任天堂が今度はNintendo Switch“ツール導入代行業者”を訴える。業者は「ハンダ付けをしただけ」と不満げ
Nintendo Switch本体をハックできるツールを巡って、任天堂はツールの販売代理店を相手取って訴訟を起こすなどの対応をとっているが、さらなる包囲網を敷いてきたことが明らかになった。次なるターゲットは、Nintendo Switch本体へのツール導入を代行する業者だ。
米国任天堂の代理人を務める弁護士事務所は6月12日、アメリカ・コネチカット州に店舗を構えるLogistics社に、同社が提供しているサービスは違法であり、著作権侵害行為でもあると警告するメールを送付した。そのサービスとは、ハッカーグループTeam Xecuterが開発・製造する「SX Core」や「SX Lite」を、ユーザーに代わってNintendo Switch/Lite本体に導入する代行業務である。同社は、PCやスマホ、ゲーム機などの修理や、ゲーミングPCの組み込み代行などをおこなっている業者。本体の分解やハンダ付けが求められるゲーム機の改造代行も手がけており、今回違法と指摘されたサービスはそのひとつである。
Team Xecuterは匿名のメンバーからなるハッカーグループであり、ゲームコンソールのハックツールの開発においてかなり長い歴史を持つ。ツールの主な目的としては、バックアップしたゲームソフトや自作アプリの起動を可能にすることがあるが、これは海賊版ゲームの起動が可能であることも意味する。先述したSX Core・SX Liteは同グループの新製品だ。初期のNintendo Switch本体にはハードウェアに由来したシステムアップデートでは修正できない脆弱性が存在し、ハックに利用されてきたが、2018年6月以降に製造された本体は問題が修正され、Nintendo Switch Liteも同じく対応済み。SX Core・SX Liteは、その対策済み本体のハックを可能にしたとうたっている。
海外メディアArs Technicaが入手した、米国任天堂の代理人弁護士がLogistics社に送付した警告メールでは、顧客のNintendo Switch本体を分解しSX Core・SX Liteを実装するサービスの提供は、任天堂が施した著作権保護対策の回避を目的にしており、これはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に違反していると記載。また、Logistics社は同サービスの販売ページにてSX Core・SX Liteを購入できる店のリンクを当初掲載していたが、任天堂がそうした店を相手取り裁判を起こしたことを理由に該当リンクを削除したことは、Logistics社は自身のサービスが不法行為であると認識していたことの証左であると指摘。そして、任天堂はこうした露骨な違法行為は許さないとしている。
Logistics社の問題の代行サービスは現在は提供が中止され、販売ページには任天堂およびその弁護士と協議中である旨が掲載されている。前出のArs Technicaの取材を受けた同社のVan Rheen氏は、自身はハンダ付けをしていただけであり、これがなぜ著作権法違反にあたるのかと不満を語る。SX Core・SX Liteの導入により海賊版ゲームのプレイが可能になる点についても、同ツールにはそうした使い道もあるというだけで、玉ねぎを切るにも人を殺すにも使えるナイフのようなものだと述べている。もっとも、弁護士のMark Methenitis氏によると、そうしたサービスはDMCAによって禁止されている不正取引に当たる可能性があるそうだ。
一方別件ではあるが、ハックツールの製造者であるTeam Xecuterは海外メディアTorrentFreakの取材に対し、SX Core・SX Liteは適法なゲームのバックアップの作成やプレイ、またストレージの拡張やオープンソースアプリの実行などを可能にするものであると主張。著作権侵害・海賊行為を目的にしているとレッテルを貼られることに強い不満を述べている。また、消費者が購入し所有している機器の「修理する権利」を支持しているとし、同ツールはその一環に当たるとの認識を示している。
冒頭で触れたように、任天堂はこれまでにSX Core・SX Liteの販売代理店を相手取って訴訟を起こしたり、インターネットサービスプロバイダにTeam Xecuterの公式サイトへのアクセス制限を求めるなどしてきた。今回は、そのツールの導入代行業者にまでメスを入れた形。ツールの流通を何としてでも止めたいという姿勢の現れとも言え、今後もさらに取り組みを拡大させていくことになるのかもしれない。