ゴア描写は控えめながら、独自の要素で個性を見せる微良質実写格ゲー「バトルモンスターズ」について語ってみる
これまで「Underground Gamer」では、さまざまな実写対戦格闘ゲームを紹介してきた。『KASUMI NINJA』や『プライマルレイジ』、『ストリートファイターリアルバトルオンフィルム』など、そのどれもが濃すぎるほどのフレーバーに満ちており、異端の者として絶対的な存在感を放っていた。
しかし筆者は忘れていた。まだAUTOMATON読者の皆々様に紹介していなかったあのタイトルを。その名は『バトルモンスターズ』。セガサターンで1996年にリリースされた実写対戦格闘ゲームで、メーカーはナグザット。現在の加賀テックである。
実写格ゲーと言えば、『モータルコンバット』(以下、『MK』)の存在抜きにしては語れないし、おそらくは『MK』以降に発売された実写格ゲーは、同作の影響を色濃く受けていることに異論の余地はないと思う。『MK』とは、そのくらいインパクトのある作品だったのだ。バトルモンスターズも見た目からして『MK』の匂いがプンプンするし、まごうことなきフォロワーであると断言していいだろう。
ただし本作は、この手の作品ではマストバイとされているゴア描写が控えめだ。攻撃したら流血表現こそあるが、フェイタリティに相当するフィニッシュムーブがない。リングアウトするとハエトリクサに喰われてしまうなど、『MK』でいうところのPitsのようなものはあるが、ゴア度としては控えめな部類に入ると思う。
はっきりいって、ゴアシーンを期待してプレイすると肩透かしを食らうだろう。同じ国産実写格ゲー『大江戸ファイト』の残虐極まりないフェイタリティを見てしまうと、その差は歴然だ。
筆者は以前、この手のジャンルの魅力の9割はフェイタリティに集約されていると言ったような言ってないような気がする。では『バトルモンスターズ』は、無価値な作品なのか? 答えは、否だ。この連載は、ただキワモノゲームを紹介するだけのコーナーではない。その作品が生きた証を後世に語り継ぐという、大事な使命を持っている。ということで、ここからは、筆者が考えるバトルモンスターズの魅力を紹介して、行きた証を示していこうじゃないか。
濃すぎるキャラクターや高低差の概念に注目。格ゲーとしての出来は悪くない
バトルモンスターズという名前からも想像できると思うが、本作の登場人物にまともな人間はいない。というか、人ですらない。怪物だ。ストーリーは、世界を一千年間支配する力を得るべく、魔界の王が開いた競技会に参加する怪物たちの苛烈な戦いを描くという内容である。まあ、こういったダークな世界観の作品にはありがちと言えばありがちな設定だが、そこは深く突っ込まなくてもいいだろう。
バトルに参加するキャラクターは、これまた、一般受けをハナっから放棄したとしか思えない濃すぎるイデタチ。人類っぽい香りのするマカリュードやラ・ファ、シオンなどはいいとして、キ・バ、ストロベリー・ジャム、チリ&ペッパー、ハートヒート・ハーンなどは、筆者を含むボンクラユーザーが「こういうのを待ってたんよ!」とスタンディングオベーションを禁じ得ないほどクレイジーなデザインだ。ハートヒート・ハーンなんてクビが無いし(自分のクビを自分で持ってる)。しかも、これらのキャラクターが実写取り込みで登場するんだからたまらない。筆者と同種のユーザーなら、もうこれらのキャラクターを見ただけでレジに直行待ったなし。
気になるゲーム性だが、日本のメーカーが作っているだけあって、実写格ゲーにしては操作性もよく、必殺技も出しやすい。劣悪な操作性をイメージしてしまうこの手の作品から考えれば、丁寧に作っている。加えて、体力ゲージがロウソクだったり、残りタイムが砂時計で表示されるなど、本作の持つオドロオドロしい雰囲気が、デザイン面から感じられる。はっきりいって、この辺りのセンスは秀逸だ。またBGMも素晴らしく、本作の持つ怪しさを上手く表現していたと思う。
さらにバトルモンスターズをバトルモンスターズたらしめる要素が、高低差を導入していること。オブジェクトに乗ったり、それを壊して邪魔したりなど、ステージのギミックを生かした攻防が熱いのだ。オブジェクトに乗り移る場面などは、横スクロールアクションのそれを感じさせたりするから面白い。
高低差を取り入れた2D格闘ゲームは本作だけではないが、バトルモンスターズは、極めて早い時期にこれを導入した点を評価したい。また、先ほどは喰われる残虐描写が控えめだと言ったが、リングアウトも、バトルの緊張感を倍増させるのに一役買っている。
おそらく開発スタッフも、ただの実写格ゲーでは、『MK』の二番煎じで終わってしまうことを感じていたのだろう。ただのフォロワーに留まらないオリジナリティを出しているという意味では、スタッフの思いは確実に我々ユーザーに伝わっている……と、筆者は勝手に思っているのだが、読者の皆さんはいかがだろうか。
ただ、本作が発売されたプラットフォームは、アクションゲームに対して厳しい目を持つユーザーが多いことでも知られているセガサターン。決して悪い作品ではないのだが、あの『バーチャファイター』に始まり、すぐ後ろには、カプコンの名作2D格ゲー『X-MEN CHILDREN OF THE ATOM』の発売が控えていたこともあってか、大した話題にもならず消えていったのが実に惜しい。
また現在でもそうだと思うが、格ゲーは、まずアーケードで人気が出て、その後、コンシューマに移植されるという流れがあった。つまり、コンシューマに移植される格ゲーは、基本的に一定の支持層を持つタイトルが多いということだ。ましてやサターンは、アーケードからの移植作が活発で、アーケード発のタイトルが家庭用で遊べることがウリになっていた部分もある。特に格ゲーに関しては、同世代プラットフォームの中で一番盛り上がっていたといっても決して大げさではないだろう。よほどの作品でない限り、コンシューマ出身で存在感を出すのが難しい市場である。
とまあ、そんな背景もあって、今やほとんどのユーザーが存在を忘れかけている作品ではあるが、本稿を読んで『バトルモンスターズ』のことを知ったという方は、中古ショップで探してみるなり、動画サイトで検索するなりしてもらえると、筆者としても実に嬉しい。そしていつかは『バトルモンスターズ』のゲーム大会を開いてみたいものだ。