『アサシン クリード ヴァルハラ』では猫を“抱きしめられる”。進化し続ける、ゲームの動物ふれあいマーケティング
Ubisoftは8月4日、『アサシン クリード』公式Twitterアカウントで、『アサシン クリード ヴァルハラ』にて猫を抱きしめられることを明らかにした。『アサシン クリード ヴァルハラ』は、中世ヨーロッパ暗黒時代を舞台としている。しかしそんな時代にも、少しの光があるという。投稿された動画では、主人公のエイヴォルが、猫を拾い上げて抱きしめている様子が確認できる。添えられた文は「you can pet cats in Assassin’s Creed Valhalla」。つまり同作ではペットとふれあえるということ。単になでられるだけでなく、抱きかかえて愛でることができるようだ。
ゲーム業界においては現在、「動物をなでられる」ことが一種のトレンドになっている。火付け役となったのは、「Can You Pet the Dog?」なるTwitterアカウントだ。「Can You Pet the Dog?」は、ゲームとそのゲーム内に存在する犬を特集するアカウント。プレイヤーが各ゲーム内で「何かしらの操作をおこなうことでその犬とふれあえるかどうか」を判定し、画像や動画を添えて投稿してきた。犬とふれあうにあたりモーションが用意されているか、もしくはゲーム内で犬がどのような扱いをされているのか。犬という観点から、それぞれのゲームの作風や文化を把握することができるのだ。
同アカウントは現在では40万以上のフォロワーを抱える人気アカウント。同アカウントにて犬とふれあえると特集されるだけで、数多くのシェアがなされ、さらにメディアにも取り上げられる。そうした動きを受け、大作からインディーゲームまで、さまざまなタイトルに「犬をなでる要素」が実装されていた。一種のマーケティング手法となっていたのだ。
そして「犬をなでる要素」は、じきに「動物をなでる要素」へと派生。たとえば犬だけでなく猫も数多くのゲームにて登場するようになった。元気よく勢いをもった犬とは違い、優しくなであげるような演出になるのが猫なでの特徴。『仁王2』『アッシュと魔法の筆』などで猫とふれあう演出が確認できる。さらには、その対象は犬猫に留まらず、『ゴースト・オブ・ツシマ』では狐をなでられる要素が実装され、のべ880万匹の狐がなでられたと報告されていた(関連記事)。
そしてこのたび、『アサシン クリード ヴァルハラ』では、猫を抱きしめられるようになったわけだ。カテゴリーとしては「you can pet cats」に入るが、アニメーションもこだわられており、演出面で従来のなでる行為よりも大幅に進化している。実は「Can You Pet the Dog?」アカウントと『アサシン クリード』公式Twitterアカウントの間には、ちょっとした因縁がある。というのも、この犬なで紹介アカウントは、かつて『アサシン クリード オデッセイ』を「犬とふれあえないゲーム」として紹介していたからだ。
野生の動物と戦うことも多い『アサシン クリード オデッセイ』だが、実は特定のアビリティを取得することで、動物をお供にすることができる。どうやら「Can You Pet the Dog?」はこの事実を知らなかったようで、『アサシン クリード』公式アカウントはすかさず、動画付きでツッコミ。ゲーム内の犬を紹介するこのアカウントは、再現方法がわからないと狼狽えたのち、誤りであると訂正していた。ジョークの範囲でのやり取りであるが、お互いにやや気まずさが残っていた。
そうした経緯を踏まえても、Ubisoftにとって動物とのふれあい要素は力の入れどころ。今回、リッチな演出をもって猫をなでる要素が実装されることとなった。ただし同作に限らず、動物をなでる要素は進化し続けている。たとえば『天穂のサクナヒメ』では、犬の頭だけでなく、お腹もなでられる。非常にキュートな演出が用意されているのだ。
2019年初頭から火がついた動物マーケティングは、認知度の高まりと共に進化を続けている。逆説的に言うならば、単に犬の頭をなでられるだけでは、大きく取り上げられることが少なくなってきている。注目を集めるための競争も熾烈になってきたのだ。ともあれ、動物をなでるというのは単純に楽しい要素。犬なでトレンドが来る前から、さまざまなゲームに実装されてきた要素である。どの企業も力を入れだした「ゲーム内で動物をなでる演出」がどこまで進化していくのか。その経過を見ていくのも楽しみだろう。