Steam高評価ノベルアドベンチャー『a new life.』に“自然な”有志日本語登場。淡い物語をより淡く
PC版『a new life.』に有志日本語化ローカライズが登場したようだ。Twitterユーザーである朝比奈氏は2月28日、noteにて有志日本語化ファイルを公開した。まず当該ファイルをダウンロードし解凍。指定場所に置くことで、既存の日本語ローカライズが有志のものへと刷新される。
『a new life.』は、短編アドベンチャーゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)とAndroid/iOS。主人公となるのは、クールでしっかりもののAugustと、かわいいもの好きなおっちょこちょいのMay。大学生である彼女たちは、それぞれの学生生活を楽しんでいた。まったく性格の違うふたりの女性は、ふとしたことをきっかけに距離を縮めていく。プレイヤーはある時はAugust、またある時はMayになり、言葉を選びながら気持ちを伝えあう。
本作は、AugustとMayの関係性をふたりの会話で描く。恋に落ちた瞬間だけでなく、その後の行方が生涯レベルで描かれる。テキスト量もそれほど多くなく、会話もシンプル。しかしながら、開発者であるAngela He氏の描く美しいイラストと物語を彩るLo-Fiなどのサウンド、それらによって表現される演出は、プレイヤーの心を強く揺さぶってくる。水彩のように淡いタッチで描かれる絵は、AugustとMayの関係性の儚さも表現しており、美しくも消えてしまいそうな世界を泡沫がごとく描き出している。
『a new life.』は、短編アドベンチャーゲームとして高い評価を獲得した。Steamストアのレビューも「圧倒的に好評」。しかしながら、公式に実装されている日本語は、かなりぎこちなかった。原文と意味があっているかどうかという以前に、日本語としておかしな表現になっており、没入感を削いでしまっていたわけだ。公式側も日本語の改善に意欲を見せていたが、抜本的な改善はされていなかった。
そこで朝比奈氏は、同作の日本語リライトに着手したわけだ。日本語表現が改善されているだけでなく、さまざまな表現が英語準拠となっている。「新しい人生を。」とのっけから違和感を出していたタイトル画面は「a new life.」へと変更。主人公の日本語名もサツキとハヅキから、メイとオーガスタへと変更され英語版寄りに。テキストにおける会話文も自然になっており「ニュートラル寄りの女言葉」へと統一されている。オリジナルの日本語は、ひとりのキャラの口調の変化が著しかっただけに、そうした意味でも違和感のないローカライズが施されている印象だ。
朝比奈氏は現在Angela He氏に、再翻訳された日本語についての許諾を得ようとしている途中だという。将来的には、同氏の翻訳が公式になる可能性はありそうだ。Angela He氏による『missed messages.』に続く傑作アドベンチャーゲーム『a new life.』。自然な日本語になったことで、淡い物語がさらに淡く感じられることだろう。興味を持った方は、ぜひゲームを購入してみてほしい。
『a new life.』はPC(Steam)とiOS/Android向けに配信中。PC版の有志日本語化ファイルは朝比奈氏のnoteからダウンロードできる。