オンラインイベントとなるE3 2021にて「有料コンテンツが検討されていた」と報道され物議醸す。主催者は否定するも不安の声
毎年6月に開催されている世界最大級のゲームイベント「E3(Electronic Entertainment Expo)」。昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて開催が中止され、各メーカーのオンラインイベントへの移行を後押しするかたちとなった。一方で主催団体のESA(Entertainment Software Association)は、「E3 2021」については開催への意欲を見せている。具体的な開催プランはまだ明かされていないが、これについて「有料コンテンツ」に関する噂が飛び交い、ESAが反論する事態となっている。
E3 2021について、ESAは2021年6月15〜17日に開催することを昨年4月に発表している。ただ、今年2月になってアメリカ・ロサンゼルス市が、例年E3の会場となっているコンベンション・センターの予約状況を更新し、E3 2021では来場者を伴うイベントがキャンセルされたことを報告。この時点では、会場から何らかの放送をおこなうかたちでのイベントを模索中だとされている。なおESAからは、開催プランについて正式な発表はまだない。
その開催プランについて海外メディアVGCは4月1日、複数のパブリッシャー関係者からの情報を元に、E3 2021は「Electronic Entertainment Experience」とブランドを変えオンラインイベントとして開催されると報道。さらに、ESAは一部のコンテンツについて有料(35ドル)のアクセスパスを販売することを検討していたと報じた。
有料コンテンツの内容としては、新作ゲームの体験版のプレイが挙げられており、プレイ環境としてNVIDIAのクラウドゲームサービスGeForce Nowとの提携が模索されていたという。また有料かどうかは不明だが、メーカーの出展ブースをバーチャルで訪れる体験も検討されていたとのこと。ただ、そうした有料プランに対しては批判の声が多かったため、ESAは各パブリッシャーに対し、提案を取り下げる考えを伝えたそうだ。
今回の報道を受けてESAは4月2日、今年のE3はオンラインイベントとして開催するとした上で、誰もが無料で参加できると表明。そして、同イベントに関する“リアルなニュース”を近日中に届けるとコメントした。またVGCに対しても、E3 2021には有料のコンテンツは存在しないとの声明を出している。
ESAの声明からは、VGCの報道をフェイクニュースと位置付けているかのような印象を受けるが、報道の真偽は不明。ただ、VGCは業界の内部情報に強いメディアとして知られており、海外のゲーマーやほかのメディアから一定の信頼を得ている。もっとも、E3の有料コンテンツについては、各メーカーに提案されたものの後に撤回されたようだと報じられているため、結果として完全無料のイベントになったということかもしれない。
もともとE3は有料のイベントであり、来場者はチケットを購入して、各メーカーの新作などに触れることができた。そうした特別な体験を、オンラインイベントにおいても模索するということは考えられないことではないだろう。たとえば、今年の東京ゲームショウはオンラインイベント「TGS2021 ONLINE」として開催予定だが、プレス・インフルエンサー向けのリアル会場も別途用意。そして、会場にあるメーカーの出展ブースをバーチャルで訪れることができる、オンライン体験ツアーが有料で提供される。
ただ、昨年からさまざま開催されてきた各メーカー・メディアのオンラインイベントでは、基本的に誰もが無料ですべてを視聴でき、またSteamで実施されている体験版配信・開発者交流イベントも無料で参加可能だ。今回のE3の有料コンテンツの報道を受けて、海外フォーラムResetEraなどでは、批判というよりも呆れたような意見が多く寄せられている。
また、上述したSteamでの体験版イベントの発起人であり、昨年開催された多くのオンラインイベントのサポートをおこなったGeoff Keighley氏は、今年の各イベントは無料で体験できると念押しするコメントをしている。同氏の「Free To Play」という短い言葉には、皮肉やジョークが込められているのかもしれない。ちなみに、SteamではE3 2021の開催期間中に、「Steam Nextフェス」としてふたたび体験版イベントが実施される予定となっている。
オンライン開催となるE3 2021の詳細は近日発表予定とのこと。今年も各メーカーが自らオンラインイベントを開催することが予想される中で、どのように独自性を打ち出していくのか注目される。