『洞窟物語』をデコンパイルした「Cave Story Engine 2」がGitHubから大量削除。パブリッシャーNicalisが著作権侵害を訴える
ソフトウェア開発プラットフォームGitHubにて公開されていた、「Cave Story Engine 2」の各種バリエーションが一斉に削除されていることが明らかになった。アメリカのゲームデベロッパー/パブリッシャーNicalisが、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく著作権侵害を訴えたことが原因のようだ。
Cave Story Engine 2は、開発室Pixelの天谷大輔氏が手がけた2Dアクションゲーム『洞窟物語』(海外タイトル:Cave Story)を、ファンがデコンパイルしたもの。オリジナル版はWindows PC向けのフリーゲームとして公開されているが、ファンの手による移植版も存在。同作をさまざまなプラットフォームに移植してプレイできるよう、オリジナル版をデコンパイルしソースコードを作成するファンが現れ、各々が独自に最適化したバージョンがGitHubを通じて配布されていた。
*DSiウェア版の公式トレイラー
『洞窟物語』は、のちにWiiウェアやDSiウェア、ニンテンドー3DSに正式に移植。また、HD化などの追加要素を収録した『Cave Story+』がPCやNintendo Switch向けに発売されるなど幅広く展開され、前出のNicalisはその販売や開発を担当している。同社は今年11月19日、DMCAに基づく削除要請をGitHubに提出。同プラットフォームにて公開されていたほぼすべてにあたる、35種類のCave Story Engine 2が削除された。
削除要請にてNicalisは、同社が『洞窟物語(Cave Story)』の著作権保有者であると申告。同作はオープンソースとして公開していないため、Cave Story Engine 2の配布は著作権侵害行為にあたるとして削除を求めている。実際、削除前のCave Story Engine 2の配布ページにおいても、コードの大部分は自らに属するものではないと明記されていた。
本件についてRedditなどのコミュニティでは、『洞窟物語』の権利関係に注目が集まっている。すなわち、『Cave Story+』などの移植版だけでなく、Cave Story Engine 2のベースとなっている、フリーゲームとして公開中のオリジナル版の権利もNicalisが保有しているのかどうかについてだ。同社と天谷氏がどのような契約を結んだのかは定かではない。ただ削除申請にて、『洞窟物語』の権利を保有しているとする根拠としてNicalisが示したURLは、『Cave Story+』のものとなっていることが困惑に繋がっているようだ。
これに関して、Cave Story Engine 2の復旧に携わっているという以下のツイートの人物によると、Nicalisがオリジナル版のソースコードの著作権を保有していることは間違いないという。一方で、デコンパイルにはフェアユースが認められる例があるともコメント。NicalisにDMCAに基づく削除申請をおこなう権利はあるものの、こと本件においては(フェアユースについて)同社に誤解があるのではないかとしている。
Nicalisというと、多数の人気インディーゲームを手がける一方で、先日配信停止となった2Dアクションゲーム『助けてタコさん(Save me Mr Tako)』のNintendo Switch版にて、パッチ配信を差し止めていたことが開発者の口から明らかになったり、設立者Tyrone Rodriguez氏らによるハラスメント行為が暴露されたりと、最近はあまり良くないイメージもつきまとう(関連記事)。
今回の一件ではそうした過去に絡めながら、ある意味不寛容な同社の姿勢を批判する声が一部で聞かれる。ただ、権利者が権利侵害を止めようとすることは正当な行為。Cave Story Engine 2の今後については、フェアユースとして認められるのかどうかにかかっているようだ。制作者側は裁判は望んでいないとしているため、削除は不当であるとNicalisあるいはGitHubに申し入れることになるのかもしれない。