『ポケモンGO』にて有名配信者たちが「仕様継続」を要求する大規模抗議勃発。Nianticも反応を見せ前進
『ポケモンGO』コミュニティを中心に、大規模な抗議活動がおこなわれているようだ。その目的は「仕様継続」にある。『ポケモンGO』では、昨年より新型コロナウイルス感染拡大を受け、自宅でも遊べるように仕様が変更されていた。しかしながら、今年7月に入ってから一部地域を対象に、そうした“パンデミック期向け”の仕様のひとつが、パンデミック期以前のものに差し戻された。この判断が批判を呼んでおり、 大規模な抗議活動が展開されている。
抗議の焦点になっているのは、ポケストップやジムを回すことができる距離の延長措置だ。同作ではポケストップやジムを回すことで、アイテムやギフトを入手できる。またジムではジムバトルにも参加可能。これらの施設には、プレイヤーの現在地から周囲の一定の距離までアクセスできる。コロナ禍に入ってからの調整によって、これらのアクセス可能距離が伸びていたわけだ。おかげで、一部ユーザーは、通常であれば家からギリギリ届かないポケストップやジムにも、アクセスできていたのである。
このアクセス距離延長はユーザーに大好評であった。Nianticもこの仕様が恒久的なものであると当初予告していたが、昨年10月に恒久的であるという告知を撤回し「限定的なものである」と表明。今年7月末より、ニュージーランドやアメリカといった国を対象に、仕様戻しが実施されたわけだ。仕様戻しは6月に発表されており、批判殺到。Change.orgでは署名活動が展開され、16万以上の賛同が寄せられている。
しかしNianticは、こうした抗議には応えずにいた。海外メディアPolygonから仕様戻しの理由について問われた際には「外出しポケストップやジムを回すことは、世界を探索させることを促すという私たちのミッションを遂行する点で重要」とコメントし、地域の建造物や文化にふれることの重要性を強調していた。『ポケモンGO』公式Twitterアカウントの各ツイートのリプライ欄には日夜、アクセス距離延長廃止への抗議が寄せられている。そしてこのたびインフルエンサーとコミュニティが結託し、公開意見書をおくるはこびとなった。
意見書の内容は、怒り任せに抗議するものではなく、距離延長ボーナスによって生まれたメリットについて丁寧に羅列されている。アクセス距離が伸びたことで、危険な場所や私有地に入り込む必要なく、安全に『ポケモンGO』をプレイできるようになったこと。アクセシビリティ面にもメリットがあるといい、地形や移動設備的に問題がある場所でもプレイしやすくなっていたほか、人混みや対人に恐怖心のある自閉症や感覚障害をもつトレーナーでも安心して遊べることなどを列挙している。
遊び方そのものを安全・安心化させる仕様であり、さまざまな好影響が生まれていたにもかかわらず、元の仕様に戻してしまうことに疑問を呈する旨の意見を投げかけている。NianticのCEOであるJohn Hanke氏が掲げた『ポケモンGO』の核となる理念のなかに「探索」があるとふれながら、アクセス距離延長は探索の要素を損なうものではないと反論しているのだ。社内の協議に時間がかかることに理解を示しつつ、8月9日までの返信を求むとして締めている。
この意見書には、さまざまなインフルエンサーが支持を表明。YouTuberやゲームメディア管理者など、『ポケモンGO』のさまざまなシーンで影響力のあるインフルエンサーたちが、同意見書をSNSなどで投じている。フォロワーを多く抱えたコミュニティの著名メンバーが抗議をしており、かつてない規模の運動となっている。アメリカのTwitterでは、この意見表明とともにつけられたハッシュタグ「#HearUsNiantic」が一時はトレンド入りしていたようだ。
8月6日になり、Nianticはこの運動に反応を見せた。Niantic公式ブログにてコミュニティへの返答を綴った記事を公開したのだ。フィードバックと情熱に対して感謝を見せつつ、アクセス距離ボーナスの削除を決定した経緯を説明。プレイヤーたちに屋外で探索してもらうことで、健康を含めたメリットを感じてほしかったと語った。これから、探索を促進するというミッションを維持しつつ、アクセス距離に関する懸念点に対処できるような方法案を練るためのチームを編成するとコメント。9月1日までに調査結果を公表するほか、コミュニティのリーダーたちと対話する機会を設けるとも明言した。
たかがアクセス距離、されどアクセス距離。『ポケモンGO』を愛するプレイヤーとしては、すでに当たり前になった便利仕様について、削除されることに我慢できないのだろう。それにしても、ここまで大きなムーブメントが起こるという意味では、同作プレイヤーの熱心さが感じ取れる。Nianticが反応を見せるなど、大きな前進を見せた抗議活動。距離延長ボーナスは、このまま継続されるのだろうか。