『Apex Legends』開発者は、タップストレイフ削除について「正しい選択をした」と信じる。根拠となった3つの懸念

Respawn Entertainmentは9月1日、『Apex Legends』にてタップストレイフを削除することを発表した。『Apex Legends』開発者から、変更について詳しい解説が寄せられている。

Respawn Entertainmentは9月1日、『Apex Legends』にてタップストレイフを削除することを発表した。タップストレイフとはジャンプ中に空中で急激に方向転換する技術のことだ。同テクニックはキーボード+マウスプレイヤーに多く使用されており、ゲームから削除されることに対しては多くのユーザーから反発の声が上がった。こうした騒動を受けて、Respawn Entertainmentにてアソシエイトライブバランスデザイナーを務めるJohn Larson氏から詳しい解説が寄せられている。 

まずLarson氏は、本議論における「タップストレイフ」について、とくにジャンプ中にマウスホイールを入力することで方向を転換する技術であると定義した。今回の変更でターゲットにしているのは「ジャンプの後に複数の方向コマンドを素早く入れる行為」のこと。キーボード+マウス操作でのタップストレイフは、前方移動のコマンドをマウスホイールに割り当てておこなう方法が有名であり、そちらを指しているのだろう。変更があったあとでも、ゲーム中の動作はコントローラープレイヤーにとっても、タップストレイフを知らなかったキーボード+マウスプレイヤーにとっても感触が変わらないものであるべきだとしている。 

ここでの目標は、90度以上の角度でスピードを保ったまま方向転換することを防ぐことだ。たとえば壁ジャンプを使ったあとふたたび同じ壁に戻るテクニックなどは、変更されないものとされる。あくまで、マウスホイールなどによる急激な方向転換のみが削除されるわけだ。 

タップストレイフの意義については、Larson氏が初めてテクニックを知ったとき以来ずっと念頭にあった案件だという。タップストレイフという技術について、Larson氏はプレイヤー個人としては使用するのが楽しく、またストリームでのスーパープレイを見ることも楽しみとしているという。しかしデザイナーとしては、同テクニックは看過できないものであったようだ。 
 

 
タップストレイフにまつわる議論の前提として、Larson氏はコントローラープレイヤーとキーボード+マウスプレイヤーの比較について述べている。同氏によれば、両者の差は一般に信じられているほど大きな差があるわけではないとのこと。またコントローラーにおけるエイムアシストについては、担当者であるシニアプログラマーのRayme Vinson氏の言葉を引用。エイムアシストはあくまで入力のアクセシビリティの問題であって、バランスデザインの領域で語られるべきではないとしている。またエイムアシストを優秀にしすぎないための線引きについては、つねに議論されるべきだともしている。 

Larson氏はコントローラープレイヤーとキーボード+マウスプレイヤーの入力レイヤーの違いについて考えてはいるものの、二つの入力系統が存在する以上、完璧に平等な公平性を実現することは難しいとしている。また開発チームがコントローラープレイヤーに偏重していると指摘を受けることについては、あくまで入力のアクセシビリティについて制約の多いコントローラープレイヤーを考慮しているのであり、バランス調整とは分離して考えるべきだとしている。 
 

 
こうした前提を踏まえて、Larson氏はタップストレイフについて3つの問題点を挙げている。第一の問題が「会得しにくい(inaccessible)」ことである。会得しにくいというのは、ゲームを遊んでいて自然に習得するのが難しいこと、もっといえば特殊なキーバインドを設定しなくては実現できないことを指しているという。第二の問題は、行動を事前に読みにくいこと、そして反撃が難しいこと。Larson氏はタップストレイフをおこなわれた相手がなすすべをなくしている動画をたびたび目撃しており、今後タップストレイフに習熟したプレイヤーが増えるにつれ、ゲームプレイに影響を与えることを懸念しているとのこと。 

そして第三の問題が移動系アビリティと組み合わせることによるシナジーだ。Larson氏は、パスファインダーやオクタンがタップストレイフを使いこなすことで、手の付けられない状態になることを懸念しているとのこと。機動力については、『Apex Legends』においてもっとも懸念されている要素だという。機動力は漁夫パーティの成功率や前線の定義、敵との距離の詰め方など多くの箇所に影響を与える。そのうえでLarson氏は、『Apex Legends』はあくまで限られた数の動きの可能性でうまく機能するように設計されていると説明する。 

 
さまざまな議論を踏まえつつ、Larson氏はタップストレイフ削除について社内で話し合ったこと、多くのキーボード+マウス使いのプロプレイヤーとも話し合ったことについて言及。決定が多くの反発を招き、かならずしも後味のよい選択ではないにしても、正しい選択をしたと思うと述べている。そして、意見があればいつでも聞かせてほしいと締めた。 
 

 
本件についてはさまざまな議論がリプライについており、たとえばプロプレイヤーである JSavageWこと Johan Wilbrenninck氏も反応。はじめはタップストレイフ削除の告知に落胆していたものの、Larson氏の声明を読んでそれほど悪い変更ではないと思いなおしたと明かしている。一方、いまだに反感冷めやらず、クロスプレイ自体を廃止すべきだと唱える急進派のプレイヤーも存在するようだ。今後のタップストレイフ削除詳細については、次回パッチノートにて記載されることが予告されている。 

【UPDATE 2021/09/02 18:00】タップストレイフについて追記。
 

Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

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