Steamにて欧州国特定地域を“おま国”していたとしてValveなどが罰金を受ける。欧州委員会による制裁
欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)は1月20日、ValveおよびSteamにてPCゲームを販売するパブリッシャー5社に対して、独占禁止法違反により、合わせて約780万ユーロ(約10億円)の制裁金を科すと発表した。対象となったパブリッシャー、およびそれぞれに対する制裁金は以下のとおりだ。
【UPDATE 2021/1/21 18:20】
罰金の額を修正
・Valve:162万4000ユーロ(約2億円)
・バンダイナムコエンターテインメント:34万ユーロ(約4200万円)
・カプコン:39万6000ユーロ(約5000万円)
・Focus Home Interactive:288万8000ユーロ(約3億6000万円)
・Koch Media:97万7000ユーロ(約1億2000万円)
・ZeniMax Media:166万4000ユーロ(約2億円)
ECは、Valveが運営するSteamにて販売されている約100タイトルのPCゲームについて、欧州経済領域内で「Geo-blocking」がおこなわれているとし、これはEUの独占禁止法に違反する行為であるとして2017年から調査を開始。そして2019年に、上に挙げた各社に対して是正を求めていた。Geo-blockingとは地域ブロック、いわゆる「おま国」のことである。
パブリッシャー各社は、Valveから自社タイトルのSteamキーの提供を受け、Steam以外の販売代理店経由でもゲームを販売している。そのキーに、パブリッシャー側からの要望を受けて、指定の国以外でアクティベーションできないようブロックする制限がつけられていたとECは指摘。具体的にはチェコ・ポーランド・ハンガリー・ルーマニア・スロバキア・エストニア・ラトビア・リトアニアで、2015年10月までの1年から5年にわたって地域ブロックしていたとのこと。
要するに、これらの国のショップで販売されている特定のゲームのSteamキーを、別の国の人が購入した場合はアクティベーションできない状態にあったのだ。EUではデジタル市場の統合が掲げられており、消費者がEU加盟国のどこに居住していようと同じ利益を得られるものと規定。そのため、おま国は独占禁止法違反であるとされた。
冒頭に挙げた制裁金について、パブリッシャー各社はECの調査に協力したとして、10〜15%の減額措置を受けている。一方で、Valveは協力を拒否する選択をおこなったと名指しされた。ただValveは、ECの調査には全面的に協力してきたとの声明を発表。もっとも、法律違反を認めることについては拒否し、制裁金についても同意しないとしている(PC Gamer)。
Valveは、パブリッシャーからの要求に応じるかたちで、地域ブロックを有効にしたSteamキーを提供していたことは事実だと認めながら、対象タイトルはSteam全体の約3%に過ぎないと主張。また、キー提供によってValveは利益を得ておらず、2015年には地域ブロックは停止したとのこと。そうした状況において、プラットフォームを提供する企業にまで独占禁止法の適用範囲を拡大することはできないはずだと主張している。今回の裁定について、少なくともValveは戦う姿勢のようだ。
Steamのおま国というと日本でも話題になることが多いが、今回の一件はEUというある意味特殊な経済圏内であるがゆえに、そうした行為の差し止めと制裁にまで繋がったといえるだろう。ゲーマーとしては同様の動きが日本にまで拡大することを期待したいところではあるが、本件が直接影響を及ぼすことはなさそうである。