Amazonが“有害なプレイヤー同士”をマッチングさせる技術の特許取得。暴言ユーザー同士で戦わされるゲームが生まれるか

Amazonがゲームのオンラインマルチプレイにおけるマッチングシステムについて、独自技術を特許として申請していた。有害であると判断されたプレイヤー同士をマッチングさせる仕組み。

ゲームのオンラインマルチプレイにおけるマッチングシステムについて、Amazonが独自技術を特許として申請していたことが明らかになった。内容としては、有害であると判断されたプレイヤー同士をマッチングさせる仕組みになるという。海外メディアGamesIndustry.bizなどが報じている。


Amazonは「Behavior-aware Player Selection for Multiplayer Electronic Games」と題した技術を、2017年12月に米国特許商標庁に出願。今年10月20日になって特許技術として承認された。当該書類の中でAmazonは、まず現在のオンラインマルチプレイゲームの状況として、プレイヤーは自身に近いランク/スキルのプレイヤーとマッチングする仕組みになっていると紹介。ただ、この場合は馴染みのないプレイヤーと一緒にプレイすることとなり、こうしたアプローチではプレイヤー同士が関係を深めることは難しく、さらにチームとして協力し合う方法を学ぶことを避ける可能性にも繋がっていると指摘している。

自身に近いランク/スキルのプレイヤーとマッチングすることは、一般的には好まれていることだろう。ただAmazonは、そうしたシステムはランク/スキルがプレイヤーの楽しみを左右する主な、あるいは唯一の要素であると想定していると述べる。そして、実際のところプレイヤーの楽しみは、一緒にプレイするプレイヤーの行動に大きく依存している可能性があるとしている。


こうした前提のもとAmazonは、ほかのプレイヤーの楽しみが削がれる要因として、侮辱的な言葉を発するなど望ましくない行動をおこなうプレイヤーの存在を挙げる。これらのプレイヤーはToxic(有害)であると表現され、特に近年はよく耳にするようになった。そしてAmazonは、有害なプレイヤーに対処するために「すべての有害プレイヤーを隔離」する技術を提案。有害であると判断されたプレイヤーは、同じく有害とされたプレイヤーとしか一緒にプレイできない。逆にいうと、一般のプレイヤーは有害プレイヤーとマッチングしなくなり、楽しいゲーム体験に繋がるということのようだ。

もっとも、ひとことに有害といっても明確な定義があるわけではなく、この点はAmazonも認めている。そこで同社は、プレイヤーが自身が受け入れられないと考える、ほかのプレイヤーの態度などをあらかじめ選択し、それに基づいてプレイヤーをグループ化する仕組みを提唱。例としては、先述した侮辱的な言葉のほか、試合途中で切断してしまうプレイヤーも挙げられている。

似た仕組みを採用するタイトルとしては、荒らしプレイヤーを専用サーバーに隔離している『EverQuest II』や、チート容疑者を隔離する措置をとる『Call of Duty: Warzone』『Call of Duty: Modern Warfare』などいくつか存在する。ただAmazonの技術では、どのような行為を有害と感じるかという定義を各プレイヤーが設定した上で、マッチングから誰を排除するのかを判定していることが特徴だといえる。


Amazonは、傘下スタジオAmazon Game StudiosにてMMORPG『New World』などの新作をPC向けに開発中。また、先日開発中止になってしまったが、チーム対戦TPS『Crucible』を手がけるなどマルチプレイタイトルに力を入れている。さらに独自のクラウドゲームサービス「Luna」も展開中。そうしたタイトル・サービスにおけるマルチプレイ体験の向上を目指す中で、今回明らかになった特許技術が生まれたのかもしれない。

余談ではあるが、プレイヤーの有害な行為や発言に対しては、Blizzardは機械学習を用いた技術を『Overwatch』や『Heroes of the Storm』『World of Warcraft』に導入しているという。これによって、そうしたプレイヤーがゲーム内にとどまる時間は従来の半分に削減できたとのこと(GamesRadar+)。コミュニティを有害なプレイヤーから守るため、各社は時に新たな技術を開発しながら対応していることがうかがえる。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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