中国向けにSteam Chinaがオープンするも、販売ゲームはたった35本。コミュニティ機能もなしなど大陸仕様に

ValveとPerfect Worldは2月9日、Steam China(蒸汽平台)のテスト運用を開始した。デザインなどは共通しているものの、さまざまな違いが出ている。

ValveとPerfect Worldは2月9日、Steam China(蒸汽平台)のテスト運用を開始した。独自の仕様が数多く施されており、さっそく注目を集めている。Steam本家のサイトデザインはそのままに、さまざまな点で違いが出ている。


Steam Chinaは、中国ゲーム会社Perfect WorldがValveと協力して運営する中国版Steamである。中国国内では、本家Steamが多くのゲーマーに利用されているが、配信されているタイトルは、基本的に中国政府機関による審査を受けていない。つまり法的にはグレー、あるいは違法ともいえる状態にあり、政府の判断次第でいつアクセスが差し止められてもおかしくない状況。一方で、Steam Chinaは政府認可のもとで運営される中国国内向けの正式版というわけだ。それゆえに、政府の審査を受けて版号を得られたタイトルのみ配信される。

では実際にSteam Chinaはどうなっているのか。紺色のカラーを基調としたサイトのベースデザインは本家Steamと変わらない。しかし扱っているタイトル数は段違い。現在本家Steamでは、4万9617ものゲームがリリースされている。一方でSteam Chinaはというと、配信されているゲーム数は2月10日13時時点でたった35本。今後さまざまなタイトルがリリースされると考えられるが、数という点で大きな違いが出ている。ValveとPerfect Worldが配信タイトルを精選しているとも考えられるが、版号の影響も大きいだろう。中国での版号獲得は熾烈を極めているとされており、そうした関係でタイトル数が少ない可能性もありそうだ。ストアページには、獲得した版号の情報についても記述されている。

さらにいえば、ゲームの定価もかなり低い。たとえば『Human Fall Flat』の中国版は48人民元(約780円)で販売されている。本家Steamでの価格は1480円なので、ほぼ半分の値段だ。『ICEY』の中国版も38人民元(約620円)。本家の価格は1180円なので、やはり半額程度だ。中国で売り切りゲームを販売して成功するには、同国向けに特別に価格を引き下げないといけないという論調が根強かったが 、そうした事情が浮き彫りになっている。ただし本家Steamでも中国向けには前述したような低価格で販売されている。
【UPDATE 2021/2/10 15:25】
本家でも中国向けには低価格であることを追記


そしてもうひとつ大きいのが、Steamコミュニティが消えたこと。本家では右上に表示されている「コミュニティハブ」が存在しない。他ユーザーや開発者に意見を伝えるフォーラムは当然ない。スクリーンショットを公開したり、あるいはModを投稿したりといった、コミュニティ機能そのものが取り払われている。もちろんディスカバリーキューやキュレーションもなし。しかしレビュー機能については本家Steamと共通しているようで、ストアページを下にスクロールすればゲームについての評価が確認できる。中国からレビューが投稿できるかは定かではないが、レビューというSteamストアの魅力はある程度引き継がれているようだ。なおSteam本家のコミュニティついても、中国ユーザーはもとよりVPNなしに閲覧できない。

PC Gamerよると、SteamアカウントとSteam Chinaアカウントは同一のものが使えるといい、たとえばSteam Chinaで購入したゲームは本家Steamでプレイ可能。Steam本家で購入しているゲームがSteam Chinaで販売されているなら、そちらもSteam Chinaアカウントでプレイ可能。国際版といえど、ある程度内部の機能を共用していることがうかがえる。

現時点では、Steam Chinaの提供開始によって従来のSteamへの中国国内からのアクセスを即座に遮断されることはない模様。ただし今後はどうなるかわからない。中国ユーザーが本家Steamにアクセスできなくなれば、ゲームメーカーとしては、中国ユーザーからの売り上げは著しく減ることになるだろう。Steam Chinaにて中国向けに正式にゲームをリリースするには、表現の変更やアルファベット削除など多岐にわたる“表現の最適化”をし、政府による版号審査の列に並ばなければならない。Steam本家にて中国ユーザーから売り上げを得ている開発者にとってSteam Chinaは脅威。まだまだテスト的に開始されたばかりのSteam Chinaであるが、すでに異彩を放ちつつある。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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