大作ゲームを手がけたのち閉鎖したスタジオの元従業員、「9年越し」に給与が支払われる。元プロ野球選手が立ち上げた夢の後始末
かつて閉鎖した米国のゲームスタジオ38 Studiosの元従業員らに、9年越しに最後の給与が支払われたという。Bloombergが報じている。
同社に関する破産文書によれば、スタジオ閉鎖前に従業員へ支払の義務を負っていた給与について、14%~20%が各従業員に支払われることが6月に決定。最近になって送金が開始された。Bloombergの調べによれば、一部の元従業員に対しては今週にも給与が届いているという。ただし一部の従業員については、スタジオ閉鎖後の転職にともない住居を移していたため、誤って古い住所に送金されてしまったケースもあるようだ。
38 Studiosは、元プロ野球選手のカート・シリング氏によって立ち上げられたデベロッパーだ。シリング氏はMMORPGのファンであり、『World of Warcraft』のライバルとなるようなオンラインRPGの制作を目標に掲げてスタジオを設立。『The Elder Scrolls』シリーズのリードデザイナーを務めたKen Rolston氏らベテラン開発者を擁するBig Huge Gamesを買収するなど、大作の制作に向け意欲的に動いていた。また、スタジオはもともとマサチューセッツ州に立ち上げられたが、2011年に移転。ロードアイランド州から7500万ドル(約82億3000万円)の債務保証を受け取ることを条件に、同州へ拠点を移した。
そして2012年、38 StudiosはPC/PlayStation 3/Xbox 360向けソフト『Kingdoms of Amalur: Reckoning(キングダムズ オブ アマラー:レコニング)』をリリース。ファンタジー世界Amalurを舞台に、戦乱の世を生きるオープンワールドRPGを発売した。同作は発売から90日で120万本を売り上げるヒット作となり、国内でもスパイク・チュンソフトから日本語版が発売された。
『Kingdoms of Amalur: Reckoning』にて一定の成功を収めた38 Studiosだったが、十分な利益を回収するには至らなかった。当時の損益分岐点は300万本であったと報じられている。当時ロードアイランド州から5000万ドル(約54億8900万円)を受け取っていたが、400人規模の従業員を抱え、人件費負担が膨らんでいたこともあり、その資金もわずか1年で使い果たしてしまったという。結局38 Studiosは未払いの債務と従業員への未払い給与を抱えたまま、2012年5月24日に閉鎖へ追い込まれている。それから年月が経ち、当時の従業員は9年越しに給与(の一部)受け取りを果たしたことになる。
ちなみにスタジオ閉鎖後、『Kingdoms of Amalur: Reckoning』のIPは長らく保有者がはっきりしなかった。しかし2018年、THQ Nordicが権利の獲得を発表(関連記事)。その後同作のリマスターを発表し、2020年に『Kingdoms of Amalur: Re-Reckoning』として発売している。PC(Steam)/PlayStation 4/Xbox One向けに入手が可能なため、興味があればプレイしてみるといいだろう。