『Fall Guys』Twitterアカウント、100万RTで「黄色チームの削除」を約束する。公式からも“イジられる”黄色ビーンズたちはなぜ勝てないのか
『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)公式Twitterアカウントが、奇妙な約束をユーザーに提示したようだ。発売以来、今やその名を聞かない日はない同作。人気絶頂の『Fall Guys』の話題性を高めているのが、やたらとノリのいい公式Twitterアカウントだ。ジョークを好み、毒舌から自虐ネタまで頻繁に発信するほか、持ち前のコミュ力の高さで『サイバーパンク2077』とのコラボ約束を取り付けたことも記憶に新しい。そんな同アカウントだが、8月18日に新たな謎企画を打ち出している。運営のAlex氏(プロデューサーのAlex Ruse氏か)が、「100万リツイートを獲得したら“黄色チーム”を削除する」との提案を発言。コミュニティマネージャーのOliver Age 24氏もこれにGOサインを出しているのである。
そもそも黄色チームとは何か。『Fall Guys』のミニゲームの中には、プレイヤー全員がそれぞれ戦う個人戦と、いくつかのチームに分かれて戦う団体戦がある。その際、各チームには赤・青・緑・黄色とチームカラーが割り当てられるのだ。そして実は、ネット上ではなぜか「黄色チーム」が蛇蝎のように嫌われているのである。「チームしっぽオニ」では黄色のしっぽばかりむしり取られ、「ためこみ合戦」では黄色の陣地だけ無残にも荒らされる。『Fall Guys』における黄色チームは不思議と敗北率が高い(といわれている)のである。どうして黄色がそんなに弱いのか、と聞かれればプレイヤーたちは口を揃えて答える。「呪われているから」と。
いうまでもないが、ゲームにおけるチームカラーの割り振りは完全にランダム。黄色チームが特段に弱くなるという呪われたパラメータなど存在しない。それでは黄色チームが負けがちな理由はといえば、「嫌われているから」に他ならない。弱いから嫌われているのではなく、嫌われているから弱いのだ。チーム戦で黄色チームに振り分けられれば、それだけでプレイヤーの士気は下がる。翻って他チームは格好の標的を見つけたと猛攻を仕掛けてくる。戦場において「ジンクス」という呪いは、かくも如実に効果を発揮するものなのである。
ゆるふわバトルロイヤルとはいえ、チームの色で差別するとは不届き極まりない。いったいこのミームはどこから発祥したのか。ここで『Fall Guys』公式Twitterアカウントを振り返ってみよう。今から1週間前の8月12日には、「すべてのチームが勝つチャンスは平等だよ。いくつかは他よりもうちょっと平等だよ」との発言とともに、黄色チームだけがハブられている画像をポスト。また同日には、ハンバーガーチェーンWendy’sの公式Twitchストリームが黄色チームになって敗北する様子を見て「邪悪な笑い」を発するツイートを投稿している。このほか『Fall Guys』公式アカウントが黄色チームを揶揄するネタには枚挙にいとまがない。ユーザーのどこからともなく浮上した「黄色チームは弱い」との言説を、公式Twitterがネタにすることで鉄板のミームと化し、強力なジンクスとなっていった過程が見て取れる。
古くから君主は差別と分断を生み出し、利用することで領民を治めてきた。『Fall Guys』公式にそういった為政学的な思惑が絡んでいる……かどうかはともかく、冒頭の話題に立ち返れば、本作から黄色チームが削除されることはおそらくないだろう。のちに続くツイートで「冗談のつもりだったけど、もし100万RTに達したらやらなきゃいけない気がするね?」とほのめかす公式アカウント。それは暗に、よほどのことがない限り100万リツイートという数字は達成しえないことを示している。なぜなら実現してしまえば、それはTwitterの全歴史の中で19番目に多くリツイートされたことになってしまうからだ。よもやゼリービーンズがBTSを超えることはないだろう。8月19日現在のリツイート数は約15万2000件。話題性十分とはいえ、目標数にはほど遠い数字といえる。
為政者の話ではないが、ポップカルチャーでも「きのこたけのこ戦争」のようにあえて分断を生んで議論を呼ぶことは話題作りの常套手段だ。特に『Fall Guys』のチームカラーは毎回リセットされるランダムな概念であるため、特定の誰かがいじめられて悲しむというわけではない。そういった側面を利用して、『Fall Guys』アカウントならではの毒のあるジョークを絡めた独特のミームが生まれているといえるだろう。ちなみにネット上には、差別を受ける黄色チームの民がかえって団結して誇りを示す向きも出てきている。革命のエネルギーとは常に受難の歴史から生まれてくるものなのかもしれない。