レビュー集積サイトOpenCriticが、先行エイプリルフールでゲームメディアを切りまくる。海外大手サイトの盗作事件や、下手プレイで炎上した記者など容赦なし
ゲームのレビュー集積サイトOpenCriticは3月27日、同サイトのレビュースコア算定アルゴリズムに関する重要なお知らせを公開。OpenCriticは、過去1年にわたりスコア算定システムの改良方法を模索し続けており、1月からは算定対象サイトによるリコメンド率を重要指標のひとつとして扱うようになった。対象サイト数も増加傾向にある。そして、もっとうまくゲームコミュニティからの要望を汲み上げ、「一番大事な人々にとって好ましい変更」を加えるべきとの声があることも、重々に理解していると説明。そこでOpenCriticは今後、AAA級の大作パブリッシャーの意見だけを聞き入れ、彼らのフィードバックにもとづきスコアシステムに調整を加えると伝えた。
現状、同サイトはレビュースコアの単純平均値を重要指標として提示している。しかし大作ゲームのパブリッシャーからは、そうした平均値は不公平なデータであるとの意見が多く寄せられたという。たとえば、IGNとPush Squareのレビュースコアが同価値のものとして反映されるのは、納得がいかないとの意見があったそうだ。PlayStation情報を厚く扱っているPush Squareは、明らかにバイアスのかかったPlayStationファンサイトであるのに対し、IGNのレビューは“完璧”な編集プロセスを経て掲載されているため、後者の方が優れていることは明らかだからだという。「完璧な編集プロセス」のところは、ご丁寧にも2018年に起きた本家IGNのレビュー盗作事件の記事リンク付きで説明されている(弊誌関連記事)。
こうした懸念点を解消すべく、OpenCriticでは今後単純平均値ではなく、加重平均値を公開していくとのこと。パブリッシャーがレビュースコアを絶対に操作できないよう、アルゴリズムの詳細は秘密にしておくという。仕様変更日は4月1日。要するにエイプリルフールだ。
アルゴリズムの詳細は明かさないとしつつも、加重平均を出すにあたり一部データに付けられるウェイトについては、開示する必要性を感じたとして、箇条書きされている。ジョークに補足を加えるのは野暮ではあるものの、海外特有のネタが多いため、以下、背景説明とあわせていくつか抜粋。当然、前述した内容も、後述する内容も、全てジョークである。
・Kotakuのレビューは、ゲームパブリッシャーたちの要請によりブラックリスト入りした。どのパブリッシャーかは公表しないが、全社だ
Kotakuは、Bethesda Softworksを筆頭としたゲーム会社のブラックリストに入っていることを自ら公表している。また同サイトはJason Schreier氏を中心として、内部者告発に基づくゲーム会社の労働問題や開発難航話を多く扱っていることで有名。パブリッシャーに忌避されそうな理由は十分にある。
なお上述したOpenCriticのジョーク文後半は、原文では「We won’t say which publishers but it was all of them」となっており、よくみると単語ごとに異なるリンクが貼られている。BioWareの『Anthem』や『Mass Effect: Andromeda』の開発難航話、『Destiny』の開発裏話、Riot Gamesの性差別文化、パブリッシャーNicalisの悪行、Rockstar Gamesのクランチ文化、Naughty Dogの人材流出……ちょっとしたKotaku告発記事リンク集になっている。芸が細かい。
・Dean Takahashiのレビューは、彼がチュートリアルを死なずに突破できたならウェイト10倍
VentureBeatのDean Takahashi氏は、ゲーム業界のテックおよびビジネス事情通として定評のあるベテラン記者。ただ、2Dアクションゲーム『Cuphead』のチュートリアルで苦戦したり、『DOOM Eternal』のおぼつかないプレビュー動画を公開したりと、たびたび炎上している(関連記事)。そうした背景を踏まえての「チュートリアルを死なずに突破できたならウェイト10倍」というジョークである。
なおTakahashi氏は『DOOM Eternal』をイージーモードでクリア済み。プレビュー動画で批判を浴びた同氏は、レビュー、初心者向けガイド、そしてエンディングの感想記事まで掲載し、仕事を全うしている。SNSでは、本当に自力でクリアしたのか疑う声も散見されるが、同氏はラスボス戦のプレイ動画を前後編に分けて公開している。操作のおぼつかなさは仕方がないとして、しっかりとゲームをプレイした上で記事を執筆していることを改めて証明してみせた。
・ForbesのPaul Tassiによるルートシューター作品のレビューはウェイト220倍。ルートシューター以外のレビューは算定対象外とする
Forbesは主に経済誌として知られているため、ゲームのニュースやレビューの印象は薄いかもしれない。そんなForbesでゲーム記事を担当しているのがTassi氏。『Destiny』『ディビジョン』『ボーダーランズ』『Anthem』といったルートシューターに関する記事数が飛び抜けて多く、長年同ジャンルのゲームをプレイしてきた者としての見解が反映されている。Forbesでルートシューターの記事が掲載されたなら、十中八九Tassi氏の仕事だ。記事を開く前から執筆者が分かる稀有なケース。経済誌のゲーム記事だからといって甘く見てはいけない。ただ、ルートシューター以外の記事はあまり注目されていない。
なお最近は『Destiny 2』の新シーズンや『ボーダーランズ3』の新DLCが続くことから、『ディビジョン2』は休憩中だと報告したりと、追うべきタイトルが増えて大変そうではある。
・『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にパーフェクトスコアをつけなかったサイトは、4月末をもってOpenCriticからBANする
海外でも人気の高い同作。OpenCriticの単純平均値は96/100点であり、算定対象サイトは満点もしくは満点に近い点数を出しているところがほとんどだ。同作に低スコアをつけると一部ユーザーの逆鱗に触れかねないという、聖域的なポジションとしての同作をジョークにしているものと思われる。
・ネット上の論争を促進すべく、『デス・ストランディング』に79~89点をつけたサイトの点数は、ウェイト0.5倍で算定する
同作はメディアレビュー解禁当初から、絶賛と酷評に分かれる傾向にあった。ゲームの評価軸をどこに置くかによって、スコアが大幅に異なってくる。議論を呼んだ作品であることは間違いなく、Metacriticのユーザーレビューも、レビュー操作目的とおもわしきネガティブ票が大量に寄せられたとして、一斉削除されたことがあった(関連記事)。なお最近では、現実世界におけるコロナウイルスの流行および外出自粛の流れを受け、『デス・ストランディング』の世界観やシェルター生活を送る人々の気持ちを理解しやすくなったと、同作に再注目する記事も現れている(例:大阪在住のBrian Ashcraft氏によるKotaku記事)。
そのほかにも、IGNのDan Stapleton氏によるコンソールゲームレビューは比重4倍、PCゲームレビューは0.5倍(同氏は2017年、PC版『Prey』にて致命的なバグが頻発したことから、4/10点の低スコアを付けたところ、バッシングを浴びた。後日、ゲームのアップデートにより技術的問題が改善されたとしてスコアを8/10点に上げている)。冗談好きなRock, Paper, Shotgunのスコアは文中の駄洒落数で計算。10点満点をほとんど出さず、9/10点が実質上の満点扱いになっているGameSpotの9点レビューは10点満点とみなすといった、日々レビュー動向を追っているOpenCriticならではのゲームメディアジョークが炸裂した。ネタの対象として大手メディアを広くカバーしているのは、特定メディアに絞って攻撃していると捉えられないための配慮なのかもしれない。なお実際のエイプリルフールは4月1日。フライング気味ではあるが、自社のナレッジを活かしたエイプリルフール企画と言える。今年もエイプリルフール当日には、こうしたゲーム業界ジョークがさらに飛び交うのだろう。