『Steredenn』プレビュー ランダム要素でシューティングゲームは楽しくなるか?

『Stredenn』はアーケードライクの横スクロールシューティングゲームだ。本作はSteamストアページのゲーム特徴に「ランダム生成による無限のリブレイアビリティ」をあげている。そのランダム生成は無限のプレイをもたらす魅力になりうるかを検証する。

『Stredenn』はアーケードライクの横スクロールシューティングゲーム(以下、STG)だ。本作はSteamストアページのゲーム特徴に「ランダム生成による無限のリブレイアビリティ」をあげている。本稿はそのランダム生成が無限のプレイをもたらす魅力になりうるかを検証する。

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Steredenn
開発: Pixelnest Studio
販売: Plug In Digital
発売日: 未定。現在アーリーアクセス中。
価格: 9.99ドル
プラットフォーム: PC(Windows/Mac/Linux)/Xbox One

本作は一般的なSTGだ。1レバー・3ボタン。道中+ボス戦を1ステージとする構成で、最終ステージのボス撃破をめざす。最大2種類の武器と、ボス撃破時に出現するパワーアップがゲーム攻略の鍵だ。丁寧なつくりのピクセルアートと、エレキギターがきいたメタル系BGMで見栄えは及第点。前世紀のSTGをたしなんだゲーマーは懐かしさを覚えるだろう。

低速弾は水色、高速弾はピンク色と、敵弾に一貫性があり視認性が高い。弾密度もすくなく、撃って壊す破壊感を重視したつくりだ。ライフ制で、ボス撃破時に完全回復するため序盤の難度は低い。その分、画像のように後半面は苛烈だ。
低速弾は水色、高速弾はピンク色と、敵弾に一貫性があり視認性が高い。弾密度もすくなく、撃って壊す破壊感を重視したつくりだ。ライフ制で、ボス撃破時に完全回復するため序盤の難度は低い。その分、画像のように後半面は苛烈だ。

アーケードライクに厳密な定義はないが、本稿では言葉どおり“ゲームセンターに置いてありそうなゲーム”という意義にしておく。それはプレイ回数をかせぐゲーム設計で、プレイヤーを手際よく殺す高難度と、もう一度プレイしたくなる中毒性の両立が肝となる。この両立にレベルデザインではなくランダム要素を用いたのが本作の特徴だ。

 

シューティングゲーマー養成ギプス

本作はランダム性が非常に強い。プレイするたびにステージ・武器・パワーアップが変化する。攻略パターンの構築を不可能にするゲーム設計は、初プレイの緊張感を約束するとともに、「攻略パターン構築を前提とした高難度」を廃した。

ステージ道中はいくつかのWAVEで構成される。WAVEの内容は固定だが、出現するWAVEの種類はランダムだ。武器はアイテムキャリアを破壊すると手に入る。2種類装備でき、切り替えて使う。出現する武器はWAVEと同様にランダムだ。ボスを倒すと自機がパワーアップする。パワーアップ内容は選択でき、特定の武器タイプを強化するほか、スコア上昇・ビーム耐性などを得る。これまた出現する種類はランダムだ。

武器の種類はとてもおおい。画像にあるのはかなりマシな性能だが、中にはデスペナルティといえるほど使い勝手が悪いものもある。本作の難度はこの武器運で左右される。
武器の種類はとてもおおい。画像にあるのはかなりマシな性能だが、中にはデスペナルティといえるほど使い勝手が悪いものもある。本作の難度はこの武器運で左右される。

ランダムWAVE+ランダム武器+ランダムパワーアップ=毎回新しいゲーム。式にすると乱暴なつくりだが、その狙いは攻略パターン構築の排除だ。プレイごとに反射神経と適応能力を問う『シューティング技能検定』というべきゲーム設計で、「死んで覚える」懲罰的難度を用いずプレイヤーを殺すよう意図している。また、プレイごとの新しさをもたらし、リプレイアビリティ向上にも役立っている。

 

リプレイ意欲の本質

本稿の焦点は、ランダム性の強いゲームをプレイヤーがリプレイしたくなるかどうかだ。プレイヤーの腕前よりランダム要素の影響が強ければ、くじをひくゲームになり、向上心をそこなう。本作は従来のSTG観とちがう観点に立ち、そのリプレイ意欲を再定義した。

前章にて、本作は攻略パターン構築を廃したと紹介したが、学習要素は失われていない。WAVEの敵構成を覚えるとWAVE中の攻略パターンを構築できる。武器も使い道を見つけたなら要所で役に立つ。しかし、それらで努力するよりも、最初のアイテムキャリアで使い勝手の良い武器が出るまでリスタートし、最初のボス撃破時のパワーアップでも同様に吟味したほうが、ラスボス撃破は手っ取り早い。プレイヤーの技量に左右されないランダム要素はくじ引きゲームと化し、底の浅さにつながる。

ボス撃破後のパワーアップ選択。くじ運が後半面の難度を左右する。レーザー耐性・敵シールド破壊・オプションあたりを入手すれば楽になるが、それで先のステージに進めたとしても上達を実感しづらい。
ボス撃破後のパワーアップ選択。くじ運が後半面の難度を左右する。レーザー耐性・敵シールド破壊・オプションあたりを入手すれば楽になるが、それで先のステージに進めたとしても上達を実感しづらい。
『ゼビウス』の骨子は攻略パターンとその妨害だ。地上物・空中物それぞれに攻撃を使い分ける操作は、相反する要素を高次元にまとめた。
『ゼビウス』の骨子は攻略パターンとその妨害だ。地上物・空中物それぞれに攻撃を使い分ける操作は、相反する要素を高次元にまとめた。

留意すべきは、ランダムそのものが悪い設計でないという点だ。例に『ゼビウス』をあげる。『ゼビウス』の地上物攻略は重要だ。強力な砲台や難度を下げるレーダー、さらには残機が増えるスペシャルフラッグもあり、対処を優先したい。地上物の出現を覚える攻略パターン構築が生存につながる。ここに、出現位置ランダムの空中敵がその地上物攻略を乱すことで、パターンを復旧する手腕を問うゲームとした。この対処可能なランダムはリプレイアビリティに昇華している。

本作の攻略を左右する武器・パワーアップは、技量の関与がないくじ引きで、このランダムに「挑む価値」を見いだすのは難しい。だが、それはラスボス撃破を焦点においた従来のSTG観での話だ。ここに8月10日のアップデートで搭載された「デイリーラン」を紹介する。全世界のプレイヤーが同じランダム構成でスコアを競い、1日1回のみプレイできるゲームモードだ。そのプレイ回数の制限は1クレジットの重みを擬似的に再現した。これこそが本作のSTG観であり、ランダム要素はすべてのプレイヤーに初プレイ状況をつくる。同じスタートラインで腕前を競う一体感は、「明日は、もっと上の順位を」という競争心を生む。これは向上心と対をなすリプレイ意欲の本質だ。

画面下に次のチャレンジまでの時間が表示してある。全員、お小遣いは1日1クレジットでおなじランダム構成の真剣勝負。クレジットの重みがある本作は“ゲームセンターに置いてありそうなゲーム”だ。
画面下に次のチャレンジまでの時間が表示してある。全員、お小遣いは1日1クレジットでおなじランダム構成の真剣勝負。クレジットの重みがある本作は“ゲームセンターに置いてありそうなゲーム”だ。

 

毎日開催のSTG大会

『Stredenn』は1クレジットの重みを擬似的に再現したSTGだ。1日1回のみのスコアアタックに緊張感をもたらすべく、ゲームにかかわる多くの要素にランダムを導入し攻略パターン構築を不可能にした。通常ゲームはいわば練習で、デイリーランこそが本番だ。1日1クレジットのお小遣いを握りしめ、その真剣勝負を楽しんでほしい。毎日開催のSTG大会がここにある。

デイリーランで良い成績をおさめるよう、通常ゲームで武器の使い道を知り、WAVEを覚え・ボスを攻略しよう。競争心はリプレイ意欲の源泉だ。やりこみは裏切らない。
デイリーランで良い成績をおさめるよう、通常ゲームで武器の使い道を知り、WAVEを覚え・ボスを攻略しよう。競争心はリプレイ意欲の源泉だ。やりこみは裏切らない。

本作のSTG観はランダム性を不可欠のものとしたが、それ正しく伝える演出があれば、輝きはさらに増したと思う。クレジットを投入するシーンを描く。プレイ中に現地点の生存者割合を表示する。武器ごとの本日最大撃破者といった個別の賞を与える。などといった演出で競争心をあおり、挑戦者をたたえることができたなら、1クレジットの重みがSTGを楽しくするだろう。

なお、1クレジットの重みについては、日本のゲームセンターを題材にしたドキュメンタリー「100 Yen: The Japanese Arcade Experience」でも取り上げている。興味があれば下記のトレイラー動画を視聴されたし。

Hikaru Nomura
Hikaru Nomura

高校卒業後、ペンキ塗り・コンビニバイト・警備員・システムエンジニア・ネットショップの店長などで食いつなぐ。趣味はスーパーカブにまたがってのドライブ、海外SF小説(オールタイムベストは『スキズマトリックス』)、ゲーム実況、たまに同人活動。

宇宙ストラテジーと格闘ゲームを好む。リズムゲームとビジュアルノベルは苦手。FPSは酔う。中段や弾幕は見えない。Arcen Games信者であり、Stardockian(Stardock信者) でもある。英語は苦手だが、気合で翻訳して遊ぶ。

ゲーム大会の最高成績は2013年トライタワー末塔劇『チェンジエアブレード』部門第4位。

オールタイムベストゲームは『ニュースペースオーダー』。

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