『Jazzpunk』 解説不能のジャズ・パンク・スカム

2014年2月8日に Steam でリリースされた『Jazzpunk』は、一人称視点で進行するアドベンチャーゲームです。開発元は Necrophone Games。Steamでタグ「独立系開発会社」がついている一方で、パブリッシャーには Adult Swim Games がついています。

Adult Swim は元々 Cartoon Network において大人向け(ポルノではない)番組を配信する一枠として生まれたブランドで、現在ではゲームをふくむ多方面へ展開しています。本家で放映されたアニ メ作品は”奥の深い”ものが多いところが特徴的。代表的な作品の1つ『Aqua Teen Hunger Force』の日本語版 DVD は国内 Amazon での取り扱いもあります。

そんな Adult Swim の名を冠する Adult Swim Games のラインナップと方向性はどのようなものなのか? についてはサイトを半時間も眺めていただければ十分でしょう。ビビッド・プリミティブ・エキサイティング。なるほどたしかに「アダルト」といえましょう。

そして、『Juzzpunk』はその1つです。間断なく押し寄せるシュールな笑いは、その絵面だけでも相当な価値があります。

 


前提: 笑いのすべてを理解するのは困難

 

本インプレッションを書くべきか否か、プレイ後1か月ほど悩んでいました。理由は単純で、このゲームの楽しさを完全に理解したとは到底思えなかったからです。

まず、私自身の根本的に英語能力の低さがありました。字幕があるとはいえ、(おそらくは面白さを出す上に必須の)難解な単語がしばしば登場し、そのたびに急いで辞書をひいていたのです。そんな状態で「ギャグをきちんと笑え」というのは難しいものがあります。

つぎに、知識的な問題。やはりというべきか、本作は『モンティ・パイソン』に影響を受けているそうです。私とて『モンティ・パイソン』をまったく知らないというわけではありません。しかし、「ああ、このギャグの元ネタは……」とはなれませんでした。

私の不勉強がゆえではありますが、日本人の大多数が背負う十字架でもあります。ただし。それでも『Juzzpunk』のジョークは間違いなく笑えました。

 

ゲーム冒頭の一幕。 やれることは「雑誌を手に取る」だけ。
ゲーム冒頭の一幕。やれることは「雑誌を手に取る」だけ。

 


解説できない

 

『Jazzpunk』はゲームとしてはきわめて平凡で、「ファーストパーソンアドベンチャー」とでも呼ぶべき内容です。一人称視点でひたすらフラグを探してまわり突き進むだけ。とくに推理や読解が必要になるケースはなく、とにかく頭を使いません。

ではこのゲームの価値はどこにあるのかというと、上述のとおり「笑い」にのみ特化しているとして過言ではありません。適当に探索して適当に NPC に話しかけるだけでもいちいち楽しませてくれます。なるほどと思えるものから、いくらなんでもゴリ押しすぎるだろうというようなものまで、その守備範囲は 広範です。

ここで問題になるのは、至極当然のことではありますが「ジョークを解説するほど無粋なことはない」という事実。あのシーンのどのネタがなぜ面白かったのか、それをここで一つ一つ挙げていくことはそれはじわじわと本作の価値を削ることにほかなりません。

 

解説したら終了してしまう一例。
解説したら終了してしまう一例。

 


面白さの性質

 

本作はタイトルにあるとおり、ジャジーな BGM に(サイバー)パンクな世界観が広がっています。しかし、その核心はどちらかというとごった煮のスカム気質寄りです。唐突な展開、意味不明なセリフ、いき なり始まるミニゲーム等々。あえて近い DNA の持ち主を探すとしたら『Revenge Of the Sunfish』、国内の作品では『花と太陽と雨と』あたりでしょうか。ちなみに、とくに理由はなさそうですが『がんばれギンくん』なんかも連想しました。

また、最近の作品でたとえると『The Stanley Parable』を遠縁の親戚あたりのなにかと説明することもできます。『Jazzpunk』にはマルチエンディングもありませんし、そもそも面白さの向きが異なっていますが、「一人称で探索してる間とにかく笑わされてしまう」という一点では共通しています。

日本国内におけるメジャーな笑いの構文には則っていません。ただし面白さがまったく伝達されないほど複雑怪奇な背景をふまえているわけではありません。少しばかり文化の違いがあるだけであって、理解の壁をまったく乗り越えられないということはないでしょう。

なお、本作は(なぜか)日本ネタが大量に織り込まれていることも特筆すべきです。1ステージまるまる日本ネタにするだけではあきたらず、ときおり ビーンボール寸前の軌道で投げこまれます。こちらについては、逆に「日本人にしかわからないキッチュ日本観にたいする笑い」を感じ取れることでしょう。日 本人の特権です。

 

無粋を承知で一枚だけご紹介。 おそらく筆者が作中でもっとも笑ったシーン。 主人公の名前は”Polyblank”。緑色の野生児”ブランカ”とかかっています。 とある”ホンダ”車については半ば説明不要でしょう。”somE.”。 1P側に通常壊されるはずのクルマが居座っているのもポイント。
無粋を承知で一枚だけご紹介。

おそらく筆者が作中でもっとも笑ったシーン。

主人公の名前は”Polyblank”。緑色の野生児”ブランカ”とかかっています。

とある”ホンダ”車については半ば説明不要でしょう。”somE.”。

1P側に通常壊されるはずのクルマが居座っているのもポイント。

 


絶対に人には薦めないけれど

 

『Jazzpunk』は奇抜なゲームです。無条件でプレイを推奨してくる人間がいたら、きっと信用に値しません。本作は「人を選ぶ」どころか、「創り手が選んだプレイヤー以外の方角を向いていない」域に到達しています。ゆえに、私はこの作品をお薦めはしません。

ただ、それでもなおプレイする価値は揺らぎません。クリアまで4~5時間、15ドル。真価を認識できずとも、プレイするアッパー系ドラッグゲームと して『Jazzpunk』は燦然と輝きつづけることでしょう。あなたがゲームに飽いているのならば、触ってみて損はありません。それに、本物のドラッグと 違ってリプレイ性はそんなに高くありませんので。

 

 

トレイラー。これでピンときた方はぜひ。


[ネタバレ含] 日本ネタスクリーンショット集

 

先にお話した日本ネタについて、撮影していたスクリーンショットをいくつか羅列します。内容が内容だけに物語的にもギャグ的にもスポイラーになりか ねないのでご注意ください。あくまでも本作の魅力を少しお伝えすることを目的としています。とはいえ、これだけでは『Juzzpunk』の1%にも満たな い気がしますが。

 

言いたいことはわかるがお前はいったい何を言っているんだ。
言いたいことはわかるがお前はいったい何を言っているんだ。

 

ロシアにあった公衆電話。
ロシアにあった公衆電話。

 

言いたいことはわかるがお前はいったい何を言っているんだ2。
言いたいことはわかるがお前はいったい何を言っているんだ2。

 

いや、それは、ないでしょ。
いや、それは、ないでしょ。

 

そんなものは存在しない。
そんなものは存在しない。

 

ヤキトリかインバーターかはっきりしてくれ。
ヤキトリかインバーターかはっきりしてくれ。

 

そうか、そういう発想か。
そうか、そういう発想か。

 

おまえのようなイタマエがいるか。
おまえのようなイタマエがいるか。

 

日本製かな?
日本製かな?

 

いくらなんでも直球すぎやしませんか。
いくらなんでも直球すぎやしませんか。

 

そうか。そうだな。
そうか。そうだな。

 

Nobuki Yasuda
Nobuki Yasuda
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