CAGが日本王者に輝いた「レインボーシックス Japan Championship 2020 FINAL ROUND」レポート。初心者向けイベントも目白押し
幕張メッセイベントホールにて、2020年10月17日〜18日にかけて行われた「レインボーシックス Japan Championship 2020 FINAL ROUND」。賞金総額は1500万円、出場チームは190チームという、国内最大の『レインボーシックス シージ』の競技大会で、無観客であることが勿体ないと思える程の熱い試合が繰り広げられた。今回はその中で特に熱かった2つの試合と、大会に合わせて発表されたカジュアルプレイヤーへ向けた施策、今後日本チームが関わるeスポーツ大会についてピックアップしていく。
初心者に配慮したスペシャル配信を用意
今回のイベントは初心者向けの施策を押し出したものとなっており、その一環として二つの配信が用意されたことに注目したい。一つは、公式キャスター「ふり~だ」氏を始めとしたキャスター陣が熱い実況で送るお馴染みの本配信。そしてもうひとつは、カジュアルプレイヤーや競技シーンに初めて触れる人向けの「スペシャル配信」だ。
スペシャル配信は『レインボーシックス シージ』未経験の岡副麻希アナウンサーをMCに迎え、プロゲーミングストリーマー集団「父ノ背中」のけんき選手をはじめとしたプロプレイヤーやストリーマーが、試合の見どころや展開をわかりやすく解説するというもの。ゲストには次長課長の河本氏などの著名芸能人が数多く出演。難解な『レインボーシックス シージ』の競技シーンを、面白く彩ってくれた。
また、スペシャル配信の観戦カメラ(試合中のゲーム画面)も、本配信とは異なるものであった。本配信では試合の動きに合わせて複数の選手の視点が目まぐるしく切り替わり、マップの構造やゲームのシステムを深く理解している必要がある。正直、クリアランスレベル300に達した筆者でさえ状況がわからなくなる時がある。しかしスペシャル配信では、一人のプレイヤーにのみフォーカスし、基本的に視点は切り替わらないので、混乱することなく試合を観戦することができた。
さらにスペシャル配信の前身として岡副麻希アナウンサーとけんき選手による、「岡副麻希のハマってもeですか?レインボーシックス シージ eスポーツの世界」がYouTubeで配信中だ。毎回ゲストにプロプレイヤーやコーチ、キャスターが登場し、『レインボーシックス シージ』の魅力や大会の見どころなどを紹介する番組になっている。これまで競技シーンを追いかけていたプレイヤーも必見だ。公式キャスターOkayama氏の学生時代の様子を垣間見えるのは、恐らくこの番組だけだろう。
これは既出情報だが、10月24日に行われるUbisoftのオンラインイベント「UBIDAY2020 Online」では、「シージ初心者道場」が開催される。こちらでもけんき選手がシージ初心者へ向けた入門編をお届けしてくれるだろう。
『レインボーシックス シージ』も、5年目に突入し、オペレーターやガジェットの数も大きく増えた。複雑さに物怖じしていた初心者も、複雑さゆえの魅力を感じてもらえたら、一プレイヤーとしてとても嬉しい。また、これまで多くの試合を観戦してきたが、カジュアルプレイヤーとコアプレイヤーを完全に棲み分けて配信をしたのは英断だ。曖昧なものではなく、はっきりした展開は、双方にとってとても良い結果を産んだのではないだろうか。
白熱の決勝大会
ここからは決勝大会DAY2から2つの試合をピックアップしてお届けする。基本的なルールはいつもの大会通りだが、グローバルBAN「ECHO」と新オペレーターの「ZERO」は使用できない。また、予選では使用禁止となっていた「MELUSI」「ACE」は決勝大会より解禁された。試合形式は決勝戦のみBO5。その他はBO3となる。
※BO=Best of。数字の数が最大MAP数。BO3であれば2MAP先取、最大3MAP
SEMI FINAL2
エヴァ:e VS CYCLOPS athlete gaming
過去に競技シーンで活躍していた選手が中心となり、つい先月に発足した「エヴァ:e」。対するのは国内最強と名高いCYCLOPS athlete gaming(以下CAG)。筆者が今大会で一番興奮したこの試合を紹介していく。
1st MAPはヴィラ。CAGのピックマップ、攻撃スタート。ラウンド1。防衛拠点は1Fダイニング・キッチン。初手ズラしに対してもライブドローンによるスピーディなエントリーで2Fを制圧。ポイントへの突き下げを開始と共にローミングも排除、突き下げの射線を確保した上で洗濯室、食料庫階段からのプッシュでパーフェクトラウンド(チームが誰一人倒れることなく勝利)。完璧とも言える攻撃を繰り出した。
しかしエヴァ:eもやり返す。2ラウンド目、飛行展示防衛ではMaavi選手の個人技が光り、数的優位を取ったのがエヴァ:e。CAGはポイントへの割り切った攻めを仕掛けるも、ポイントで待ち受けるmorun選手がしっかりと抑え、パーフェクトラウンド。ヴィラを得意とするCAGの完璧な攻めに対して個人技で突破口を作っていくエヴァ:eが強さを見せる。このあとも各々の個人技でCAGのマップコントロールを乱し、4-2で折り返し(攻守交代)。
ここでもエヴァ:eが仕掛ける。CAGの飛行展示守りに対し、5人全員がテラスから書斎を攻めるという、暴挙とも言えるラッシュを敢行。メイン階段と飛行展示の射線により枚数を失いつつも個人技で殲滅に成功。マップアドバンテージを大きく取っていく。エヴァ:eはこのまま攻撃を押し切り、1st MAPヴィラを制した。エヴァ:eの自己紹介とも言えるとんでもないプレイングが多く見られたこの試合は、今大会でもっとも面白い試合と言っても過言ではない。
しかしここで立て直すのがCAG。2ndマップ領事館では2F防衛に対してYINGのカンデラによる強烈な攻めを繰り出す。ここからはCAGがペースを握ることになる。エヴァ:eも食い下がり拮抗するが、CAGがスポーンピークやリテイクで流れを作っていき、2nd MAPは3-7でCAGが獲得。3rd MAPまでもつれ込む戦いはカフェへ続く。開始直後は拮抗するも、防衛スタートのCAGが絶妙な人数配分によるカバーを展開。折り返しと同時に4ラウンド連取し流れを掴み切る。勢いそのまま2-7でCAGが勝利。マップスコア1-2でCAGが決勝に駒を進めた。
やはりCAGの流れの作り方が光った。ヴィラでの敗北を活かしエヴァ:eの強みである抜群のバトルセンスを打ち消すカバーラインと前線の敷き方は見事で、領事館からは自分たちのペースを作るような戦術を仕掛け、試合全体の流れを強く引き寄せた。
GRAND FINAL
FAV Gaming VS CYCLOPS athlete gaming
並行して開催されているAPAC North Divisionでも上位に食い込んでいる2チームが、日本王者の座をかけて激突した。1st MAP海岸線。CAGピックの防衛スタート。マップの構造上、広く守るのがセオリーだが、CAGはポイントで固く守ることに成功。2ラウンド先取する。ここでCAGはタクティカルタイムアウト(以下TO)を取る。決めきるためのTOで、飛び出しなどで積極的に勝負を仕掛け2v5の数的優位を得るも、FAVの綺麗なカバーによりまさかのクラッチ。残り数秒でFAVが殲滅に成功する。
ラウンド4、ブルーバー防衛。ここでFAVの綺麗な陽動作戦が功を奏す。まずはオフィスを制圧し、アクアブリーチャーでブルーバーカウンター裏への導線を確保したFAV。スモークグレネードでプラントを匂わせつつ、本命はサンライズバーを攻撃。ローミングがブルーバーのプラントを潰そうと躍起になってもそこには誰もいない。見事な殲滅でFAVが追いつく。しかし攻守交代後のCAGの素晴らしい組み立ての攻撃で4ラウンド連取。スコア3-6のマッチポイントを獲得。FAVも負けじと飛び出しやドローンメタといった戦術でスコア6-6まで追いつき、1st MAPから延長線へ突入。
攻撃のCAGはYINGをピックする。カンデラをきっかけとした攻撃で延長戦ラウンド1をしっかりと取得。次のラウンドではFAVもYINGをピックし、プラントまでの環境を整えるも、BlackRay選手の固い守りが爆発し、CAGが接戦の1st MAPを取得。
2nd MAPクラブハウス。FAVピック攻撃スタート。CAGの地下防衛に対し祭壇3枚をアクアブリーチャーで開けることに成功。メイン階段とハッチで完結させ、古典的な攻撃を堅実に通す。しかしCAGがまたも主導権を握り、折り返し直後の攻撃もしっかりと通しスコア2-5。たまらずTOを取るFAV。その甲斐あって次のジム防衛では落ち着いた守りを見せ、1ラウンド返す。ここまではCAGのリードに対してFAVが食い下がるという構図だったが、ここからFAVの方向修正が見え始めバトルセンスでCAGの攻撃を崩し、スコア6-5とマッチポイントを取ったのはFAV。
追い込まれたCAGだが、管制攻撃の中で2v2を制し、意外性のある攻撃をきっかけに殲滅に成功。1st MAPに続き2nd MAPも延長線へと突入。スコア7-7、延長マッチポイントまでもつれ込むも、最後はCAGが完成攻めにおいてこれまでと異なる改装を攻めディフューザーを設置、そのまま攻撃を通し、CAGがこの延長線を制した。マップスコア0-2。CAGが王手をかける。
3rd MAP領事館。CAGピック防衛スタート。CAGはクラブハウスで得た流れを離さない。攻撃が圧倒的に有利とされる2F防衛すらも取り切り、好スタートを切る。領事館は突き上げ下げが重要となるため、他フロアのローミングにどれほど付き合うかの駆け引きが問われるが、ここで枚数を削っていくCAG。さらにはPULSEの心拍センサーによる情報で、試合を有利に運んでいく。0-3という流れを断ち切るFAVのTO後、モンターニュの採用などでしっかりと2ラウンドを取る。
だがここで流れを強引に取り戻すのがCAG。地下防衛で非常階段と踊り場から3人でスポーンピークを行い、2人落とすことに成功。ハードブリーチャーが落ちてしまったFAVはきっかけを作れずそのままCAGの勝利。スコア2-4で攻守交代。CAGのスピーディな攻撃に翻弄され、スコア2-6でCAGがマッチポイントを獲得。最終ラウンドとなるラウンド9も、素晴らしいカバーラインでFAVの足並みを崩し、ディフューザーを設置し勝利。
大会決勝戦は、マップスコア0-3でCAGの勝利となった。スコアとは裏腹に、2nd MAPまでは延長線に突入するという拮抗した戦いだったことがとても印象的だ。
CAGの流れを掴む緩急の付け方は見事で、試合全体の流れを強く意識した戦略は相手を翻弄していた。それを支える個人技も素晴らしく、長丁場のオフラインでもしっかりと決めきるところ、日本王者に相応しいと言えるだろう。
今後の大会予定
最後に、今後開催される予定のeスポーツ大会の情報だ。
APAC North Division
ステージ2 PLAYDAY9、PLAYDAY10:2020年10月20日、22日
後述の「Six November Major」への出場権をかけ、現在開催中のアジア地域大会。ステージ2では、「レインボーシックス Japan Championship 2020」決勝大会で激突した「FAV Gaming」と「CYCLOPS athlete gaming」が日本チームの中で上位に食い込んでおり、世界での彼らの活躍に期待したい。
Six November Major
アジア太平洋地域:2020年11月25日~11月29日
毎日開催。全試合日本語生配信有り。
例年であれば全地域の勝者が決まる戦いだが、新型コロナウイルスの影響で各地域オンラインでの開催となる。賞金総額は12万5000ドル。2021年2月に開催予定の『レインボーシックス シージ』競技シーン最大の大会「Six Invitational」への切符をかけた戦いだ。
これら2つは各地域での開催ということで、北米、ヨーロッパ、中南米地域でも行われている。特にヨーロッパ地域はこれまでのパワーバランスが大きく乱れた大波乱の展開。日本だけでなく、こちらも要チェックだ。なお、これら3つの地域で行われる細かな大会の模様は日本語では基本的に配信されていない。英語での配信にはなるが、「Rainbow Six Esports」公式YouTubeチャンネルをチェックして欲しい。
KJ Friendly Match
2020年12月19日〜20日。
初の日韓交流戦が発表。詳細は近日公開。
楽シージ
2020年10月29日より毎週末開催。
PS4版にて行われる、ソロでもチームでも参加可能な大会。毎月250名に、デザインクルー「27hours」が手掛けるオリジナルTシャツがプレゼントされる。デザインは毎月変わり、参加すればするほど当選確率が上がるポイント制も導入。2021年1月に予定されている決勝戦は配信も予定されている。これまではチームを結成し練習をしなければ大会に出場することは難しかったが、この大会はそれを打ち崩してくれるカジュアルな大会となるだろう。
決勝DAY2は総視聴者数が延べ50万人を超え、大いに盛り上がった今大会。思わず声が出てしまうシーンが沢山見られ、戦略と技術を突き詰めたハイレベルな試合は見ていても面白いし、自らプレイしたくなる(プロ程のプレイはできないが……)。有観客で『レインボーシックス シージ』の素晴らしさを屈託なく共有できる日が一日も早く戻ってくることを祈っている。
『レインボーシックス シージ』はPS4/Xbox One/PC向けに発売中。次世代コンソールPS5/Xbox Series X|Sにも対応予定だ。
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