『ウォッチドッグス レギオン』「ブラッドライン」プレビュー。エイデンとレンチが躍動するファン感涙のDLC
『ウォッチドッグス レギオン』は、すべての市民を操作できるという野心的な試みを軸にした、Ubisoftが手がける人気シリーズの最新作である。近未来のロンドンを舞台とすることで、シリーズの根幹にあるハックする楽しさを発展させたオープンワールドゲームだ。7月6日より配信されるストーリーDLC「ブラッドライン」では、1作目の主人公エイデン・ピアースと、2作目の主要キャラであったレンチがプレイアブルキャラクターとしてロンドンを暗躍する。
本稿では、UbisoftよりPC版「ブラッドライン」先行プレイの機会を頂いたので、その概要とインプレッションをお届けする。なお、ストーリートレーラーで明かされている以上の物語に関するネタバレは含んでいないので安心してほしい。
『ウォッチドッグス レギオン』本編では、すべての市民を操作できることが大きな特徴だったが、「ブラッドライン」では基本的にエイデンとレンチを操作することになる。ざっくりいうとメインストーリーの前半がエイデン編で、後半がレンチ編だ。両者のストーリーは繋がったものであり、キャラクターの切り替わりも違和感のない整合性の取れたものである。メインストーリーのほかにはいくつかのサイドミッションが用意されており、それらをクリアすることで、新たな武器やハッキング能力が手に入るといった具合だ。サイドミッションの数自体は多くはないため、開放された時点でクリアすることをおすすめする。その後のメインストーリーで有利になるのはもちろん、シリーズファンであれば嬉しい展開や演出が盛り込まれているからだ。なおサイドミッションを網羅しつつプレイしたところ、所要クリア時間は10時間弱であった。
また、「ブラッドライン」の時系列は『ウォッチドッグス レギオン』の本編でチュートリアルを兼ねていた爆破事件の直後、デッドセック・ロンドンが再び立ち上がる前を舞台としている。オンラインモードと同様に独立したセーブデータを持つものであり、本編の進行状況を問わず開始できる上、簡単なチュートリアルもある。そのため、本編を遊ばずにいきなり「ブラッドライン」から始めても、無理なくプレイ可能だ。
エイデン・ピアース
<パッシブスキル>
・フォーカス
敵をテイクダウンした直後にスロー照準になる。
・ガンスリンガー
リロード時にタイミング良くもう一度リロードボタンを押すと、15秒間ダメージが上昇する。
<ガジェット>
・システムクラッシュ
エリア内の電子機器を無効化する。
初代『ウォッチドッグス』は、キャップとロングコートが印象的なエイデン・ピアースを主人公に据えたオープンワールドゲーム。舞台となるのは、都市インフラが「ctOS」と呼ばれるシステムにより支配されている2013年のシカゴだ。姪を死に追いやった真相に迫る物語は、エイデンの姿と同様にダークな雰囲気を孕むもので、全体的にハードボイルドな作品に仕上がっている。一作目『ウォッチドッグス』から16年経った世界が舞台の「ブラッドライン」では55歳と初老にも関わらず、エイデンのハッキング能力と近接格闘術は衰えていない。エイデンを象徴する特徴は数多いが、その一つである警棒を用いた近接格闘は「ブラッドライン」でも健在だ。また、『ウォッチドッグス』の物語を思い起こさせるガジェット「システムクラッシュ」を使えば周囲の電子機器が一斉にシャットダウンされ、敵地に攻め込む際や、逃走中に有効だ。
【UPDATE 2021/07/13 11:45】エイデンの年齢を訂正。
また、物語の中では、エイデンを伝説の人物として扱うキャラクターも登場する。ストーリートレーラーではレンチがエイデンの姿を見て一瞬動きが止まるシーンがある。エイデンはシカゴの伝説ハッカーとしてデッドセックメンバー誰もが知る存在なのだろう。サイドミッションで登場するキャラクター達も、エイデン・ピアースの存在に驚きや憧れを見せ、エイデンを操作していると鼻が高い(?)。
レンチ
<ガジェット>
・セルゲイ
上に乗って操作することができ、グレネードランチャーを発射可能なカスタムドローンを呼び出す。
・ニンジャボール
スタングレネード。煙と光で敵をスタン状態にする。
一方のレンチは、『ウォッチドッグス2』でデッドセックのメンバーとして登場するキャラクターだ。ボイスチェンジャーを利用した声や、顔を覆うマスクに搭載されたスクリーンに映る顔文字で表情を示す謎めいた風貌が特徴的な、コミカルでお調子者のハッカーだ。『ウォッチドッグス2』は一作目と比較して雰囲気を大きく変え、開放的で明るいキャラクターを正面に置いた物語が展開された。その中でもひときわ目を引くレンチだが、そのキャラクター性は「ブラッドライン」でも十二分に発揮されている。落ち着いた雰囲気のエイデンとは対をなす存在であり、物語の要所で二人が会話しているだけでもシュールさが感じられる。
また、近接攻撃として彼の相棒であるスレッジハンマー「レディ・スマッシュ」を振るうのはもちろん、一部の銃には敵の体力を削る通常の性能に加え、ハックする能力が付与されている。これは発砲すると周囲の電子機器をクイックハックすることができ、トラップを爆破したり、クルマを動かしたりと、戦局にカオスを巻き起こす。ただし、プレイヤーの意思に関わらず自動でハックされるため、実用性があるかは疑問だが、レンチらしさがあふれる武器だ。これらの武器を始めとしたレンチの装備品が、エアロゾールアートで彩られているのも『ウォッチドッグス2』の作風を思わせる。
基本的なゲームプレイは本編とさほど変わらない。ドローンを操ってctOSハブやサーバーからデータを得るほか、敵のリーダーを無力化するといった、シリーズを通してお馴染みのものが用意されている。敵地へ潜入する際は、まずセキュリティカメラやドローンを使って、敵の位置や情報を探り、戦況を理解する。それに応じてトラップを設置し、音を立てて敵の気を引き、背後からノックダウンを狙う。ステルスゲームの基本を踏襲しつつ、ハッキングを軸とした戦略の組み立てはシンプルに楽しい。「いかなる犯罪も見逃しません」という街頭宣伝の機械音声を聞きながら、背後からアルビオンの兵士を次々と無力化していく爽快感は格別だ。不用意に敵の眼前へ飛び出すとたちまち蜂の巣にされる、メリハリのあるバランス調整も、ステルスプレイに緊張感を与えている。ただし、腕に自信があればエイデンのスキル「ガンスリンガー」を駆使して正面突破/ランボープレイをするのも良い。
物語の中でジョルディ・チンや、スカイ・ラーセンといった、シリーズで記憶に残るキャラクターたちが登場するのも、ファンにとっては大きな魅力だろう。「ブラッドライン」だけプレイしていると一見モブキャラかと思うかもしれないが、実はゲーム本編でも登場するキャラもいて、もう一度シリーズを振り返りたくなる。
なお、『ウォッチドッグス レギオン』のシーズンパス所有者であれば、1作目の本編とDLCがセットになった『ウォッチドッグス コンプリートエディション』を追加料金なしで手に入れることができる。エイデンの出自である作品を知っておけば、「ブラッドライン」の物語への理解もより深まるはずだ。
筆者はシリーズのファンであり、エイデン・ピアースのロングコートに強い影響を受けている。筆者にとってファンサービス旺盛な「ブラッドライン」は非常に楽しいもので、同シリーズのキャラクターの魅力を再認識することができた。また、操作キャラクターによってゲームプレイや物語の雰囲気がガラッと変化する点にも驚かされる。エイデンを操作していれば、どことなく暗く落ち着いた雰囲気でことが進んでいくし、レンチを操作する場面では、開放的でアーティスティックな気分になる。対極にある2作品のキャラクターと雰囲気を混ぜ込み、ロンドンを舞台に美しいグラフィックと優れた操作感覚の中で果たすエイデン・レンチとの再会は、ファンであれば是非体験しておきたいものだ。