『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』のPS5版の売り方は妥当か否か、海外で議論白熱。次世代機版の売り方のジレンマ

『Ghost of Tsushima Director’s Cut(ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット)』のPS5アップグレード販売方法について、議論が白熱している。ディレクターズカット版を購入しなければ、PS5の独自機能を享受できないからだ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは7月2日、『Ghost of Tsushima Director’s Cut(ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット)』をPS4/PS5向けに発表した。8月20日に発売するという。ディレクターズカット版には壱岐島を舞台とする「壹岐之譚」が追加されると告知され、全世界が歓喜に湧いた。しかし一方で、PS5版の売り方の是非を問う議論が生まれているようだ。


まず基本的な内容をおさらいしよう。『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』のPS4版は税込み7590円(通常版と同価格)、PS5版は税込み8690円で発売される。すでにPS4向け通常版を所有しているユーザーは、2200円でPS4のディレクターズカット版にアップグレード可能。PS4通常版からPS5ディレクターズカット版にアップグレードするには、3300円支払う必要がある。このアップグレード形式に海外で疑問が寄せられている。TechRadarがアップグレードの仕様を批判する記事を書き、RedditのPS5板では同記事を引用したスレッドが立ち上げられ、数多くのユーザーが不満を漏らしている。3700件近くのコメントが寄せられ、意見がかわされている。

新コンテンツを体験するには、相応の対価を支払う必要がある。ゲームを開発するには資金が必要だからだ。そうした意味では、アップグレード版の課金や価格設定は妥当にも見える。しかし問題は、その売り方の形式かもしれない。というのも、今回の売り方では“ディレクターズカット版を購入しなければ、PS5の独自機能を享受できない”のだ。


たとえば、4K解像度オプションや日本語のリップシンク、DualSenseによるハプティックフィードバックやアダプティブトリガーオプション。3Dオーディオの機能、ロード時間のさらなる高速化。これらの要素は、ディレクターズカット版へのアップグレードに3300円を支払わなければ享受できない。

PS4タイトルのPS5向けのアップグレードは、0円かもしくは100円で実施されることがほとんど。また『ファイナルファンタジーVII リメイク』については、100円でPS5版にアップグレードでき、ユフィのエピソードDLCを2178円で購入する形式。次世代アップグレードは安価で提供し、DLCは別途で売る手法だ。一方で『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』の場合は、次世代アップグレードと追加コンテンツがセットで売られているわけだ。


次世代機向けのアップグレードを無料もしくは安価で済ませる方針は、ほかではないSIE側が進めてきたやり方。次世代機を安心して購入させるための試みだろう。PS4向け通常版『ゴースト・オブ・ツシマ』は、PS5でプレイする場合は60fpsで動作する。ベースとなるパフォーマンスは決して悪くない。とはいえ、これまで安価で体験できていた次世代機アップグレードが、追加コンテンツがセットとはいえ、3000円強支払わなければいけなくなったことに対して抵抗感を抱くのは理解できる。

背景としては、次世代機向けゲームの定価が引き上げられつつあることが関係しているかもしれない。開発費高騰にあたって、複数のメーカーが次世代版のゲームの定価引き上げには躍起になっている。Take-Two Interactiveはいちはやく次世代版の定価の引き上げをおこなったほか、全体的に次世代ゲームは定価が引き上げられていることが目立つ。たとえば、PS4で発売された『ラチェット&クランク THE GAME』の定価は発売当時税別5900円であったことに対し、PS5向け新作『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』の定価は税別7900円。前作と比べて、2000円ほど高くなっている。次世代機のソフトの価格を上げようとする意図が垣間見える。『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』は冒頭で述べたように、PS4とPS5版では定価が違う。その価格差の辻褄をつけるには、次世代アップグレードと追加コンテンツをセットにし、ある程度の値段で売らなければならないのだろう。


ゲームによっては、通常版からディレクターズカット版へのアップグレードオプションが、そもそも存在しないケースもある。新しく購入しなければいけないパターンだ。アップグレードオプションが存在するだけでも、ある程度ユーザーフレンドリーであると言えるかもしれない。何よりも『ゴースト・オブ・ツシマ』の新コンテンツ発表が嬉しく、売り方は気にしないというユーザーも多いことだろう。ゲームを開発するにもお金がいるのだ。YouTubeのトレイラーに寄せられた低評価は1300程度。高評価は3万8000程度で大きな批判には至ってない。


いずれにせよ、『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』はこの形態のまま発売されることが濃厚。多くの人々が3300円でPS5向けディレクターズカット版にアップグレードすることになるだろう。そして今後の新作は、PS4版とPS5版は別価格で売られることが主流になりそうだ。そうなった時は、少なくともPSプラットフォームに関しては、次世代アップグレードをする際には、その差額を支払うことになるだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

Articles: 5172