元幹部が予想する、SIEがE3カンファレンスをやめた理由。“TikTok時代”に合わせたやり方

ソニー・インタラクティブエンタテインメントがE3のプレスカンファレンスも見送りっている理由について、元SIEのサードパーティ担当副社長で、現在はデベロッパーIron GalaxyのCEOを務めるAdam Boyes氏が語っている。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、世界最大規模のゲームイベントE3への参加を2年連続で見送った。もっとも、E3 2020は新型コロナウイルスの影響により開催されないこととなったが、SIEはE3が発足した1995年から毎年参加してきたため、初めて出展見送りを発表した昨年は驚きをもって受け止められた。

これに合わせて、同時期に実施してきたプレスカンファレンスも見送りに。新作などの披露の場として重要な位置付けにあったはずだが、この判断の背景について、元SIEのサードパーティ担当副社長で、現在はデベロッパーIron GalaxyのCEOを務めるAdam Boyes氏が、海外メディアPush Squareにコメントしている。

*Xbox OneのDRM仕様(ローンチ前に撤回)を皮肉り話題となった映像に、吉田修平氏と共に登場したのがAdam Boyes氏。

2019年当時すでにSIEを退社していたAdam Boyes氏は、まずSIEのState of Playや任天堂のNintendo Direct、マイクロソフトがXbox Series Xを披露した際のような動画イベントを例に、各社は情報を編集してファンに届けるアプローチに移行してきていると指摘。そして、そうした動画イベントではコンテンツからコンテンツへと立て続けに披露しており、これは情報を素早く届ける“TikTok時代”に合わせたやり方だろうと述べる。

Boyes氏が携わっていたかつてのE3でのプレスカンファレンスを振り返ると、プレゼンターが場を盛り上げ、ゲームの面白さについて語るという流れだったが、これはもはや時代遅れだという。今は誰もプレゼンターなど必要としておらず、視聴者のマインドは「いいから早く持ってる情報を全部見せろ」となっている。これが、劇場体験のようなイベントからトレイラーのコンピレーションへと変化していった背景だろうとのこと。

ファンが求める情報発信の形態が変化しており、各社はそれに対応。その中でSIEは、最大のインパクトを残せる時期と場所を、E3にこだわらず選択しているのだろうというのがBoyes氏の考えのようだ。

SIEは、2019年のE3への参加見送りを表明してからは、いわゆる伝統的なプレスカンファレンスを実施しておらず、代わって動画イベントState of Playを開始。新作の情報を不定期に届けている。Adam Boyes氏の所感に対して海外ゲーマーからは、理解を示す意見もあれば、かつてのプレスカンファレンスの盛り上がりを懐かしむ声も聞かれる。各作品のより詳しい情報は後日続々と出てくるため、発表はコンパクトで構わないという要望は確かにありそうだ。一方でショー的な発表会では、E3 2019のキアヌ・リーブス氏のように、のちに語り継がれるような瞬間が生まれることもあり、そうした雰囲気を楽しみたい人もいるのだろう。

もっとも、SIEは今後プレスカンファレンスを実施しないと表明したわけではない。また物理イベントについても、E3では叶わないとしていた、ファンと直接交流できるところへ数多く出展する方針だった。今年はPS5のローンチを控えているため、新型コロナウイルスの影響で物理イベントが軒並み中止となっている難しい状況ではあるが、ファンに実際に手に取って試してもらう機会は重要だろう。まずは、そのPS5がどのような形で本格披露されるのか注目される。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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