『Fall Guys』には“チーターアイランド”が存在していた。選ばれし者のみがたどり着く、まぼろしの監獄島
『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)には、かつて“チーターアイランド”なる島が存在していたようだ。開発元のMediatonicが9月15日になり、その存在を明かしている。チーターアイランドとは、その名のとおりチーターのみがたどり着く場所。チーターに悩まされる『Fall Guys』においては、かつて監獄じみた島が用意されていたようだ。
『Fall Guys』においては、特にPC版にてチーターが蔓延していることが報告されている。その狙いは、クラウンである。本作では、生き残り形式のバトルロイヤルゲームであることから勝利の価値は高く、勝者が獲得できるクラウンを集めることで特別なゲーム内衣装を入手することが可能。『Fall Guys』は他作品よりはパーティーゲーム的側面が強いものの、虚ろな名誉を求めて不正に走るチーターたちが蔓延。無限ジャンプに浮遊に加速。競争体験を台無しにするとして懸念されてきた。運営元もこうした状況を看過しておらず、さまざまな手を打ってきた。たとえばFall Guys Server Owlアカウントでは9月15日には、3098人のチーターをBANしたと発表 されている。こうした地道なBANのほかに、チーターアイランド計画なるものが動いていたと、公式Twitterが明かしている。
『Fall Guys』では、配信開始直後からチート検知システムが構築されていた。しかし配信直後は、検知したとしてもあえてチーターをBANしなかったという。まずは正確なデータをとり、チート検知の精度を高める必要があったのだ。そして同時にある場所が用意されていた。それがチーターアイランドだ。チーターアイランドは、チーター同士がマッチングし戦う夢の島。勝利すればクラウンこそ手に入るが、罪悪感と後悔と虚無が付随する王冠であった。しかし運営元が前述の理由にてチーターの処分をしていない関係で、最初の人口はゼロ。チーターたちに“チート判定された”と気づかれないように、徐々に検知のしきい値を下げていった。
そしてついにチーターが検知され始めた。チーターは試合中にはBANされないものの、試合後にはチーターアイランド送りになっていたのだ。彼らはクラウンの獲得に浮かれながらも、何も知らないままチーター同士でマッチングさせられていたのだ。しかしここで問題発生。『Fall Guys』でラウンドを始めるには40人が必要。つまり40人のチーター集まらなければ、試合を始められなかったのだ。結果的にチーターたちは“終わらないマッチング地獄”に陥っていた。そうした意味ではある種の対策には成功していたが、チーター側も賢く、すぐに情報を集めチート対策の対策を講じることもあり、運営側はこうした現状を黙りながら見守っていた。
しかし、チーターたちも流石に異変に気付き始めた。いつまでもマッチングしないことで、“無間地獄”に閉じ込められたと気づいた不正者達は、不正をしていない友人とパーティーを組むことで通常のマッチに加われることを認識。またSteamのファミリーシェアリングを使うことでも、マッチング地獄を回避できると判明。こうした手法を使ったチーターアイランド脱出者が相次ぎ、運営元がパッチなどで脱出阻止するなど攻防が繰り広げられる。しかし一方で、しきい値を下げてきたこともあり、ついにチーターアイランドにて40人以上が集まりマッチメイキングが始まった。不正者が不正者を狩る虚無の戦いが展開されるようになったのだ。一方で、問題が発生していた。というのも、チーターアイランドだと思われる試合の映像が投稿されるようになったのだ。
動画自体は愉快であるが、プレイヤーとしては気持ちの良いものではない。そして、映像の撮影者はチートをしていなかったことも気になっていたという。撮影者はチーターだったが映像撮影のためチートしていなかったのか、誤検知であったのか、そもそもチーターアイランドの光景ではなかったのか、いずれにせよ映像は、“不正が蔓延しているゲーム”という印象を与えることになった。夢のチーターアイランドは、アイデア自体は興味深いものであったが、その光景が撮影されコンテクストなしで投稿されれば、ゲームの印象を著しく悪くするものであった。最終的にチーターアイランドは閉園、チーターはログインできないようにするという対策が講じられ、現在に至っている。
Mediatonic は、Epic Gamesのアンチチートツールを導入すると予告している。これはおそらくEasy Anti-Cheatを指しており、次回の大型アップデートにて大規模なチート対策ツールが実装されるのだろう。次なる方針が決まり、隠すものがなくなったということで、こうした秘話が明かされたようだ。
チーター同士をマッチングさせるシステムとしては、『Call of Duty: Modern Warfare』『Call of Duty: Warzone』ではチート容疑がかかっているユーザー同士をマッチングさせるシステムが導入されていた(関連記事)。同じような試みこそこれまであったが、その仕組みや裏側まで語られることは珍しい。今回のチーターアイランドは、実際はマッチング不全に陥るなど、必ずしも“夢の島”にはならなかったようだが、結果としてチーターを通常の試合に参加させることを妨害するなど、一定の効果をもたらしたようだ。改めて今後もチーターと戦っていくことを表明したMediatonic。爆発的な人気を長く維持するには、こうした不正者との戦いも、重要になってくることだろう。