ゲームボーイ風アクション『助けてタコさん』ディフィニティブエディションが5月6日配信へ。ストア削除を乗り越え、より遊びやすく大改善

インディーゲーム開発者のChristophe Galati氏は4月6日、『助けてタコさん』のディフィニティブエディションを5月5日に配信すると発表した。『助けてタコさん』は、昨年よりニンテンドーeショップ・Steam双方で入手不可能の状態が続いていた。

インディーゲーム開発者のChristophe Galati氏は4月6日、2Dアクションゲーム『助けてタコさん』のディフィニティブエディションを5月5日(日本時間5月6日)に配信すると発表した。対応プラットフォームはPC(Steam)およびNintendo Switch。本作は、昨年よりニンテンドーeショップ・Steam双方で入手不可能の状態が続いていた(関連記事)。 
 

 
『助けてタコさん』は2018年に配信された、ゲームボーイ風2Dアクションゲームだ。舞台は、人間とタコが対立し激しい戦争が繰り広げられている世界。主人公の小さなタコは争いを解決するための旅に出る冒険譚となっている。ゲームボーイ時代の美術や古き良きJRPGへのリスペクトが込められており、ノスタルジックなデザインや可愛らしいキャラクターが好評を博していた。 

一方、その難易度については賛否両論となっていた。前触れなく現れる敵や、数フレームずれただけで落下する崖など、理不尽として難易度設計を指摘されることに。Galati氏は本件について、4年間にわたる開発期間のなかで自身がゲームの難易度を実感することができなくなっていたと説明。結果的に、『星のカービィ』風のポップな雰囲気のアクションを期待していたプレイヤーにとってはストーリーが重々しく、逆にJRPGなどを好むプレイヤーにとってはアクションが難しすぎるという状況に陥っていた。批判の声を受け、Galati氏は改善に着手。『助けてタコさん』の配信やレビューの研究を重ね、難易度を調整したパッチを作成した。 

しかし、このパッチの配信についてトラブルがあった。Galati氏の側で改善版のパッチが完成したにもかかわらず、パブリッシャーNicalisからパッチが配信されなかったのだ。多くのプレイヤーからアップデートの要望が寄せられる中、Galati氏はNicalisの動きの遅れに対しフラストレーションを表明。そして2020年11月、『助けてタコさん』2周年のタイミングでGalati氏とNicalisはパートナーシップの解消を表明。互いに合意のうえで円満な別れに至ったとしつつも、結局パッチは配信されずじまいとなる。そしてPC版・Nintendo Switch版の双方がストアページから削除され、本作を入手することが不可能となっていた。このときGalati氏はすでに、いずれパッチを適用した状態にて同作を再リリースする意向を示していた。 
 

 
このたび新たに配信されるディフィニティブエディションは、Nicalisのもとを離れた新たなかたちでリリースとなる。PC版についてはGalati氏がセルフパブリッシングする一方、Nintendo Switch版はパブリッシャーのLimited Run Gamesがプロデュースすることとなる。なお、昨年11月まで配信されていた旧作を所有しているユーザーでも新たに別途購入する必要があるとのことだ。この点についてGalati氏は強い遺憾の意を表明。もともと作成していたパッチは、パブリッシャー変更にあたり旧作がストアから削除されたことで、配信不可能に。旧作所有者に対し特別割引が適用できないかValve・任天堂に問い合わせたものの、叶わなかったようだ。Galati氏はユーザーに謝罪するとともに、再購入するに値するクオリティでのリリースにするとの意志を込めて「ディフィニティブエディション」と題したという。 

ディフィニティブエディションの具体的な変更点としては、まず物理挙動が改善されている。オリジナル版においてはドアとの衝突判定やNPCの不具合、無敵時間のフレームグリッチなどが存在し、理不尽な死につながっていた。こうしたプレイヤーにフラストレーションを与えるバグが数多く改善されているという。またタコが空中から落下するスピードもゆるやかになり、ジャンプの挙動がより快適なものになっているそうだ。 
 

 
さらに、もうひとつの大きな不満であったカメラについても手が加えられた。旧作ではつねにタコが中央に位置するようにカメラが追尾しており、上方からの危険が見えにくいという欠点があった。新バージョンではタコよりもやや上にカメラが設定されるほか、小ジャンプ時には追尾しないなどの調整が図られている。また画面下方を見下ろすだけでなく、上方に視点を動かしてステージを確認することもできるようになったそうだ。 

ほか、イベントカットシーン中もタコが操作可能である問題についても言及。こちらはもともとスピードランナーがイベント中も攻略を進められるように施した仕様だったが、結果としては多くのプレイヤーがイベント中に死亡する事態を招き、不満の一因となっていた。ディフィニティブエディションでは、カットシーンの間はタコ・敵・ギミック等が一時停止し、死亡する危険がなくなっている。また、死亡時のフェード速度を落とすことで、ミスの原因を目視しやすくするなどの調整もされているようだ。さらに帽子システムにも変化が加えられた。帽子をすでに被っている状態のとき帽子を取りかえやすくなったほか、チェックポイントのアニメーションがより明確になったため、装備の着け忘れにも配慮が行き渡っている。 

レベルデザインについても工事がおこなわれたようだ。数多くの敵が再配置または削除されており、理不尽な死が排除されているという。ゴーストやクモなど不満を集めた敵についても改善が試みられているほか、多くのプレイヤーが挫折した墓場ステージでは、敵の攻撃をかわしやすくする帽子が配置されているそうだ。後半のステージから後戻りするためのショートカットが追加されていることに加え、一部ボスの難易度についても言及。やや難易度が緩和されたほか、相手の被ダメージアニメーションも、よりわかりやすくなったとのこと。ほか、衝突判定のないオブジェクトから黒縁を削除する、ゲームオーバー後にボス戦へ戻るためのショートカット用の泡に出現アニメーションが追加されるなど、難易度曲線をゆるやかにするための調整が施された。 
 

 
既存要素のブラッシュアップだけでなく、新機能についても明かされている。残機や体力数などを調整できる難易度選択を追加。一撃死回避やハート回復が存在する「ハートモード」「スタンダードモード」に加え、旧版の難易度に相当する「クラシックモード」も存在。こちらは古き良きゲームボーイ作品のように歯応えのある難易度となっており、クラシックをクリアすることで報酬を得られるサイドクエストも用意されているようだ。またプレイヤーの迷子を防止するヒントも追加。会話シーンを見やすくする、HUDを改善するなどQoL面も洗練されているようだ。オプションからフラッシュをオフにするモードや、ステージごとに画面の色合いを変えるオートパレット機能も搭載された。このほかサウンドテストや隠し要素、実績の追加など、「やりたかったことはほとんど実装できた」と語られている。 

賛否両論を受けつつ、ファンから再配信を望む声も多かった『助けてタコさん』。このたび、期待に応えるかたちで新たなお目見えを果たすことができる見通しだ。『助けてタコさん』ディフィニティブエディションは、2021年5月6日にSteamおよびNintendo Switch向けに配信予定だ。 

【UPDATE 2021/04/06 18:04】
弊誌から開発者のChristophe Galati氏に問い合わせたところ、『助けてタコさん』ディフィニティブエディションのNintendo Switch版は、日本でもリリース予定があるとのことだった。ただし現在日本語ローカライズを進めている最中であり、発売時期については他地域より遅くなるという。国内のファンは、日本語版の到着を楽しみに待っておこう。

Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

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