Steam対応携帯型ゲームPC「SMACH Z」開発元が破産寸前であると報告。製品発売の「可能性は低い」
クラウドファンディングにて資金を集めて開発が進められていた、Steam対応ポータブルゲーミングPC「SMACH Z」。なかなか出荷が開始せず出資者をやきもきさせているなか、スペインに拠点を置く開発元SMACH Teamが、破産寸前の状況にあることを明かした。海外メディアHEXUSや国内のGame*Sparkなどが報じている。
SMACH Zは、ゲーム用途に特化したポータブルPCだ。もともと、Steam Machineプラットフォームを採用する携帯ゲーム機「Steamboy」として2014年に発表され、その後SMACH Zに改名。Windows OSへの対応も追加された。ディスプレイの左右に操作系を配置し、Steamコントローラのような丸いタッチパッドZ-Padを備えることが大きな特徴だ。Z-Padを十字キーやさまざまなレイアウトのボタンに変化させる、アタッチメントを用意する構想も示されていた。
開発元SMACH Teamは2016年、SMACH Zの製品化を目指してKickstarterとIndiegogoにてクラウドファンディングを実施。合わせて約3300人から約1億4400万円を得ることに成功した。また、のちに公式サイトにて予約販売もおこなっている。当初は、2017年4月に出資者向けに製品の出荷を開始し、2017年末あるいは2018年初頭に一般販売をおこなうとしていたが、延期を重ねることに。
これまでの間には、E3や東京ゲームショウなどのイベントにてプロトタイプを披露し、さらなる予約購入者を集めていた。ただ、肝心の製品は一向に発売されず。続報も途絶えがちになり、昨年中頃からは業を煮やした出資者からの返金リクエストが相次ぐこととなる(関連記事)。
SMACH Teamの代表者Daniel Fernandez氏は今年5月12日、公式フォーラムにて声明を発表し、同社が間もなく破産する可能性があることを明らかにした(Reddit)。個人投資家がプロジェクトから手を引いたことが原因だという。先述したクラウドファンディングなどからの資金は、プロジェクトの立ち上げには大いに役立ったものの、その後はほぼ個人投資家からの資金によってプロジェクトを継続していたそうだ。
Fernandez氏は個人投資家を失った主な原因として、まず新型コロナウイルスの感染拡大を挙げている。SMACH Zの製造における最後の詳細を詰めている時期と重なってしまい、製造パートナーを中国から地元スペインの会社に変更。これにより、主要な製造工程の計画がリセットされるかたちとなってしまった。
また、欧州での販売に必要なCEマークの取得に失敗したことも挙げている。充電器に何らかの欠陥があると指摘されるも、製造元は問題ないと主張。その解決のために、さらに資金が必要となったそうだ。また、テスト用に製造した200台のSMACH Zにて、一定の条件でバッテリーが発熱する問題が発覚し、さらなる改善が求められた。
こうしたトラブルと度重なる発売延期によって、なかなか収益を生むことができないでいたことで、個人投資家はこれ以上プロジェクトを支援し続けることはできないと判断したのだろうとFernandez氏は述べている。先述した返金リクエストも、個人投資家からの資金で対応していたという。
気になるSMACH Zの発売についてFernandez氏は、「言いにくいことではあるが、実現の可能性は低いと考えている」と述べる。SMACH Teamが破産するまでには数か月の猶予があるという。この間に新たな投資家を見つけることができれば、少なくとも予約購入者の分を製造し、その後の展開に繋げていくことが可能かもしれず、希望は持っているものの、実際の状況は厳しいとのこと。
そして、最終的にもし破産した場合は、残った資産を売却して返金対応をおこなう考えを示している。公式サイトでの予約購入者を優先して対応するとのこと。具体的な返金時期や返金金額については、現時点では何も約束できないとしている。
近年は、ゲーム用途に特化したUMPCがさまざま登場。SMACH Zが発表されてから現在に至るまでには、たとえばGPD TechnologyはGPD WINシリーズを3機種もリリースしている。こうした周囲の状況は、SMACH Zの出資者・予約購入者のフラストレーションを高めることにも繋がったかもしれない。
SMACH TeamのDaniel Fernandez氏は、産業界での経験不足を認めている。そして、SMACH Z製造における大事な時期でのトラブルや、外部パートナーへの依存度が高かったことなどによって、破産寸前の状況に至ってしまったと振り返る。また、個人投資家はこれまでにクラウドファンディングで得た資金以上を拠出しており、金銭にまつわる不正はないともコメントし、理解を求めた。今後プロジェクトに進展があれば、随時情報を共有するとのことだ。