動物保護団体PETAが『あつまれ どうぶつの森』にクレームをつける。「釣り」も「昆虫採集」もNG、たぬきちの搾取も許せ
動物保護団体「People for the Ethical Treatment of Animals(略称: PETA)」は3月25日、『あつまれ どうぶつの森』についての記事を公開。同作にさまざまな注文をつけている。タイトルは「PETA’s Vegan Guide to ‘Animal Crossing: New Horizons’(PETAの『あつまれ どうぶつの森』についてのヴィーガンガイド)」。ヴィーガンとは、動物由来の食品を一切口にしない菜食主義者。ヴィーガンとして目線をまじえながら、動物保護的な観点をもって同作の(彼らが思う)問題点に切り込んでいる。
まず問題提起したのは「釣り」についてだ。魚を釣ることはヴィーガンではない、釣りは現実でもすべきではないので、ゲーム内でもすべきではないとコメントしている。ゲーム内の魚は痛みを感じないが、釣り自体が生物や星にとって有害。魚の権利を奪うだけでなく、「寄付」し博物館に飾る行為も言語道断と切り捨てる。
そして「昆虫採集」についても、NGを突きつけている。さまざまな虫が住むにぎやかな島で彼らを捕獲し寄贈することは、たぬきちなどに推奨されていても、すべきではないと断言した。水槽やケースに生き物を閉じ込め展示するのはおかしいとし、自然のままにすべきであると付け加えている。
彼らの文句は、これだけでは終わらない。砂浜に埋まっているアサリは、痛みを感じるかわからないものの、生態系において重要な役割を果たすので、やはり捕まえるべきではないと批判。ヤドカリを捕まえた際にプレイヤーが発するセリフ(英文)「放っておいてほしかったみたい」というセリフにも、生態系を理解しながらも捕まえる行動に不満を示している。ヤドカリは自然な場所で生息していれば30年以上いきられる生き物。(いくら1000ベルだからといって)売るべきではないとも語っている。プレイヤーにローンを課していくたぬきちについては、まずそもそもたぬきは毛皮のために頻繁に殺されているとコメント。甚大な被害に遭っているので、大目に見てあげてほしいとの姿勢を示した。
ではプレイヤーは島で何をすべきなのだろうか。PETAは、同作での奨励すべき行動も示している。たとえば、ヴィーガンは同作では果物を食べるべきとコメント。果物を食べればパワーアップすることができ、いいことだらけであると。また果物についての種類や入手方法についてのガイドも記載している。そのほか、焚き火をしたり星空の下で音楽を演奏したりなど、生物に危害を加えない範囲での生活を楽しんでほしいと綴っている。
と、ここまでの現実世界とゲーム内の世界を混合するぐっちゃぐちゃな説明を見ればわかるとおり、PETAはやや特殊な団体なのだ。同団体これまでにも「タヌキマリオは、マリオがタヌキの皮を剥いだ結果だ」と批判を展開したり、『1-2-Switch』の搾乳ミニゲームに疑問を呈し質問状をおくるなど、“イチャモン芸”に定評がある(関連記事)。
ようするにPETAはこれまでも任天堂のゲームを用いて宣伝活動をしてきた。ただしこれまでは批判一辺倒だった同団体の乗っかりは、『あつまれ どうぶつの森』に関してはやや異なる路線で攻めている。記事の執筆者は見たところ、重度の『あつまれ どうぶつの森』プレイヤーである。ゲーム内の要素について詳しすぎるのだ。やたらと差し込まれるゲーム内スクリーンショットも、自分たちで撮影したのだろう。その上で、釣りや昆虫要素を批判しながらも、魚や虫が現実世界においてどのような危機に瀕しているのかを説明している。住人である豚や象について紹介しながらも、彼らが現実でいかに搾取もしくは迫害されているかを描写している。同記事は単なる批判ではなく、ゲーム内要素の批評を介して宣伝活動がおこなわれているのだ。
同団体は実は『あつまれ どうぶつの森』に期待を寄せているようだ。人間が他の生物より優れた種と誤解させ、繁栄のために特定の生物を搾取することが問題ないと思わせかねない、そんな“種差別”を終わらせるゲームになってくれるように願っているようだ。またゲーム内容については、動物と近くで触れ合えるゲームとコメント。現実世界では同じ言語で会話できない動物たちと、交流することができ、それぞれに性格がある点を踏まえ、動物がいち個人であるという事実を照らしていると、評価もしている。
【UPDATE 2020/3/27 17:25】
原文の「PETAが種差別という点で『あつまれ どうぶつの森』を批判している」という旨の文章を、「PETAが種差別の偏見をなくすために『あつまれ どうぶつの森』に期待を寄せている」という旨の文章へと訂正しました。
『あつまれ どうぶつの森』をプレイし評価しながら、動物保護を訴えるPETAの手法。かなりアクロバティックで目立ちたさが前面に出ている宣伝であるが、これまでの“イチャモン芸”とは少し毛色異なるのかもしれない。記事全文はこちらから確認可能。話題のDeepL翻訳を使って彼らの生の声を聞いてみるのもいいだろう。