なぜBlizzardはキャラ選択型FPS『Overwatch』を“Free-to-Play”にしなかったのか?「試合中のヒーローの切り替えがコアになっている」
先週末に開催された「BlizzCon 2015」にて、Blizzard Entertainmentはチーム対戦型マルチプレイヤーFPS『Overwatch』を「パッケージモデル」にて販売すると発表した。『Overwatch』には複数のプレイアブルキャラクター(ヒーロー)が存在しており、それぞれが異なるアビリティや能力、外見や素性を持っている。その他にも『League of Legends』あるいは『Team Fortress 2』と似た要素を持つだけに、おそらく多くのメディアやプレイヤーは『Overwatch』は“Free-to-Play”(以下、F2P)を導入すると予想していたのではないだろうか。
競技性のあるオンラインマルチプレイヤータイトルでは、プレイヤーベースを増加させるため基本無料プレイを導入し、追加キャラクターなりスキンなりを有料で販売するのが現在の主流だ。なぜBlizzard EntertainmentはF2Pではなくパッケージモデルを選択したのか。『Overwatch』のゲームディレクターJeff Kaplan氏が海外メディアPolygonやKotakuのインタビューに応え、その理由を語っている。
“ヒーローの切り替え”がコアにある
『Overwatch』は6vs6で戦うチーム対戦型のマルチプレイヤーFPSだ。プレイヤーはチーム内で同じヒーローを選択することはできないが、試合中にヒーローを選択し直すことが可能である。Kaplan氏によればこの「ヒーローの切り替え」が『Overwatch』におけるコアであり、ほかのゲームとの差別化に当たる部分なのだという。「『Overwatch』とほかのゲームの違いは、自チームの組み合わせや相手チームの戦い方に合わせることができる“流動性”だ」。
そしてKaplan氏が開発チーム内で検討した結果、ヒーローを購入するようなタイプのF2Pを導入すれば、このコアゲームプレイを変化させ制限してしまうとの結論に至ったようである。
Valveの『Team Fortress 2』を想像すると、確かにわかりやすいだろう。12人のチームのなかで、スパイやエンジニア、メディックなどの特殊なクラスにアクセスできないプレイヤーが半数以上もいれば、チームは柔軟に戦略や構成を変えることが難しくなる。ただ、たとえば『League of Legends』のように基本的な役割や操作性を持つヒーローを無料で提供し、異なる特殊な性能のヒーローたちはアンロックできるというF2Pモデルも導入することもできたはずだ。Kaplan氏はこの点に関し、プレイヤーに“不利”を感じさせたくなかったと続けている。
(ヒーロー切り替えのコア要素を)支えるために、全員が21人のヒーローを持っている必要があったんだ。タンクが1人、サポートが1人、レンジキャラクターが1人みたいな感じではない。君は様々なタンクやその他を所持している。みんなが「こっちはすごい不利だ」と感じてしまわないよう、十分な選択肢を提供したいんだよ
一方でKaplan氏は、『Overwatch』の発表があった1年前ごろ、Blizzardは同作のビジネスモデルや市場における立ち位置をまだ決定していなかったと明らかにしている。伝統的なパッケージモデルか、それともFree-to-Playを導入するのかに関して、同社のゲームを含め他作品の様々な例を参考にしたという。Blizzardはすでに『Heroes of the Storm』や『Herathstone』といったF2Pタイトルを有しており、それゆえに『Overwatch』のパッケージモデル導入には多くの議論を交わしたようだ。
有料コンテンツ、追加ヒーローについては“未定”
21人すべてのヒーローが購入者に提供されるとはいえ、今後登場する新規ヒーローも無料で提供されるのか、あるいはBlizzardお得意の拡張パックか有料DLCのようなスタイルで販売されるのかは気になるところだ。Kaplan氏はこの点に関して、いかなるメディアに対しても明確な返答を返しておらず、有料コンテンツに関しても追加ヒーローの登場に関しても現時点では確定されていないことを強調している。
キャラクターの有料スキンなどであればゲームバランスに影響はでないが、新規ヒーローを有料で販売するとなれば、Kaplan氏が前述したようにキャラクター選択の面で制限が生まれてしまうことになる。一方で新規ヒーローを収録した拡張パックやDLCは、プレイヤーたちの目に魅力的に写るだろう。このさじ加減をどうすべきなのか、Blizzardでは現在も議論が交わされているのかもしれない。