間でも室内エリアと同じような物体を使ったパズルが用意されている。室内外問わず洗練された立体的な構造物やループを利用した空間が配置されているなど、タイトルにエッシャーの作品名を入れようとしていただけあって、随所にエッシャーのエッセンスが感じられるものとなっている。

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開発当初はUnityの3Dエンジンを学ぶための小さなプロジェクトとして進めていたが、開発するうちにさまざまなインスピレーションが浮かび、プロトタイプをユーザーにテストプレイしてもらったところ、そのフィードバックに勇気付けられて開発を進めることを決意したという。2013年からはフルタイムで開発を始め、2015年明けよりIndie Fundからバックアップを受けているようだ。

本作にはメインであるパズルはもちろん、William氏が描くアートを鑑賞する「Photographyモード」も搭載されるようだ。まだまだ発売まで時間がかかるようだが、Chyr氏はTwitterに日々開発の記録を投稿している。また、氏が描いた90枚の芸術的な壁紙がサイトで配布されているので、氏のデザインに興味を持った人はこちらもチェックしてほしい。